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七十一話 方針

今回は説明回的な側面が強いので飛ばしても問題ありません。文字数も多めなので。

「新しい朝がきtいったああああああああ!!!!!」

無駄に大きな声を出し起き上がる界人だが、急な動きに体が悲鳴を上げ、のたうち回る。


満足のゆくまで痛がった後、頭を掻いて、ぼやく。

「いてて、寝たくらいじゃまだダメージは回復しないか」

そういうが否や、空中で手をサッと開き、何これ収納箱を展開する。


突如空間が裂け、亜空への入り口が出現する。

(いつみても無駄に禍々しいなぁ、何かに活用できないのかな)

なんてボーッと考えつつ、緑色の薬『草薬』を取り出す。

元は暇神が界人に気まぐれで報酬として与えた、草生えるwwwな薬だが、なんやかんや役にはたっている。

ふと、神の世界にネットが存在することに界人は「えぇ・・・」と思ったが、まぁ暇神なら喜んで使いそうなだな・・・、とむしろ納得してしまった。


とはいえ草に草を生やしている時点で暇神はそこまで詳しくはないのだが、界人自身まだ中学生なため、そこのところのネット知識はまだ理解していなかった。


そんなわけで、草薬をグイッと飲み干した。

「元気一発っ!!」

飲んだ瞬間、爽やかな開放感が界人の体を駆け巡る。擦り剥けていた皮膚は再生し、内出血していた臓器も元に戻っていて、強いていうならついでに肩こりもしっかり治っていた。


異世界アイテムはすごいなぁ・・・とぼやいているが、草薬程の回復薬はそうそう手に入るものではない。


(たしかそこで鎧亜さんがスリープモードになってたはずだけど)

そう考え左を向く。


「鎧亜さーん」


「鎧亜さーーーん?」


「鎧亜さーーーーーーーん????」

再三呼びかけるが、鎧亜の体は微動だにしない。どうやら回復しきっていないようだ。


(それにしても一夜だけで大破していた鎧がちょっとボロいくらいになってるからすごいわ)


