第78話 隠蔽
ふとした切っ掛けから、デリシャとパーティを組む事となった美味達。これで彼女らは四人パーティとなり、A級冒険者として更に突出した戦力へと進化する。
「折角だしぃ、新パーティの試運転に行って来たらん? 丁度良い感じのA級の討伐依頼、一件だけあるわよん?」
と、ブルジョンからのそんな申し出もあって、四人はそのまま依頼へと向かう事に。詳しく内容を聞くに、前回エスタに依頼されたヒートウッズのものよりも、難度は大分下回るのだと言う。尤も、エスタの依頼難度は準S級相当であった為、本来のA級難度であれば、これが普通ではあるのだが。
「イータ様のお供をしたいところですが、私如きでは足手纏いになるのが必至。王都で帰りをお待ちしております」
「エボンさんがそれを言ったら、D級の私は絶対に付いて行こうなんて思えず…… って事で、私も大人しく王都観光に勤しんでいるよ。あ、エボンさん、一緒に色々と巡ってみない?」
「良いですね。今後王都に滞在する訳ですから、多少は土地勘を養う必要もあるでしょう。セシル様、お供致しますよ」
と言う訳で、エボンとセシルはここで一旦離脱。依頼遂行組、王都観光組と綺麗に分かれる事となった。
「あ、そう言えば、エスタさんにお願いしていた新装備、もう出来上がったかな? ミッションコンプリート?」
「今朝、朝食前に工房をお邪魔したのですが、どんなに早くとも明日までは掛かると仰っていました。妥協は一切しないと、凝りに凝られているようでして」
「ほう、随分な気合の入れようだ。喜ばしい事だな。しかし、今回の依頼には使用できず、か。何ともむず痒いものだ」
「何の事だかさっっっぱり分かりませんが、私様にはこの豪華絢爛な装備がありますから、何の問題もねぇですわ!」
「ともあれ、お試しバトルなら何とかなるさ! ゴーゴー!」
「何とかするにしても、油断は禁物で行きましょう」
今回の目的地はグラノラ王国の南部に位置する熱砂地帯、ラマカン砂漠。辺り一面が砂、砂、砂で占められているこの場所は、最寄りの人里からも大分離れている為、開発が殆ど進んでいない。ちなみにこの砂漠、ヒートウッズの隣に位置する場所であり、出現するモンスターも比較的凶悪である。
移動はもちろん馬車ではなく、健脚で! と、いきたいところだったが、ここでちょっとした問題が発生する。
「フッ、すまねぇですけど私様、鈍足でしてよ!」
「なんとッ!」
そう、デリシャの足が想像以上に遅かったのだ。一般人のそれと比較すれば、十分に速いレベルではある。あるのだが、人間の限界を超えたA級冒険者基準でタイムを計ると、鈍足と評されても仕方のないレベルで遅かった。これなら馬車で移動した方が、まだ早く到着できるだろう。
「鈍足と魔力の低さだけは、どうにもなりませんわー。パワーは有り余っているのですが!」
「ま、まあ背に重いハンマー、いえ、メイスを背負われていますしね…… 仕方ありません。デリシャさん、移動中は得物をお借りしていても良いですか? 私の『保管』ポーチにしまっておきますので」
「まあ、そんなまぶいもんをお持ちなので!? 流石はカンロさんですわね! では、ほいっと!」
「ッ!? ちょちょちょちょ!」
巨大ハンマーを放り投げられ、焦る甘露。が、寸前のところで美味がこれをキャッチし、甘露を守る事に成功する。
「っと、ギリギリセーフ! うん、見た目通りめっさ重い! ズンと来た! 甘露ちゃん、危ないところだったね?」
「し、心臓が止まるかと思いましたよ……」
「だ、大丈夫ですの!? その、普通に受け止めてくださると思っておりまして……」
「絶対無理ですって…… あ、いえ、そう言えば、まだお互いのステータスも確認していませんでしたね。デリシャさん、私とイータさんもA級冒険者ではありますが、支援職なのでパワーはそこまでありません。そこを考慮して行動して頂けると、大変助かります」
「本当に申し訳ねぇですわ……」
猛反省するデリシャ。ただ、これはお互いのステータスを確認し合う良い機会でもあった。美味達は三人分のステータスをデリシャに公開し、その代わりにデリシャからもステータスを教えてもらう事に。
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デリシャ・ビスケット 18歳 女 人間 僧侶
レベル:96
称号 :聖食者
HP :3217/3217
MP :209/209
筋力 :1283
耐久 :1399
敏捷 :71
魔力 :110
幸運 :377
スキル:槌術(S級)
格闘術(A級)
白魔法(D級)
大食い(S級)
鉄の胃(S級)
消化(C級)
味覚(C級)
隠蔽(A級)
補助効果:隠蔽(A級)
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「おおー!」
「完璧なまでの前衛型だな!」
「う、ううん……?」
「御覧の通り、私様、ステゴロもいけます事よ!」
デリシャの完璧な戦士型ステータスに、頷き唸る美味とイータ。その一方で、甘露は称号の誤字っぷりに引っ掛かっていた。デリシャの称号は聖食者、そう、聖職者ではなく、食べる方だったのだ。
「………」
ただまあ、例の如く自分達もステータス欄に(食)が大量に並んでいるので、おかしいのはお互い様。甘露は何も言わず、これを飲み込む事に―――
「ミミさんとカンロさん、ステータスが少しおかしいのではなくって? 何ですの、この(食)とは!?」
―――しようかと一瞬頭を過ったが、また勘違いがあっては後々面倒。デリシャもこうして素直に疑問視しているので、しっかりと説明を行う事した。
「ほう、食べる事でレベルアップをすると? 何ともパネェ能力ですわね。ぶったまげましたわ!」
「やったよ、甘露ちゃん! デリシャさんがぶったまげてくれたよ!」
「え、ええ、それは良かったですね…… それで、デリシャの称号、聖食者については?」
「私様、この世に爆誕してこの方、一度も好き嫌いをした事がありませんの! 恐らくはそのせいかと!」
「……そのせいですか?」
「そうせいですわ!」
要するに、デリシャもこうなった理由は知らないらしい。僧侶という立場でありながら、自分達並みの食欲を発揮させながら生きて来た。だからこその、この称号なのでは? と、甘露は勝手に解釈、そして納得する事に。
「それよりもお三方、ステータスを丸っ切り『隠蔽』してないじゃねぇですか! それでは『鑑定眼』で透け透けですわよ!」
『隠蔽』とは『鑑定眼』でステータスを覗かれるのを防いだり、物体を隠したりする事ができるスキルだ。例えばデリシャはA級の『隠蔽』を所持している為、同じ等級の『鑑定眼』まで覗き見を防ぐ事が可能となっている。この守りを固めておかないと、F級の『鑑定眼』にもステータスの全てが覗き見されてしまうのである。
「え、隠す必要があるんですか? お姉ちゃん、悪い事なんて何もしてないですよ?」
「ありますわ! 私様達の周りに居るのは、何も善人だけじゃねぇですの! ほら、私様がお三方に隠蔽をつけぇますから、そこに並んでくださいまし!」
こうしてデリシャより『隠蔽』を付与された美味達のステータスには、補助効果欄に隠蔽(A級)の文字が並ぶのであった。




