35 生産職への道
翌日はリオンちゃんは午前中は学校とのことなので、武器屋さんのお手伝いしたり、おばさんの家事手伝いして過ごした。
おばさんと一緒に畑仕事したら、スキルに【ガーデニング】と【農業】が生えた。やた。武器屋の裏手のイングリッシュガーデンはそれこそすごい素敵なので、私がハウジングで家を手に入れたら お手本にしたいお庭なのだ。
あと【料理】。お昼ごはんの準備を手伝ったおかげだな。SPたまったら、順次取得していこうっと。
(しかし、私、魔法系生えにくいよね…。ステータスのせいかなー)
あと武器屋さんで古くなった剣の錆びを取る作業手伝ってたら【修復】が出た。
おじさんいわく、ドール種はメンテナンス必要なので、これがあれば私が彼女をメンテできるとのこと。おおおお…。
おまけに、おじさんがバイト代をくれようとして困ってしまった。
さすがに、これは受け取れない。夕べの宿代代わりと固辞したら、おばさんがお古だけどとまた服を持ってきてくれた。
「これはフェザントちゃんに。フェザントちゃんは私と同じ位の身長だから、サイズ直しは必要ないわよね。その格好、目立つでしょ?」
(あ、もしかして、この破魔の装備、特殊装備っぽいもんね。私以外、誰も着ていない装備だから、やたら見られていたのか~!)
昨日からの注目の理由にようやく気がつく私。
「おばさんの若い頃の服だからちょっと古臭いかもしれないけど…。ビリーのところで裁縫を教わったら、手直ししてみたらいいわよ」
また、敷居の高いこと仰る…。でも、ありがたく頂戴しました。えへ。
でもこの世界のNPCのファッションはハニーさんが着ていたような中欧風の民族衣装なので、白いフレンチ袖にスカート部分は濃い目ピンクに裾に花の刺繍、黒いビスチェに小さなエプロン付きと かーなーり可愛い格好。
おばさんが あら似合うわー、と目を細め、メリッサちゃんもおねーさま、素敵! と大絶賛いただきました。
あと、武器屋のおじさんが昔、扱った時のだが、とドール種の古いカタログをくれた。
これはピコンとシステム音が鳴り、《秘匿ジョブイベントに関わる特殊アイテムを取得しました》とメッセージが出た。
--と、まあリオンちゃんを待つ午前中は大変充実して過ごしました。
「おねえちゃん、ビリーおじさんとこに行こ!」
午後は学校から帰宅したリオンちゃんと一緒に防具屋さんへ。
と、言ってもお隣なんだけどね。
ジローに乗るメリッサちゃんと、リオンちゃんに手を引かれる私。そして、ジロジロ見るプレーヤー。
(メリッサちゃんのせいか、衣装変えても注目度は変わらないわ。これはもうしょうがないか…)
防具屋さんの店構えは武器屋さんとお揃いだけど、ドアの色が違う。武器屋さんは赤で暖色系、防具屋さんは緑で、内装はアースカラーでまとまっていた。
そして、ビリーおじさーんと声をかけると奥からスラリとした黒髪、ワンレンショートのイケメンの男の人が現れ一言。
「あらあら、こんにちはリオン。その人が紹介してくれる冒険者さん? 可愛い人だこと」
…………ビリーおじさん、キャラ盛りすぎじゃね?
