奏司は逃げ出した。しかし逃げ道を塞がれた!
「奏司」
「ん?」
仕事終わりに天神で買い物をしていると後ろから声をかけられた。
後ろを振り向くと白衣をきた絵梨がいた。
「よく俺だって分かったな」
「そのリュックですぐ分かった。飲み会のときそれだし」
「そうでござんすか」
リュックで分かったのかよ。
このリュックなんてそこら中で売ってる既製品だけどな。
「私19時に終わるからご飯行こうよ」
「あと30分か」
「どう?」
断る理由もないし。
特に用事もないし。
「OK。適当にぶらついてるわ。天ぶら」
「終わったら連絡するね」
「ほいほい」
白衣の絵梨か…。
なんかいいな。
薬剤師って言ってたし、仕事中は白衣を着てるんだろうな。
さて、適当に時間を潰しますか。
「お待たせ」
「お疲れー」
絵梨が仕事を終えてやってきた。
白衣を着てない絵梨はいつも通りだ。
「何食う?」
「んー、たまには魚どう?」
「OK。行きたいとこあるか?」
「ない」
「なら中洲に関サバ美味いとこあるんだけど、そこにする?」
「そこで」
絵梨様が魚をご所望だ!
今宵は魚じゃー!
一人暮らしだと魚ってあんまり食べないからね。
たまには食べたくなるやーつ。
「「お疲れー」」
幸いに席も空いており、店に入ることができた。
最初の一杯目はビールだよな。
俺は最初の一杯だけで後は烏龍茶だけど…。
「ねぇねぇ、本屋で何してたの?エッチな本?」
「ちげーし。参考書ですー」
「つまんな」
確かに本屋から出てたけど、エロ本なんて買ってないわ!
資格勉強のための参考書でーす!
今時本屋でエロ本なんて買わねーよ。
俺はスマホ派だからな。
「さてはスマホの中だな」
「アルワケナイジャナイカ」
「怪しい。スマホ貸して」
「やだね!誰が見せるか!」
スマホの中身見せたら俺の性癖ばれるじゃねーか!
絵梨に見せたらノブさんところで広められるのが目に見えてる。
誰が見せるか!
死守だ!死守!
「いいじゃん。ケチ臭い男はモテないよ」
「ケチじゃねーだろ!?誰が絵梨に男のお宝見せるか」
「器の小っちゃい男ですな」
「器の問題じゃないと思うんですよね」
そんなに俺を虐めて楽しいか!?
たしかに、幼稚園のときの写真には泣いてる俺の写真がある。
泣いてる俺の横で満面の笑みを浮かべている絵梨が一緒に写ってるけどな!
また泣かされるわ!
25にもなって泣かされたくないわ!
「あの真面目な絵梨ちゃんがエロに興味があるとか信じられんわ」
「…逆にこの年で知らないのも変じゃない?」
「…それもそうだな」
昔の絵梨は真面目だったからなぁ。
がり勉ちゃんだったし。
秀才の絵梨とバカの代表の俺が付き合うのはみんなびっくりしてたけど。
「酷っ。今私のことがり勉って思ったでしょ」
「なぜバレたし」
「奏司の考えくらいわかるし」
コイツッ!?エスパーかっ!?
俺の考えが読めるとは…。
能力者かよ。
「昔の私はがり勉だったもんね」
「眼鏡に髪の毛は後ろで縛って、オシャレのオの字もなかったからな」
「誰もそこまで言ってないんだけど。刺すよ?」
「刺してから言うんじゃねーよ。痛いっす…」
今のオシャレな絵梨とは考え付かないほど地味だった中学時代の絵梨。
10年も経てば人も変わるわな。
絵梨さん?
串で俺の額を突くのは止めてもらえますかね?
刺すよって言って刺すのは条約違反ですぜ。
国連に言っちゃうよ?
「奏司は彼女欲しくないの?」
「欲しいに決まってるだろ。こちとて性欲の塊や」
「うわ、キモ」
「マジで引くのは止めてもらっていいですか?傷つきます…」
彼女欲しいに決まってるだろ!
彼女いたらノブさんの店で飲んでから夜の中洲の街に繰り出さんわ。
「絵梨は?」
「私?欲しいよ」
「そうは見えないけど」
「はぁ?失礼な。頭来た。この後ノブさんのお店は全部奏司持ちね」
「はぁっ!?」
全然欲しそうに見えないんですけどね。
絶対欲しくないでしょ?
嘘までついて俺に奢らせたいのか。
「これは決定事項。ゴチになります」
「やだね!俺はこの後用があるからノブさんとこいけねーし」
「嘘。用事ないって言ってたじゃん」
ぐぬぬ…。
数時間前の俺を呪いたい。
絵梨も覚えてるなよ…。
これは逃げられんか…。
ノブさんとこくらいなら出したらー!




