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執事一家の次男に転生したので、全力でお姫様に尽くしたいと思います。  作者: 比津磁界


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第12話:【神気】無限の領域と、十二の核

「魂の核」とは何か、そして「属性」や「無限の射程」がもたらす異次元の恩恵。

アルフレッドが直面していた魔法の壁を、シンさんが軽やかに、けれど確かな真理をもって壊していく様子をお楽しみください。


執事としての執念と、神様のお節介。二人の深夜の対話が、最強の守護者たちを生み出す準備を整えていきます。

「さて、アル。ここからは少し、核の成り立ちについて深掘りしてみようか」


シンの指先が描く光の紋様が、より複雑に、より生物的な躍動感を帯び始める。その動きは軽やかで、まるで魔法を楽しんでいるかのようだ。


「神気を混ぜれば『核』ができるって言ったよね。これは単なる魔力の集積回路じゃないんだよ。神気っていうのは、いわば私の『存在の断片』。それを君の魔力という粘土で優しく包み込むことで、そこには擬似的な霊魂が宿るんだ」


アルフレッドはその言葉の重みを、胃の奥に冷たい石を置かれたような感覚で受け止めた。シンさんの口調は軽いけれど、語っている内容は世界の理を根底から覆すものだ。


「霊魂……。それはつまり、彼らが私と同じように『恐怖』や『喜び』を感じるということですか?」


「うーん、そこまで人間臭いものじゃないかな。でも、『目的』に対する『渇望』は持つようになるよ。君が『リリーを守れ』って願いを込めて神気を流せば、彼らにとってその命令は生存本能と同じ意味になるんだ。今までのゴーレムは、落石に対して君の『避けろ』っていう命令を待つしかなかったよね? でも、心を持つ彼らは違う。君が指示を出すよりも早く、石の軌道を計算して、自らの体を盾にする。……主人の『意図』を汲み取って、先回りして答えを出す。それが自律の真髄なんだよ」


シンはアルの目を覗き込むようにして、悪戯っぽく微笑んだ。


「ただ、気をつけてね。意志を持つっていうことは、時として主人の命令に『それは最善じゃないよ』って判断を下す可能性もある。彼らは君の操り人形じゃなくて、志を共有する『半身』なんだ。その信頼関係を築けるかどうかが、神気っていう力を使いこなす鍵になるんだよ」


アルフレッドは机に置かれた木彫りの雛形を見つめた。

もし、彼らに「心」があるのなら。それは自分の「リリーを傷つけたくない」という切実な願いが形になったものだ。


「……彼らが私の意志を継ぐ者だというのなら、それ以上に心強いことはありません。執事の仕事とは、主人が望む前にすべてを整えておくことですから」


「ふふ、君らしい答えだね。じゃあ次に、その魂に纏わせる『衣』……属性のお話をしようか」


シンは空中に浮かぶ五色の光を、まるで手品のようにアルの周囲で旋回させた。


「この世界の人間は、生まれながらにして全属性の回路を持ってるよね。でも、人間の肉体っていう『器』には限界があるんだ。全属性を使えるって言っても、それは器の中に五つの小さな小瓶が入ってるようなものだよ。火を使えば水が薄まるし、風を練れば土が疎かになる。それに、誰だって得意な色……属性に偏っちゃうものだよね」


アルフレッドは深く頷いた。彼自身、緻密な計算を要する空間転移や収納は得意だが、雷魔法のような荒々しく、制御を離れやすい属性には、無意識の苦手意識があった。


「でも、神気で生まれる『十二守護者』は違うよ。彼らはそれぞれが、一つの大きなタンクそのものとして特化できるんだ。君が作る時に、ほんの一滴……例えば『雷』の魔力を混ぜてみると、神気がその性質を極限まで引き出して、彼らの全身を雷の回路で上書きしちゃうから。その時、彼らは『雷魔法を使う人形』じゃなくて、『歩く落雷』そのものになるんだよ」


