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焼きそばパン大戦争  作者: 清泪(せいな)
最終章 焼きそばパン大戦争

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第百二十一話 図書館はお静かにご利用ください

 奈菜が直面した赤鬼の憤怒は、南図書館にいる那間良にも影響を与えた。那間良は未だ残滓による赤鬼の影響を受けただけの状態であり、鬼主として成ったわけではない。故に和美や小早志真里亞のように鬼の力を使えるわけではないのだが、赤鬼の駒としての影響力が増していることに那間良は自分の身体がより重く、力強くなったことで理解した。


 踏み込みは図書館二階の床を抉るよう砕き、身体が沈むより先に弾かれ前へと飛び出す。筋肉が突然倍増したように那間良の身体は重くなったが、しかし鈍重になるわけはない。膨れ上がる力で速度を増していく。


 高速で突進する那間良の狙いは、和美──ではなく笠原だった。朱雀の力を借りてる事をチートと評価したが、だから投げられて仕方なしとは那間良は飲み込むできるはずもなく、一発やられたならやり返して当然の話。投げられて顔面を蹴られたのだから。


 二発で仕留める!、高速で笠原の懐にまで接近する那間良。暴漢対策の護身術で習ったのはあくまで受け身の格闘術、笠原は速すぎる那間良に反応出来ずにいて。笠原の視線が数歩先から消えた那間良の姿を眼前で捉え直した瞬間、鼻に訪れる激痛と衝撃。空気を裂き皮膚を叩きスパンっと音を立てる、左のジャブ。

 驚きの声、痛みへの叫び、共にあげる一瞬も許さず笠原の視界に迫る影。赤を覆う殺意、右ストレート。


「──させるかっ!!」


 反応が遅れた、が致命的では無い。和美は那間良の側面へ踏み込むと白き光の刀を振り下ろし、一閃。強烈なストレートを叩き込む為に伸びる右腕を叩き斬ろうと振り下ろされたそれは──。


「二対一って、そういうことよね!!」


 腕を伸ばしきる前に那間良は踏み込んだ身体を強引にスウェーバックさせる。右腕を引き、反らした身体を更に強引に捻る。赤鬼の影響が無ければ肉体はとっくに悲鳴をあげ、筋繊維がブチ切れているだろう。

 振り下ろしが避けられる、それはつまり隙だらけの一瞬が生まれるということ。和美の身体能力も四神の試練を受けるに当たり、白鬼の力を使っていくことで常人とは違うものになりつつあった。だが、この一瞬は致命的に免れない隙。捻られ放たれる那間良の殴りに和美の身体は何の反応も出来なかった。


「ゆう、じょうっ、パワーーーっ!!」


 大声を上げると鼻から血が飛び出した。けれど笠原はそんなことお構い無しに、和美に向かって振られる那間良の左腕に掴みかかった。

 護身術で習ってない、護身術で習ってない。

 頭に浮かぶのはパニックな言葉であったが、とにかく和美が殴られようとするのを黙って見てるわけにはいかない。動画で教えてくれた講師は、何かとバックドロップやらプロレスの技らしきものへ繋げられたら良い、と鉄板ネタみたいに話していた。笠原はプロレス動画まで見てはいなかったので、講師の話す投げ技がどんなものか具体的なイメージは持てていなかったが、相手を掴んだなら投げへと身体を動かすその流れは学んでいた。

 自身の左腕を引っかけて強引に掴んだ那間良の左腕。笠原は体重を乗せて、那間良を和美から引き離すように押し込む。ぐっ、と歯を食いしばり那間良は教え返そうとそれに抗う。踏ん張る那間良の足が床を踏み砕き、破片が散る。


 一瞬。一瞬である。

 全ての事柄は鬼や四神の影響により超常的な身体能力をもってして行われる一瞬の攻防であり、故にその一瞬一瞬が常に致命的なものになりかねない。致命的であり、好機である。


 振り下ろした刀を振り上げて、また振り下ろす。そんな間は流石に与えられなかった。そう判断した和美は、ならばと笠原の安全と体勢の立て直しの為に、那間良の身体へ蹴りを突き出した。

 腹部へ直撃する和美の前蹴りが、那間良の体勢を崩し笠原の押し込みに抗えなくなった。

 クソっ、と僅かに悪態を漏らす那間良の顔面を笠原の右手が覆い──。


「やぁーーーっ!!」


 不格好な姿で、全身の力を乗せて、血が垂れる鼻から息は荒く、笠原は那間良の左腕を掴んだまま図書館の床に向かって飛び込んだ。

 朱雀の力、いや笠原の思い切りに那間良は受身を取ることもままならず、後頭部から床に叩きつけられる。激しい振動に壁に掛けられた注意書きが剥がれ落ちた。


 図書館を利用される皆様へ、館内ではお静かにご利用頂きますようご理解お願いいたします。


 図書館二階の床はまたも砕け、破片が飛び散っていった。

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