海鳥の筒
ユアンは写しを細い筒へ収め、港に巣を作る海鳥の脚へ結んだ。鳥が禁忌大陸へ渡る保証はない。それでも正門も伝令路も教会に塞がれた今、空だけが残された道だった。矢を受けた鳥は低く飛びながら海へ出た。
聖光教の教えでは、魔族は言葉をまねるだけの獣とされる。だから使節が何を話しても、理解できるという事実そのものが教義への脅威になった。
王国の兵にも迷いはあった。命令書には魔物の拘束とあるが、牢の中から聞こえるのは仲間の傷を案じる声と、薬を求める声だった。剣を握る手は、教えと目の前の事実の間で震えた。
ミレアは恐怖に屈しないことと、恐怖を持たないことを混同しなかった。怖いと認めたうえで、隣の仲間へ落ち着いた声を渡す。その声が牢の暗闇で皆の呼吸を揃えた。
書記の写しと魚売りの証言が、教会の布告とは異なる出来事を残し始めた。まだ町を動かす力はなくても、完全な沈黙ではなくなった。
記録する者は、見たことと命じられた説明を別々の頁へ書いた。その小さな区別が、後に真実を選び直す場所になる。
祈る者のすべてが処罰を望んだわけではない。声を上げられない者の沈黙まで、教会は賛同として数えていた。
港の風は白布を揺らし、その向こうで教会の旗も同じ風を受けていた。旗が違っても、空まで二つに分かれてはいない。
記録する者は、見たことと命じられた説明を別々の頁へ書いた。その小さな区別が、後に真実を選び直す場所になる。
祈る者のすべてが処罰を望んだわけではない。声を上げられない者の沈黙まで、教会は賛同として数えていた。
港の風は白布を揺らし、その向こうで教会の旗も同じ風を受けていた。旗が違っても、空まで二つに分かれてはいない。
(本文実測:696字)