「……全属性を、限界まで高めた個体として独立させる、ということですね」


「そう。そういうことだね。炎を纏う者は、その熱で敵を阻むだけじゃなく、自分の傷を炎で癒やすこともできる。水を司る者は、霧になって辺りを探ったり、氷になってすべてを凍てつかせたりね。君の苦手な属性だって、彼らなら神の精度で使いこなしてくれるよ。十二体っていう限られた数の中で、どの属性を何体作るか……。それは、君がどんな陣形を思い描くか次第だよ」


アルの脳内では、すでに幾千もの戦術シミュレーションが火花を散らしていた。

前衛に土属性の重装甲、中衛に火と雷の遊撃。後衛には水による治癒と、風による広域索敵。

(……完璧だ。これならば、どのような地形で、どのような魔物の群れに囲まれても、リリーの周囲百メートルを絶対の『聖域』に変えられる)


「そして、君が一番欲しがっていた力……。領域の拡張だね」


シンの声が、深夜の静寂に心地よく響く。


「人間の魔力って、本来は体から離れるほど薄れて、消えていくものだよね。君がお城一つ分をカバーできてるのは、それだけで十分すごいことだけど、それでも『物理的な距離』っていう呪縛からは逃げられない。……でも、神気は別物だよ」


シンは窓の向こう、暗闇に沈む王都の街並みを指差した。


「神気は、この世界っていう『システム』に接続するためのパスワードみたいなものなんだ。神気を核にしたゴーレムは、君の魔力を直接吸い上げるんじゃなくて、世界に満ちてる魔力を君の魔力波長に変換して、自分のエネルギーにするんだよ。つまり、君からどれだけ離れていても、彼らは止まらない。……それだけじゃないよ。彼らが見る景色、聞く音、感じる空気の震えは、神の回線を通じてダイレクトに君の頭の中に共有できるようになる」


「……それは、つまり」


「そう。君がこの部屋に座ったまま、東の果てにいるゴーレムの指先を動かして、その場の草の匂いを嗅ぐことだってできちゃうんだよ。操作範囲は、この星の表面すべて。君の元居た世界でいえば、チートだね」


アルフレッドは、その広大すぎる感覚の広がりに、眩暈めまいを覚えた。

これまでは、自分の目が届き、手が届く範囲だけが彼の世界だった。だが、これからは。

リリーが歩む道の、数キロ先にある小石の揺らぎさえも、自分の指先のように把握できる。

不浄な存在が彼女の視界に入る前に、はるか遠方で静かに、跡形もなく消し去ることさえ可能になるのだ。


「……シンさん。それは、執事という範疇を、少しばかり逸脱している気がしますが」


「今更何を言ってるんだい。君は前世で、大切な物のために自分の命を捨てた。今度は生きて守るための『道具』を、私が少しばかり整えてあげただけだよ」


シンは満足げに微笑むと、机の上の材料へと視線を戻した。


「さて、理屈はここまでだね。頭では分かっても、実際に神気を『魂』として定着させるには、ちょっとしたコツがいるんだ。……最初の『核』を完成させちゃおうか」


アルフレッドは、迷うことなく右手を差し出した。

その指先には、すでに主を守るための、熱い決意が魔力となって宿っている。


「……お願いします、シンさん。リリーのために、完璧な守護者を創り上げたいんです」


「いい返事だね。……じゃあ、至高の十二体を創り始めるとしようか」


深夜の静寂の中、二人の魔力が交わり、未知の術式が空中に火花を散らし始めた。

一人の執事が神の力を借りて、主のために奇跡を形にする。

東の空が白む頃には、この世のどこにも存在しない、最強の「十二守護者」の第一歩が踏み出されようとしていた。

第12話、お読みいただきありがとうございました!

「心(核)」「属性」「無限の領域」……。

これまでの魔法の常識を塗り替える圧倒的なスペック。これこそが、アルフレッドがリリアーヌ様を守るための最強の武器となります。

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