さて、無理に起こす必要性はないが、今の界人はコーヒーを何杯も飲んだかのような覚醒状態なため、二度寝する気にもならない界人。


「とりあえず建物でるか」

そう呟いて見た目より軽い石の扉を開けた。


「あの建物窓なかったからな、太陽が目に染みるわ」

と、顔をしかめていると、正面の細い街路からケインが歩いてくるのを目にして、手を振り上げながら近寄った。


「ケインおはYO!」

「おはよう、朝からテンションたけぇな・・・」


否、界人は何も考えてない時は大体こういう喋り方だ。テンションが低くともHEY!とか言ってサムズアップするタイプの人間だ。


「朝からどこ行ってたのさ」


「ん、ちょっと上に連絡をな。ああ、不安になるな、別に機械ドラゴンの話はしてないさ」

そう言われると、界人は不思議に思う。

何故大して長い間ともに過ごしていない自分達の秘密を長年の付き合いの上司に話さないのか、と。


答えは簡単で、ケインも界人のように考えにそこまで理性を挟んでいないだけである。

別にこんくらい黙ってても冗談の範囲で済まされるだろ、と。


本当に必要な話は報告するが、そのあたりの判断は直感なのである。

プロ意識的なアレが足らないのだとグランツは頭を悩ませ色々しているが、改善の目処はない。


それでも王宮騎士団に居られるのは、今後の成長への期待と、魔法回路への理解の深さからであろうか。


「じゃ、鎧亜さん起こすか」


「あれ?鎧亜さんまだ修復しきってなかったけど?」


「実は寝てる間に鎧ちょっと見せてもらったんだけど、魔石入れたら修復加速するっぽかったからな」

ホラ、と言って手に持っていたバッグから大小バラバラ色とりどりの魔石取り出すケイン。

界人は(まるで宝石だな)と思った。

界人が倒してきた魔物たちの魔石よりも遥かに高価な物のようだ。


・・・そもそも界人はそこまで魔物を狩っていないし、魔石も剥ぎ取ったりしていないが。


ちなみに裏では風柳が死体ごとすべて回収していて、ギルドに戻ったら初心者の冒険者を雇って解体させていたりする。

界人なら一部の素材だけ入手して終わっている所を、初心者冒険者への仕事まで与えている辺り、流石と言える。



――



「じゃ、早速試してみるか」

そう言って動かない鎧亜に向かって魔石を入れようとするケイン・・・が。


「......ん?そもそもどこに魔石を入れればいいんだ?」

「言われてみれば」


実用的な魔石となるとが小さいものだとしても卵くらいのサイズはある。

入れるための穴があればわかるはずだが、サッパリそれらしき物は発見されていなかった。


「ツマリ、最初カラ入リ口ハ作ラレテイナイ。ワガボディニ弱点ハ無用」

「うおっ!?鎧亜さん起きてたの!?」


唐突に会話を始めた鎧亜に驚く界人。

「・・・ってあれ?身体が動いてないよ?」

しかし、鎧亜がピクリともしないことに疑問符を浮かべる。


「会話ナラ問題ナイガ、マダ身体ニ電源ガ入リキッテイナイ」


「あっなるほど・・・。じゃあ結局魔石はどこに入れればいいんだ?」


「簡単だ・・・タダソノ魔石ヲ押シ付ケテシマエバ終ワリダ」


そう言われ、界人が魔石を鎧に押し付けると、そこから手のひらサイズの魔法陣が浮かび上がり、魔石が消滅した。

「うお、ビックリした、すげぇな」


「ム・・・火ノ魔石カ・・・デキレバ無属性デオ願イシタイ」

言うなり、鎧亜の甲冑の兜の隙間に白い2つの光が灯っていたのが、赤くなった。


「無属性?」

界人が疑問を示すと、ケインがねずみ色の魔石を界人に渡した。


「魔石の色は属性を表す。火なら赤、水なら青・・・大体イメージそのまんまだからすぐわかるぜ」

「なるほどー」


無属性魔石はそこそこ大きく、メロンくらいのサイズがあったため、押し付けると半径30cmくらいの大きな魔法陣が発生した。

兜にある光は、無色に近づき、大きく明るさを増した。


「ウム、充魔完了ダ」


「充魔?」


「充電ノコトヲコチラデハソウヨブヨウダ」


「あ、魔道具とかあるもんね」


「そうだぜ。俺のこの剣も魔法の力が付与されているんだぜ」

そう言ってケインが鞘から剣を少しだけ出すと、仄かに明るく光った。


「暗い所でも読書が出来る剣か」

「イヤ、暗イ所デモ魔物ト戦エル剣ダナ」


「どちらでもねぇよ!?魔物を浄化する用だよ!!なんで剣を灯りにしなくちゃあいけないんだ!?」


しょうもないボケだがケインは乗ってくれた。

それにしても、鎧亜さんジョークとか言うんだな―と界人は思った。


どうしてもゴツい機械のせいで堅物をイメージしてしまうようだ。

中身はどうしても外見で判断されてしまうものである。




――




「じゃ、起動しきったみてーだし確認するぜ鎧亜さん。

・・・この謎の機械のドラゴン、なんだ?」


そうケインが問い、魔石の入ったバッグから頭を取り出す。

魔石はついでのようなもので、わざわざバッグを持ってきたのはこれを隠し持つためだったようだ。


