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海里の果て  作者: 黒霧
源流探検
38/57

器官-プラント-

 プラントは大きな意味では工場という程度の意味合いしかないが、近代においては生産施設としての以外の意味も与えられている。竜の開発以前から人類は海底都市や宇宙コロニーの建造に着手しており、それらの閉鎖系施設に必要な生命維持系の施設は大抵プラントと呼ばれていた。浄水施設、空中管理施設、発電施設などもそうだ。もちろん、プラントという言葉からイメージするような食料生産施設、草木の育成環境としてのプラントもある。


 この島にあるプラントはどうやら再生施設のようらしい。

 いや、緑色のドームに覆われた施設を外から見ただけでわかるはずもないのだが、廃材を持って行かせたはずなのでそうと考えるのが妥当だと思う。


 再生施設と言っても、単体では存在価値は薄い。鋼材として再生するにしてもその後どのように用いるかが重要で、再生施設にはその後の流用先にあたる設計図が提供されているものだ。


「おかしな話だよね、それって」

「どこがだい」

「もっとオブジェクト化を進めてもいいように思えるんだけど」


 どんなものにでも流用可能な最小単位というものがあるはずだ。というより、規定すればいい。どうせ閉鎖環境での事だ。


「その場合組立行程が複雑になり過ぎるんだよ」黒猫は言った。「それともあんたは何でも建造できるからって全部ナノマシンで組み立てるつもりかい?」

「ああー」


 そりゃ面倒だ。


 ともあれ、左を森に、右を海に挟まれた狭い土地にそのドームは存在した。

 ……いや、狭いわけじゃない。プラントが大きくて、スケールが狂ってるだけだ。さっきから歩いているのにぜんぜんたどり着かない。

 その割にここまで届くほど大きな音が響いているのは、プラントが稼働しているというのはなかなか期待できそうだ。


 浜辺の船を思い出す。

 眠りについた船は、静かだった。


「動いてるね」

「そりゃね。そのうちこの島全部解体し始めるんじゃないかい」


 黒猫は肩に乗ったまま呟いた。

 顔を向ける。


「嫌いなの?」

「お前は火葬場が好きになれるのかい?」


 別になんとも思わないけど。

 ……考えないようにしてるだけかな。


「煙は出ないのかな。煙突はないみたいだけど」

「あったらどうだと?」

「さあ……」


 そんな話をしているうちにプラントにたどり着いた。


「長い道のりだった」

「そうかい?」

「うんまあ……」


 肩に乗っていたら実感はないものかな。そのうち巨人にのって試してみよう。……いるよね、巨人くらい。


「入り口はあっちかな」

「……」


 検討をつけて乗り込む。ちなみに、入り口と目をつけたのは壁にどでかくあけられた穴だった。がれきが山と積まれているけど、一人と一匹くらいは余裕で通り抜けられるだろう。


 通り抜けられた。


 内部は通路のようだ。外周沿いの円弧に沿って作られているらしく、左右に延びている……いや、左の方は崩落で埋もれていた。天井を見る。登れそう。


「なんであんたは道じゃない方へ進むんだい」

「え?」


 登れた。記憶上の高さと考えると更に三階ほどはありそう。合計五階か。地下はあるのかな。

 しまった、下の通路をもう少し探してもよかった。

 ともあれ奥に進んでいく。信号のような緑色のランプがサインカーブ風な緩急をつけてついたり消えたりしている。そのたびに影が踊る道を、奥へ奥へと進んでいき、気が向いたところで道を折れるとりあえずは中心部へ……。


「あれ」


 行き止まりだった。


「内部のほとんどは工場になってるんだろ。わたしたちが移動できるのは外周部だけだろうね」

「ということは、管理室も外周部にあるのかな」

「だろうね。まあ地下かもしれないが」

「…………」


 プラントは通常閉鎖施設のために存在する。もちろん地上部でも利用できるけど……。


 考えていたら、頭上から声が聞こえてきた。


「誰?」


 男の声だ。首を左右に振る。……左上にスピーカー。


「ここのプラントを操作している方を探してるんですが」

「最近多いね……」

「いや?」

「別に。どうぞ、まっすぐだよ」

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