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限界コミュ障オタクですが、異世界で旅に出ます!  作者: 冬葉ミト
第6章 蒸気都市で、便利屋として走り回ります!
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異世界流の七草粥~まごころを込めて~

しばらく月曜日の週1投稿になります、ごめんなさい!

 翌朝。フーリエちゃんの体調は室内なら普通に動き回れるほどまでに回復していました。息切れもかなり改善され、階段の上り下りなら難なくこなせるようになっています。

 あの晩ご飯だけでここまで回復するなんて、素材もそうですがフィルトネさんの料理の腕が凄いです。



「良かったですぅぅぅフーリエさんが回復してぇぇぇぇ」

「まだ完全じゃないけどね。ガタはまだ残ってる。ちょっとした魔法なら使えるようになったし、魔力消失に怯えなくて済むのは精神的にありがたい。私から魔法を抜いたら、何も残らない」



 フーリエちゃんは神妙な面持ちで野菜ジュースのグラスを置きました。

 魔力は使い切れば二度と回復しない。ある日の言葉が脳裏をよぎり、背筋が凍ります。フーリエちゃんにとって魔法は存在価値であり生命線。それが失われたらどうなるか、私ですら想像がつくほど重要なファクターなのです。

 そしてそれは私も同じ。生きる意味であり、焦がれ続けやっと手に入れた魔法が失われたらなんて想像もしたくありません。



「リラも食べてみる? 七元草粥」

「え、私がですか?」

「リラ様にも是非、ご賞味頂きたく。真心を込めましたので」



 なぜか唐突に2人からお粥を勧められました。私は別に体調が悪いわけではないですが……しかしフーリエちゃんもフィルトネさんも、どこか含みのある表情を私に向けています。

 意図は分かりませんが、まぁ朝ご飯には丁度いいですし頂くことにしました。ちなみにエリシアさんはマスタードをたっぷり塗りたくった極太ウインナーをパンで挟んだサンドイッチ。朝から酒のつまみになりそうな食事です。



「いただきます」



 見た目は日本の七草粥そっくり。でもお米の粒が立っていて、日本のお米ほど粘り気はありません。

 口に入れるとお米の甘さがふわっと広がり、そこに七元草の独特の風味が混ざります。七草粥と違って野菜の味はあまりなく、どちらかというと薬味に近いです。クセは強いですが、お米の甘さと多めの水分がそれを中和してくれて食べやすい。



「確かに、体が整えられていく気がします。食べやすくて、彩も綺麗です」

「七元草粥は東洋由来の料理、東洋ご出身のリラ様のお口に合ったようでなりよりでございます。体内に流れる魔力の七属性――月・火・水・木・地・風・氷のバランスを、それぞれの属性を象徴する薬草の効能で整えることで心身の不調を治すのです。月がゲッケイジュ、火はヨモギ、水はワサビ、木はウメ、地はハッカ、風はチガヤ、氷はスイセン。摂取し続ければ、扱えなかった属性魔法も扱えるようになるとも言い伝えられております」

「それらに陰陽の概念を加え、体内に存在する陰陽の気の流れと共に制御し極限状態になれば、史上最高の魔法使いになると言われている。病は気からとも言われるように、精神状態は体の調子に影響を与える。今日のリラとフーリエは陰だな。エリシアはいつも陽だ」



 するりとメフィさんが解説を引き継ぎ、私はそれを聞きながら七属草粥を完食しました。体がじんわりと温まり、朝なのに目覚めがスッキリしました。薬草の効能すごい。



「さて昨日の調査の続きをしなければね。明らかに悪事を働いた証拠が出た以上は野放しにできない。憲兵に突き出せるくらいにまで追い詰めよう、準備して行くよ」

「今日はわたしも同行します。錬金術師としての知識が役立つはずです」



 各々が準備を終え、メフィさんの後に続いて出発します。



「ではフーリエちゃん行ってきます!」

「ん。無理しないようにね」



 あぁっ、おててフリフリかわいい……っ!

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