「見テノ通リ、人造生命体ダ。『未知解析』『念写』」

鎧亜が両手をドラゴンに重ね、アーツを発動する。

その後、今後は地面に手を向ける。すると、地面に映像が映し出された。


見たところ、細長い線が縦横無尽に駆け巡っているだけの映像だ。


「鎧亜さん、これは一体?」

「ドラゴンの頭の内部構造・・・じゃねーか?」

「ソノ通リダ」


先回りしてケインが答えた。

鎧亜は肯定し、そのまま手を栓をひねるかのように少しずつ回していく。

すると、映像が少しずつ拡大し始めた。

そして――。


「これは・・・文様?」

界人が細い線に刻まれた文様に気づいた。

さらに拡大していくと、それが文様ではなく文字であったことに気がつく。


ケインは眉を細めた。

「なんだよこれ、魔法文字か?どれどれ・・・?」


ケインが読むより早く、界人が読み上げた。

「『S y n t h e s e』・・・すんでぃーず?なんでアルファベットなんだよ」

ケインがハッとして界人を向く。

「お前、魔法文字が読めるのか!?」


「魔法文字もなにもアルファベット・・・あ、こっちの魔法文字ってもしやアルファベットなのか・・・?」


「界人?」


「あ、なんでもない。一応読めるけど意味はわかんないや」


「そうか、解読出来ないから魔法文字を一つずつ言ってってくれないか?」


「あ、うん。エス、ワイ、エヌ、ティー、・・・(略)・・・。」


「サンキュー。えっと、並べて『Synthese』だから『ジンテーゼ』か・・・ッ!!!」


「ジンテーゼだって!?」

「ヤハリカ・・・」


そう、界人達が現在帝国までやってきている原因の一つである『ジンテーゼ研究所』。

魔物達に改造を施し、通常ではあり得ない能力を身に着けたモンスター達を世に放った。


界人たちに立ち塞がった魔物は『レッドグリズリー』と『エアグリズリー』。

なんとか倒しかけた所で、ジンテーゼ研究所の関係者が現れ魔物達を回収していってしまった。


この時点では全く手がかりもなかったが、しばらくして、スカーレットグリズリーと対決した時は向こうが気が付くのが遅れたのか、回収されなかった。

これにより死体解剖の際に『ジンテーゼ研究所実験素体003』とかかれたタグを発見することに成功したというわけである。

現在は『ジンテーゼ研究所』というワードを頼りに捜索を続けていたわけだが。


「今までは対魔王軍ばっかだから忘れてたけど、まさかここでジンテーゼ研究所の名前がでるなんて」


「そうだな・・・。こりゃまた面倒くさい事になりそうだぜ」


「ウム・・・」


「ねぇ、ドラゴンの頭にジンテーゼって書いてあったってことはこれがジンテーゼ研究所関連ってのは確定でいいんだろうけど、それが魔王軍と一緒に出てきたってことは」


「そう、魔王軍とジンテーゼ研究所は裏で繋がってるってワケだ」

(ということは今研究所はどこにある・・・?)


「ねえ、ちょっと聞きたいんだけど、昨日の戦闘中に空になんかなかった?」


「空か・・・?ドラゴンのブレスが辺りを呑み込む前、確かあそこから紫の線が降りてきたのはかろうじて見えたな」


「その時、下の面が黒い空中要塞とかって・・・?」


「・・・いや、それは見えてない。つか、なんだそりゃ」


「ム、ソレナラ自分ハ目撃シタゾ。ドラゴンヲ追ッテイタ時ニ、妨害ト言ワンバカリニビームガ降リ注イデ来タカラナ」


「えぇ・・・よく生きてるな・・・」

呆れるケイン。

(だが問題はそこじゃない)


「もしかしたら、ドラゴンがそこに帰還しようとしていたんじゃないかな、って。

だとしたら、ジンテーゼ研究所は天空にあるってことになるんだけど」


「はぁ?それがマジならジンテーゼ研究所、追えないじゃねーか。飛行限界高度的に雲の上なんて無理無理だぜ」


「イヤ、帰還ルートハ普通ニ地上ヲ目指シテイタナ。最初ハ上方向ニ飛ンデイタガ、ソレハ滑空ノタメノ高度稼ギダッタヨウダ。

ソコマデ燃料ガ持タナイノカ、長距離飛行ガデキナイカンジダッタナ」


「そうなんだ、じゃあ天空の城は別にジンテーゼ研究所って訳じゃないのか。

・・・ところでケイン、飛行限界高度って?」


「ん?知らねーのか?って有名な話でもないから知らなくてもおかしくないか。

そもそも、生物が飛び上がるためには翼だとか、スキルやアーツに魔法・・・そういった類の物が必要なのはわかるだろ?あ、珍しいものだと魔道具とかもあるな」


「うん。そりゃまあそうだよね」


「なんだけどよ、しばらく上昇していると、多少の差異はあれ、いつかそれ以上上昇出来なくなっちまうんだよ」


「え?なんで?」


「・・・謎だ。俺は知らん」


(えぇ・・・。となるとこの世界では月に行けないという訳か。ロケットとか途中で止まるのかな・・・)


などと界人が考えていると、手を上げて鎧亜が尋ねた。


「ソレデハ、我々ノミツケタ空中要塞ハ何故アノヨウナ高イトコロニイラレルノダ?」


(たしかに)

心のなかで界人も同意する。どういうわけだ?


