黒燐の剣
今は私とダムキナは、ダムキナの家で過ごしている。
「おはようっす。」
「おはよう、ダムキナ。」
あれから数ヶ月、ダムキナは一向に元気を取り戻さない。…無理もない。もし、あの引き金を引いたのがダムキナでは無く私だったら、もう少し違う未来になったのかもしれない。私は今、後悔している。と、この耳鳴りは…
「やあ、久しぶりだね。お嬢さんたち。」
「にっこりさん?どうしてここに?」
「ああ、あの時のっすか。」
ぼんやりと空を見上げるダムキナの傍に、大きな黒い塊を出現させた。
「これは…先輩の…」
それは、黒燐の剣士の持っていた大剣に間違い無かった。
「!」
私は慌ててそれをダムキナから引き離そうとしたが、にっこりさんがそれを制止した。
「心配要らないよ。君の想像している様な力は、もうこの剣からは消し去ったからね。」
ダムキナは、その大剣をゆっくりと持ち上げた。思いの外軽そうだ。
「…同じっす…先輩の剣と、重さも、持ち心地。」
と、不意をつく様に辺りに地鳴りが鳴り響く。窓の外に、巨大な狼の様なモンスターがこちらに向かってくるのが見えた。そして、いつの間にやらにっこりは消えていた。
「め…メメさん!どうしましょう!お家が踏み潰されちゃいます!」
「うーん…ダムキナがやれば?」
「え!?」
はっきり言うと、もう戦闘なんて何日もしておらず、あのデカブツを食い止める自信があまり無いからだが…
「で…でもっす…このままいけば街に…」
「私はあくまでも魔族よ?貴方は友達だから襲わないのであって、別に人間に味方すると義理もないんだからね。それに、あの剣士はもう居ない…貴方が自分で道を切り開いていくべきじゃない?」
「………」
「別に、貴方がどうしたいかは勝手よ?」
「…先輩はもう居ないなら…自分が、新しい先輩になるっす!」
大剣を握りしめ、家から飛び出していく。うう…もう限界だ…。
「ガシャンガシャン!」
モンスターを地面に留めていた鎖が、音を立てて弾き飛ぶ。疲れた…当分は動きたくないけど、ダムキナの様子を見に行く。
「パリパリパリパリ!」
大剣の平べったい艶やかな刀身は、刺々しく乱れて変形する。魔獣の腕の様な形態になり、モンスターの首を掴み、投げ飛ばした。大きな轍を引きながら、モンスターは吹き飛んでいく。
「ガオオオオ!」
モンスターは体制を立て直すと、ダムキナの方にかけていく。
「シャキン!」
ダムキナの武器が再び黒剣になると、モンスターを一撃で両断した。
「ひゅう。」
モンスターは光の粒子や、煙になって消えていく。
『ガガガガ…』
ズンとした頭痛がする。また局長だ。
『ねえ、そこに送っといたフェンリル見なかった?急に反応が消えたんだけど…」
『ああ、今倒されましたよ?』
『え!?本当に!?珍しいこともあるものだね〜』
『ええ…本当に。』




