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84 雨の中、ホームエリアへGO!

お待たせしました。


「貧乏くじ。このエデンが?」


「そう。精霊の生まれる森近くで土地を拓くなぞ並大抵じゃない。なのに、それを決めた貴族たちは金は出さぬ、領主の裁量で何とかせよ、と来た。身一つでプルミエに来たディスケート様に金なんざあるかっての。ポラリス様はそりゃ生活に不自由ないくらいの金銭は稼げるがそれだってこんな広い森林を開拓出来るほどの予算を出せるわけでもない」


私の問いに、ハァーと武器屋のおじさんは息を吐く。


「転移門のその権利とかでお金は入らないの?」

「……それは、神殿が権利を買い取りまして……、ハイ」

「ポラリスさん、神殿に食いものにされてる!?」

「そ、そ、れは違いますですよ、誤解なきよう!!」

「こら、フェザント、言い過ぎだ。俺もちょっくら そう思っていたけどよ」


私とメリッサちゃんで並んでジト目で丸顔神官のドットさんを見た。フランソワ君がアワアワしたあと、一生懸命ジト目を作ろうと奮戦。いや、付き合わんでもいいのよ。愛いヤツ。

なぜかその隣でジローとミミッキーがテーブルの上でアルゼンチンタンゴの練習を始めた。いや、付き合わなくてもいいけど そこまでマイペースだとお母さんちょっと寂しい。……おじさんや神官さんに気づかれないよう、2足歩行でタンゴを踊る2匹をつい、動画撮影始めてしまった。テヘ。この視界外撮影できるアプリ、ホント便利だな。


「そろそろ日も暮れてきた。フェザントはどうするんだ? この小屋に泊まるなら皆で雑魚寝になるが…」

「あ、私、自分の土地があるんです。そこに簡易の住まいを置きます」


簡易キッチンルームを設置すれば雨露しのげるもんね。

おじさんや神官さんがそれは便利だなあ、と羨まし気に見てきたが すまん、泊めてあげることは出来ぬ。こっちもこの小屋に負けないくらい狭いし。


「この雨の中、その土地まで行くのかい?」


木こりのおじさんが心配そうに聞いてくれた。


「自分の土地の中はセーフティー…、この小屋の周囲と同じく安全地帯のはずなので」


それに。


「ここからそれほど離れていないんですよね」


私は扉を通ってきてから自動的に入手出来ていた"エデンの開拓状況地図"を見る。

ここにはエデンの現状が出ているのだ。便利。


(一番広く開拓されている所は特定プレーヤーの所有地なんだよね。でも、私みたいに最初から拓けていた場所をホームとして貰ったんじゃないみたい。それこそ個人所有、開拓地って書いてある)


そしてこの小屋の少し先に川があり、その向こうにマイホーム、というピンが立っている。

とりあえずそこまで行ってみようと私は小屋の皆さんに挨拶をして叩きつける雨の中歩きだした。

外に出ると小屋の周囲は簡素な木の塀に囲まれていて、その中がセーフティーのようだ。


(このセーフティーも開拓で広がるのかな?)


街を作るなら多分そうだろうと私は塀の外に一歩出る。

幸い襲ってくるモンスターは数も多くなく、ファンシー周辺と変わらない強さだった。

ただ雨だと私とミミッキーの機動性が損なわれていて、少々手間取るときもあった。

天候で戦闘に影響あるなんて思わなかったので正直慌てたよね。


シャバシャバ雨の中を半ば駆けつつ広く浅い川に出た。雨のせいか いくらか増水しているようで、渡るにはもしかしたら水泳スキルがいるのではと冷や汗をかく。

しかしその心配は無用だった。


「おねーさま! ここに小舟がありますわ~!」


川のこちらと向こうに桟橋があり、そこに小さい舟があった。


「なんか時代劇で見たような小舟だね…」


(大丈夫か? このサイズで流されず向こう岸に着くの? もしかしてミニゲーム的ななにか?)


それらは杞憂で全員乗り込むと川の状態関係なくスイ~と小舟は向こう岸へ自動で辿り着いた。……ちょっと残念★

小舟が川岸の桟橋に着くと私の眼前に《ホームエリア/非戦闘エリア》と出たので、やっぱりセーフティーだった。


ペットの皆はまだ戦闘態勢から解除されていないのか、セーフティーであるホーム地帯に入ったというのにまだそれぞれ外に出ていた。

メリッサちゃんとフランソワ君はキャーと言いながら両手で頭を抑えている。

濡れないようにという ささやかな抵抗だろうか。めっちゃ、無駄な努力が微笑ましいんだけど。


川岸はキレイな細かな小石が敷き詰められており、この天気でなければきっと光を反射してきらきらと目にも楽しい色合いを見せてくれたに違いない。この雨で水は濁り、川面には雨のたたきつける波紋が幾重にも連なっている。

もう少し雨脚が弱ければ風情ある情景であったろうなと思うのだけど、触感ゼロ設定にはしていないので、私もちょこーっとこの強い雨の感触から早く逃げたかった。


「さて、皆! ここから100メートル先が私たちの土地だよ~」

「おー!」

「お、おー…!」

「キュ!」

「チュー!」


(よしよし、皆まだ元気だな。えっとこの先がピンの立っているところ…。お!)


自分のホームの土地の眼前に来ると、薄く足元に金色の境界線が敷かれているのが見えた。

そして、そこに個人所有地の立て札が見える。

そこに一歩立ち入るとメッセージが聞こえた。


『所有者フェザントであることを確認しました。今後このメッセージは表示されません。ステータス画面にホーム設定が加わりました。ホーム内の設定変更が可能です』


(おおお~! 俺の城~! でも今はそれどころではないわ)


ホーム内も外の天候が影響するため、私たちはずぶ濡れの状態なのだ。

なのでホーム設定は後回しにして、急いで"旅行用携帯キッチンルーム"を出した。


……そんな私たちをじっと見つめる視線があることなど欠片も気が付かずに。



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― 新着の感想 ―
[一言] タンゴ踊る2人(2匹)を見にまた来ました。
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