「あー、それなんだけどよ、一部例外もあるらしいんだわ」


「例外?」


「ああ、例外。代表的なものだと、龍の種族と天使の種族・・・そして、魔王と、その庇護を受けている奴らだ」


「魔王!ってことはあの空中要塞、やはり魔王軍の物か!」

それなら魔王軍の戦いにやってきたことに頷ける訳である。


「あ、でも天使とか龍のモノかもしれないんじゃ」

「いや界人、龍族も天使族も精密な魔法アイテムは造れるんだが、基本的には個人技の世界らしいからな、あんまり部品とかチマチマ作りたくないらしいんだよ」

「ふーん」


あくまで一つの製品を少人数で作るらしい。


「そういえばさっき代表的なものっていってたけど、それ以外にはあるの?」


「あー、俺が知ってるのだと、『仙人が気功術をうまく使えば飛行限界高度を無視できる』とか、『龍族と天使族両方に認められればいい』だとか、あとなんか一つくらいあった気がする・・・なんだっけな」


思い出せないのか、ボリボリと頭を掻き始めるケイン。


「もし行くとしたらどうするかな」


「仙人・・・トハナンダ?」


「ああ、レベル高くなった人間がなれるんだって。条件は他の仙人に認められることらしいぜ」


「レベルって・・・どのくらい高くなればいいんだろうなぁ」

(ドラゴンとか一刀両断できるくらいじゃないとダメなのかなぁ)


「ちなみにギルドでAランクくらいまでいってれば大体は仙人になれてるぜ」

「意外と楽だった!?」

驚いてみせる界人。

(仙人といったらこう・・・選ばれた数少ない天才が技を極めるためにうんたら・・・

とかそういうイメージを持っていたようだ。


「むしろ大変なのは師匠となる仙人に認めてもらうことだな。仙人なんてそうそう見ないだろ?」


「あ、そういえばそうだね」


「み~んな山奥とか偏屈な所に住んでるから会いに行くのが大変でな、その山のモンスターがSランクモンスターみたいなのが出てくるようなとこで」


「なるほどね・・・。会いに行く過程がそのまんま仙人の試練的なのになるわけだ」


「そういうことだぜ。まぁ普通に街中に住んでる仙人もいるみたいだけどな」

「だめじゃねーか!?」


「いや仙人だって街中じゃないと不便で嫌って人は普通にいるからな・・・」


「まぁ確かにそうだけどさぁ・・・」

なんとも納得いかない界人である。それでは頑張ってSランクのモンスターを掻き分け山奥まで行く人なんていないのだろうか、と。


「ま、そういう奴らは中々仙人であることを教えてくれないし、そいつが仙人だってわかっても、自分を仙人として認めてくれない事も多いからそれはそれで大変ではあるらしいけどな」


「ふーん」


ここで鎧亜が話を遮り、

「デハ、次ノ『龍族ト天使族両方ニ認メラレル』トハ?」と尋ねる。


「ああ、それはまんまの意味だ。龍族と天使族に会って、「この人間良い奴やん」って感じさせられれば身体に紋章を刻んでくれるんだよ。

天使族に紋章を刻んでもらえば、天使族に仲間だと認めてもらえるわけだ。龍族も同じだな」


「なんか仙人もそれも難しいね」


「そうだよな。結局の所、強い力が必要ってこった。

・・・あ、最後思い出したわ、なんか超すごい魔法の船なら高度限界を無視できるらしいぜ」


「超すごい魔法の船って・・・なにそれは」


「あー、確か勇者の童話に登場した物らしいんだが・・・生憎俺は農村生まれで絵本なんかなかったし、昔話も特にせがまなかったから知らねーんだわ」


「あー、なるほどね」

「フーム」

当然、異世界の童話など界人も鎧亜も知っている由もない。


「じゃ、こっからは脱線したけどジンテーゼ研究所を目指すと共にえぐっちゃんを探すって事で、時間があったら童話についても調べてみようかな」

「おう、そうしようぜ」


最後に界人が纏めて、ケインが同意した。鎧亜は無言のうちに頷いている。


「デハ、行動開始」

「おう!」「ああ!」

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