防具屋の奥は工房になっていて、そこに私とリオンちゃんは通された。
工房の隅にはうずたかく革が積まれている。それを選別しているアシスタントさんがいて、彼らは革の染色をしているみたい。そして、隣室があり、扉は開かれていて、そこにもアシスタントさんがいて、こちらは靴を作っていた。その隣の部屋は防具を作っている。
(あの靴、初心者装備卒業したら買うだろう革のブーツだ。革鎧も。思ったよりこの工房大きい…。)
「驚いた? そうよ、この"ビリーの工房"でこの島の革製品を一手に担っているのよ。兄貴の武器屋は仕入れだけだけどね。ふふ」
「だって、お父さんは"商人"だもん」
「そうなの?」
「そうなの。鍛冶屋さんは神殿近くに住んでいるの。そこのお爺さんが武器職人さんなの」
「兄貴は人当たりがいいから。商業ギルドや冒険者ギルドにも顔が利くわ。おかげで弟のアタシもこうして、島でいい商売が出来るのよ。兄貴には感謝しているわ」
うふふ、とビリーさんが微笑む。
確かに。私が大橋通行証手に入れた あのPK捕縛作戦に参加出来たのも、武器屋のおじさんの紹介だもんね。いかついお顔のおじさんを思い出すが、怖い印象はない。
「さて、夕べ兄貴から聞いているわ。ドール種の防具を作りたいんですってね。アタシのところは革製品が主流だからドール種の防具とは少し違うんだけど…。兄貴からカタログ貰ったでしょ? 目を通した?」
こくりと頷いてそれを出す。
武器屋のおじさんから貰った"ドール種カタログ"。色とりどりのドレスを身に纏ったドール種さんの写真がカラーで出ている。
「普通はドール種の防具はドレスで、【付与】で防御力を付与する方法が多いのよ。付与の際は防御力の強化アイテムを使うのね。ドレス作りは教えられないけど、強化アイテムの付与は教えてあげられるわ。あと、革を縫い付けて貰うから、【裁縫】も覚えられるわよ」
「はい、充分です! よろしくお願いします」
ペコと頭を下げる。
「じゃあさっそく手伝ってもらうわね。ああ、リオンあなたが面倒見て。まず染色に連れて行って頂戴。風魔法を持っていると聞いているわよ? それを役立ててもらうわ」
はい、と私はまたしっかり返事する。
「うふふ、いいお返事! 挨拶の出来る子は好きよ。じゃあ、リオン、頼むわね」
「はーい! おねえちゃん、じゃあこっちに来て」
リオンちゃんに促され、私は革の染色している一角へ移動した。
大きな革が液体に漬け込まれていて、ピカッと光ると職人さんが取り出し順に外に出して乾かしている。干している器材は円柱で、2段になっていて、どこかで見たことあるような形状だ。
(あ、アジの干物乾かすヤツ)
職人さんが私とリオンちゃんを見て、にこやかに笑う。
「ああ、ビリーさんに聞いているよ。冒険者のお嬢さんに頼みたいのはこの干している円柱を、風魔法で動かして欲しいんだよ。こんな風に」
言って彼は軽く円柱を回す。ゆっくりとそれはくるくる廻った。
「完全に乾くまで廻しておくれ。乾いたらピカと光るから、それは見逃さないように。その間、暇だろうからこれ」
手渡されたのは革の余りぎれ。それと。
「針と…糸?」
(普通の針より太い針だ。糸も普通のと違う)
「革細工用の針さ。この余りぎれのここからここまでまっすぐ本返し縫いで縫えるようになってくれ。余りぎれはたくさんあるから練習してくれ。丁寧にな」
そう言って彼はゆっくりと縫って、私に手本を見せてくれた。
(おお、これが本返し縫いね)
風魔法で革を乾燥させつつ、本返し縫いを延々と。
チクヌイチクヌイチクヌイチクヌイチクヌイチクヌイチクヌイチクヌイ…。
ピカッと革が光ったら、職人さんにお知らせ。
職人さんと一緒に乾いた分を取り込み、新たな革を干して、また風魔法で円柱をクルクル廻して乾燥…。
すると、暇を持て余したのか、となりでメリッサちゃんも針を持って全身使ってチクヌイ始めた。
可愛いん~。癒しだな~。--あ、メリッサちゃんの方が速い…。そして、綺麗…。
「わたくし、【裁縫】持ちですので…。おねーさまもスキルを取得なさったらコレくらい朝飯前ですわ!」
お気遣いアリガト…。
おっと、【付与】【裁縫】生えた! やった!!
革の染色など実際とは異なります~。ゲームですから。




