荷物持ち奏司くん
「明けましておめでとう」
「明けおめー」
新年1月1日。
俺は絵梨と中洲に隣接しているショッピングモールに来ている。
絵梨から「初売りにいくから付き合え」とのお願いがあり、寝正月の予定だった俺の予定は無残にも崩れ去った。
絵梨と待ち合わせをし、二人で開店を待っている。
ちなみに、中洲川端駅から行こうとする場合、男性諸君は気をつけるんだぞ。
中洲を突っ切る場合、新地でキャッチに会う可能性が高い。
そういうお店が多いからな。
俺も遊びに行きたかったけど、遊びに行った場合は絵梨に殺されるから我慢した。
那珂川に落とされて新年早々風邪ひきたくねーわ。
「それってあのときのブーツ?」
「そそ。修理もしたから問題なく履けるし」
「ほーん」
絵梨が履いているブーツは、絵梨と運命的な再開をしたきっかけとなったブーツだ。
修理したんだ。
この時期にショートブーツは寒くないか?
え、タイツ履いてるから大丈夫だって?
俺には理解できんな…。
見ろ!俺の完全防寒を!モコモコで着膨れしてるぜ。
「今日は荷物持ちお願いね」
「へーへー。両手で持てるだけの量なら持ってやるよ」
「やっさしー」
「だろ?だから俺の待遇改善を要望するわ」
「………」
「黙るなよっ!?」
二人で待っていれば、待つこともそこまで苦じゃないな。
寒いけど、絵梨と話していればそこまでだな。
「両手で持てるだけって言ったけどよ…」
「うん」
「買い過ぎじゃね?」
「そんなことないでしょ」
新年早々の戦いの幕があけ、絵梨に連れまわされた。
あっちに行って、こっちに行って、次は上で…。
こういうときの女性の力はすげーわ…。
俺だったらお目当ての品なんて数個しか見繕わねーって。
なんでこんなに買うかね。
福袋が6個もあるっておかしくない?
俺の両手もそろそろ限界です…。
「お礼にお寿司奢ってあげてるじゃん」
「ワー嬉シイナー」
「全然嬉しそうじゃないけど」
「ソンナコトナイヨ?」
寿司は美味いけどよ。これは買い過ぎだって。
福袋って色々入ってるから量もあるだろ。
当たりもあれば外れもあるわけだし。
女の気持ちはわからんわ。
俺もちゃっかり良さそうな福袋買えたからいいんだけどな。
絵梨に誘われなかったら来なかったと思う。
「それで、この戦利品を絵梨の家に持っていけばいいのか?」
「よく分かってるじゃん」
「歩いて行ける距離なのに車で来いって言われれば俺でも気づくわ」
「正解した奏司にはガリをあげよう」
「わーい…ってガリかよ!」
「………」
「何してるの?行くよ」
「いやな…」
絵梨の家に福袋(一部)を置き、絵梨の指示で運転し、着いた場所は絵梨の実家だった。
いや、俺は帰るけど…。
絵梨の実家なんて何十年ぶりだよ…。
さすがに正月に俺が邪魔するわけにはいかんだろ…。
「ただいまー」
「お帰りー。あら…、もしかして奏司くん?大きくなったわねー」
「明けましておめでとうございます。おばさんも変わらずお綺麗で」
「やーねー!」
絵梨のやつ…。
俺の言葉無視するなよ!
正月に俺がいるのは場違いだろ?
家族とか親戚とかとどんちゃんするもんだろ。
部外者の俺を巻き込むな。
おばさんは俺を覚えていたようだ。
前に会ったのは中学のときかだったか?
相変わらず綺麗だな。
絵梨もおばさんみたいなおっとりとした性格になれば嫁の貰い手の1人や2人くらい…。
痛っ!?ヒールで踏むんじゃねーよ!
「あれ?私の部屋行かないの?」
「おじさんに挨拶だけさせてくれよ」
「お父さんは放置しておけばいいのに」
「そういうわけにはいかんだろ」
勝手知ったる絵梨の実家。
子供の頃は遊びに来てたから家の間取りも完璧だ。
「明けましておめでとうございます」
「ん?奏司か。デカくなったな!」
「はい、ご無沙汰しております」
「飲んでけ飲んでけ」
「今日は車でして…」
絵梨の親父さんは相変わらずだ。
さすが九州男児。
さっそく炬燵の上には焼酎じゃんかよ。
俺は車なんで無理です!
「今日はどうしたと?」
「絵梨の買い物に付き合わされました」
「なんだ、元旦に買い物行く仲なのか。奏司、絵梨を貰ってやってくれ。嫁の貰い手がなくてな」
「ちょっとお父さん!」
おじさん、酔っ払い過ぎです。
絵梨さん、俺の肩をバシバシ叩かないで。
痛いっす…。
「奏司ならいいじゃないか。幼馴染じゃないか」
「い、いえ…」
「何よ。私が嫌なわけ?」
「そうじゃないだろ…」
絵梨さんや。
そんな怖い目で俺を見ないでおくれ。
睨むなよ…。
怖いんだから!




