奏司のお礼
「大変お世話になりました」
俺は絵梨ともつ鍋屋にいる。
冬はやっぱり鍋だよな。
福岡のもつ鍋を食べたら他でもつ鍋は食べれないぜ。
風邪をひいたときの看病のお礼として絵梨をもつ鍋屋に誘った。
それが世の中の男女にとって、一大イベントであるクリスマスだとしてもだ。
クリスマスゥ?
てやんでい!こちとて仏教徒だ!
キリストの誕生日なんて祝えるか!
九州男児なめんなよ!
…子供の頃は楽しみでした。すみません…。
クリスマスに楽しむ相手もいなければ、絵梨も俺も予定が空いていた。
風邪も完全に直ったし、絵梨に看病してもらった手前、何もしないでおくのは申し訳なかった。
まさか絵梨が看病してくれるとはなぁ…。
イルカに水をかけられた甲斐がったぜ!
「「かんぱーい!」」
大名にあるもつ鍋店。
有名店だけど、今日は予約が取れた。
そりゃ、世の中のカップルもニンニクの臭いをぷんぷんさせてのデートも嫌か。
俺は別にいいと思うんだけどなぁ…。
「今日は乾杯じゃなくてメリークリスマスのがいいんじゃない?」
「そうだな。ならもういっちょ」
「「メリークリスマス」」
もう一度グラスを合わせる。
何度乾杯したっていいだろ。
俺が酒を飲めるのは最初の一杯が限界なんだからよ。
最初くらいかっこつけさせてくれよ!
「お粥とスポーツジュースがもつ鍋に化けた」
「奏司、受けた恩は忘れないぜ」
「もうちょっと良い物渡しておけばよかった」
「奏司さんの財布には限界があるのよ?」
こいつ…。
これ以上って高級ディナーでも奢れってか?
たしかホテルでなんかやってたな…。
いけないけどね!
それでも看病してくれた絵梨には感謝してるよ。
「インフルじゃなくてよかったじゃん」
「インフルは一度しかかかったことねぇから」
「インフルだったら看病に行かないけどね」
「来てくれてもいいんだぞ?」
「嫌よ。うつりたくない」
インフルエンザは一度だけしかかかってないんだよなぁ。
高校のときだったけど、死ぬほどツラかった。
体力のある高校生でも死ぬほどツラかったんだから、衰えた今ならホントに死ぬかも。
看病してくれる人もいないしな…。
インフルになったら実家に帰るのもありだな…。
「ここのもつ鍋久しぶりに来たけど、やっぱり美味しいわね」
「だろ?醤油ベースもいいけど、ここの味噌ベースも美味いんだわ」
「〆は…?」
「「麺でしょ!」」
絵梨とこういう所は気が合うんだよな。
雑炊も捨てがたいけど、ここは麺だな。
俺ももつ鍋は久しぶりだから、明日の肌はぷるぷるだな。
「ケータイ屋って忙しいの?」
絵梨が俺の仕事のこと聞いてくるなんて珍しいな。
「この時期はそこまでだな。年末より、年度末のが忙しい。年末はまったりしてるかな。大掃除とかするくらいだし」
「ふーん。たしかに年度末は新学生がいたりとかで忙しいのね」
大掃除で思い出したけど、俺の家も大掃除しなきゃ。
1Kだからそんなに掃除する必要もないけど。
いつも掃除しない場所までしっかり掃除しとくか。
換気扇とかヤバそうだわ…。
「絵梨んとこは?」
「私のところはそこまでかな。風邪のシーズンになると忙しいけど」
「薬剤師だもんな」
「そそ」
俺は健康体だから、めったに病院には行かないけど。
風邪のシーズンになると病院も薬局も忙しいだろうなぁ…。
会社の人も昼休み中に病院行ってたりするもんな。
健康が一番だな。
「忘年会とかはやらねーの?」
「やるわよ。と言っても人少ないし、こじんまりとしたやつよ」
「ほーん。俺んとこは盛大にやるけどなぁ」
「会社次第じゃない?」
「んだな」
俺の会社は忘年会終わった。
どんちゃん騒ぎだった。
九州男児ばかりだから、酒を飲む量も半端じゃない。
飲み放題に焼酎がなかった日には那珂川に沈められるな。
「飲み会で男見つかればいいのにな」
「は?」
「飲み会って出会いの場だろ。出会いがあれば絵梨も彼氏できるだろー」
「………」
風邪から復活した俺の頭脳によるアドバイスは素晴らしいだろ。
さすがの絵梨も言葉を失うほど感動してるみたいだわ。
「なんで覚えてないのよ…」
「ん?」
「何にもない」




