25 フィールドボス山鯨と親指姫
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"山鯨"は親指姫(仮称)とともに頭のお花にささっていた金の針も抜けてどうやら"混乱状態"から戻ったらしい。さっきからの体当たりをやめ、足元に魔法陣が展開された。ヤツの瞳に知性が宿っている。もう、弱点は見せてくれないらしい。
翻って私め知性はポイントで少し上げているけど低めで風魔法Lv3でも効果は微風程度…。
多分、魔法防御って、知性や魔力、精神関係あるかな。精神は高くしているけど魔力は他に比べて低い。よもや、これが関係しているんじゃないでしょうね。だとしたら、私、魔法に打たれ弱いよ!
(ぎゃぎゃ、魔法で来られたら耐えられるかわかんない! 魔法使うモンスターとあまり対峙していないんだよ、私。ああ、もう、怖いよ~! とりあえず、2連射…あ)
『弓レベルがあがりました』
(やた! 弓のスキルレベル上がった!【3連射】覚えている!)
安堵と伴に、鉄鏃で矢を放っていく。
"山鯨"に中ると結構なHPを削るが、ヤツは魔法キャンセルをしない。むしろ魔法陣が赤く、大きく強く光りだす。
とたん、"山鯨"の口から真っ赤な火の玉がとてつもないスピードで放たれた。
私は避けようと走るが、なんと火の玉は追尾してくる。
そのまま、私のみぞおちにドガンとぶつかり、炎上した。痛みや熱さは感じない。だが。
……私のHPが半分になっている……。
「ぎゃー! やだ! あともう1発しか耐えられないの?」
私、めちゃ魔法に弱い? ううん、ジローの防御がないからか!
ジローの【アイギスの盾】はジローがその場その場で位置移動して防御してくれていたけど、そうしなければ複数人の防御はできないのだ。
今は後方の親指姫の防御を任せている。
本来は縦にジロー、私、親指姫の配列でジローの【アイギスの盾】で防げばいいのだろうけど、ヘイトは私に向いている。万一でもジローの防御を抜けてきたら、私は無事でも親指姫の破損率がどうなるか。
私は結構、"秘匿ジョブクエスト"が気になっているのだ。
それならジローたちとは別方向に距離を取って、攻撃は私自身に向けた方がいいと判断したのだけど--。
うう、親指姫だけでなく、私も魔法防御は紙なのか…ッ。
「おねーさまっ。【癒しの歌】!」
後衛にいる親指姫が短いフレーズを口ずさむ。おお、なかなか いいお声だ。白い輝きの音符のマークが私の周りをくるんと廻って消えたら、私の体が白い光に包まれ、わずかだがHP回復する。光は今も私を覆っている。
(えっと、私の状態、癒しの歌効果中…。定期的にHP(小)回復…。おお、リジェネってやつだな。有難い)
しかし、ヤツはさらに追い討ちをかけてくる。今度は突進をしてくる。避けられなかった! ぎゃっふぅう!
(あ、でも物理はそれほどでもない。耐えられる。でも残りHP60…。わー、もう、また死ぬのいやー!)
親指姫がタイミングよくHP回復薬で支援してくれ、それと癒しの歌効果で90まで持ち直したが、時間の問題かと思った。鉄鏃の矢が尽きたのだ。あとは威力の弱い石鏃しか残っていない。並みのイノシシでは効果あったけれど、"山鯨"には使っていない。そんな危険な賭けはしたくなかったのだ。
だが、ふと気がつく。
ジローの新しいスキル【アイギスの檻】が有効になっていることを。
《使用MP50、マッドゲージが満たされました》
(マッドゲージって…? ジローはMPないから、これ私のか。これ使ったらMPなくなっちゃう。どうしよ)
見るとまた"山鯨"が魔法陣を展開している。この間はチャージになるのかヤツはその場に立ち止まる。
ええい、と この間にやれることやろうと私は【アイギスの檻】を行使した。
すると、親指姫をポテと草地に降ろしたジローがそのまま、ふよふよ空中を泳ぎ始めた。
《【アイギスの檻】発動。--チャージ中です》
(ち、ち、チャージタイムあるのぉぉぉ!!)
動揺した私は矢を外す。
石鏃の矢も今ので終わった。
ああ…。
(私の転職先は消えた~~~~!!)
ガクリと膝を付いた私に親指姫がタタタと駆けて来て えいっと"発奮薬"なるものをかけてくれた。
《戦闘中の攻撃力が+3になります》
(あ、いや、そうじゃないけど…嬉しいよ…)
気持ちを入れ替え私はすっくと立つ。親指姫が私を見上げ、パチパチ拍手する。なんだこれメチャ可愛い。
この子の中では「フェザント大地に立つ」の回なのかコレ。
親指姫が可愛いので、この子が壊れるのを見過ごすことなど出来まい。
丁度、"山鯨"は魔法チャージ中。叩き放題だ。
リオンちゃんも言っていたじゃない。武器がないならこぶしで語れと。
私は"ジャイアントキリング"の格上戦闘時のクリティカル率向上と"リオンちゃん体術"の体型が大きい敵に10%アップがあるじゃない。
("フレンドゴーストの弓"の13には遠く及ばない攻撃力8.8…。でもやるぞ! 覚悟決めた!)
魔法チャージ中の"山鯨"を【鵜の目鷹の目】で再度見直す。
(あれ?)
--弱点が
(左前脚の内側じゃなくなっている…?)




