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第3話

 リラが自室に入って調べ始め、真太とイヅはちょっと手持無沙汰で、欠伸でもしそうになっていると、リラの弟ケインとアンリが話しかけてきた。

「真太って翔の生まれ変わりなんだってね。噂によると。会う迄ちょっと信じられなかったけど」

「え、ケインは信じられるの、僕は会ってもちょっと信じられないけど。じゃあ、真太はあの奥義とか覚えて居る訳?」

 思い出した真太。アンリは急所をついてくる奴だった。

「えーと、どうしてその話題を?」

 アンリは、

「パパや熊蔵爺さんが、紅軍団の長が居なくて困っているんだ。翔が死んじまって僕らの才能はどうなのかって、熊蔵爺さんが言い出したんだ。パパが無理だというのに、期待されるから、実際能力の無さを見せに爺さんち迄行ったんだよ。爺さんすっかりしょげちゃった。そしたらパパが真太の噂を言い始めて、翔の生まれ変わりの真太の話を聞いて、爺さんは期待し始めたよ。まだ能力あるんだったら、真太が紅軍団の長、頼まれるよ。きっと」

 真太は、しまったと思った。ぐうたらして体はなまっている。熊蔵爺さんに能力のチェックなんかされたくはない。

「俺って、魂が翔なのであって、身体能力が同じって訳じゃあないからね」

 と、ごまかそうとしたが、イヅが、

「あれ、前には御神刀で魔物やっつけていただろ」

 と言い出した。しっと遮ろうとしたが無理だった真太。『忘れちまった感じなのに』とテレパシーで伝え、『ごめん』と返されたが、

「へえ、良かった」

「イヅが龍神界の長になるんだったら、真太は役は空いているんだから、紅軍団の長で良いだろ。熊蔵爺さんが喜ぶよ」

 ケインとアンリがそう言って騒ぎ出すので、窮地に立たされる真太。仕方なく、

「それが、前世の記憶って育つにつれ忘れて行くらしくて・・・」

 と、白状するしかない真太である。

 しかしアンリは納得してくれない。

「きっと暇で使わないからだろ。熊蔵爺さんと稽古したら、思い出すんと違う?」

 ケインも、

「きっとそうだよ、熊蔵爺さんに連絡しよう。真太、爺さんが出たら現状を言って、稽古の手筈の話をしてね」

 真太は前世の記憶の、稽古のつらかったとこ等を思い出す。

「やめてよう」

 しかし、ケインはさっさと熊蔵さんに連絡し始めた。

「きっと喜ぶよ。これで爺さん元気出すよ、きっと」

 そうはさせるものかと、真太がケインのスマホを取り上げて連絡をさせず、まだ決心できないと渋っていると、イヅにまで『奥義思い出した方が良いんじゃない?これから使う事があるかもしれないし』と言われてしまった。


 そうこうしていると、リラが、

「あんたらちょっと来て」

 調べている間は、機密事項があるからと、自室に籠っていたが、どうやら見つけたらしい。イヅがリラのパソコンを覗くと、

「わっ、ここだよ、間違いない。この研究所で不味いことやって居るよ。リラさんありがとう。真太、ここ早く破壊しないと」

「そうだね、ありがとうリラ。奴らの住所も調べてくれたんだね。僕らで何とかしなきゃ」

 そして、ふと思った真太。

「ところで、リラはこの事は見て見ぬ振りって言うか、事件になったら、何も知らなかったけど・・・って無関係の立場でいられるんだよね。調べてもらった後で、なんだけど」

「警察組織に属するあたしとしては事件前にやらかす件は、そうするしかないけど。でもさっきから向こうでアンタラ話していたけど、何だか無関係じゃない関係を築いていたんじゃないの」

 ケインとアンリは、はっとする。

「そういや僕ら、親類だよね。真太、その件、真太がやったんだと、ばれたら不味いよ」

「わかってら。イヅだって、面が割れたらどっち道不味いさ。俺は少しくらいなら見かけを変えられるけど、イヅは?」

「僕はそう言うのは無理。覆面しとく」

 もう帰るべきだと思った真太は、

「後の計画は僕らでするよ。リラ、どうもありがとう。具体案は、聞かないほうがいいよね。今日の所は帰ろうかな。それと、熊蔵爺さんとの稽古は、パパと相談するよ。思い出したけど、パパに聞いてみないと」

 ケインやアンリも、

「そーだね」

 と、納得してくれた。


 リラたちの家を後にした真太とイヅ。

 真太はせっかくここまで来たのだから、研究所や自宅とかを様子見というか下見するべきではと思った。

「イヅ、せっかくだから様子見だけ、しておこうか」

「そうだよね。実際の様子を見ておこうよ」

 何の計画もなく敵地視察である。お子様感あふれる風体の2龍が、見咎められる可能性は無いのだろうか。いや、ほぼ有ると思ったほうがいいだろう。今、二人は龍神界に居るとは言え、相手の能力がはっきりしていないのだから、認識されないとは言い切れない筈である。真太、ぼんくら感半端ないと言えるし、イヅも似たり寄ったりである。

 件の研究所の真上までのこのこやって来た人型の二人。用心に越したことは無いと、かなり上から、しげしげと見てはいたが、見ているだけでは何の変哲もない研究所のようである。

「イヅ、ここで間違いないんだろうな。ところで、どうしてここだと分かったんだ?」

 一応訊いてみる真太、

「窓からのぞいたら、イダパパの透視イメージと同じ奴が居たんだ」

「窓からのぞいたって?」

「透視でね。さっきリラさんとこのパソコンを通して見たんだ」

「イヅ、最近透視能力が強くなったのかな。こんなに大きな研究所なのに、よく窓から丁度、見れたよね」

 感心したように言ったつもりの真太だが、イヅはしっかり疑っている雰囲気を感じた。

「確かに見えたんだから」

「どこの窓だよ」

 イヅは研究所をぐるりと回り、

「あの窓だよ」

 と端にある最上階の窓を指さした。すると研究所からけたたましいサイレンが鳴り出し、同時に真太達に向って、何か分からないがスピードが半端なく早いビームっぽいものを撃って来た。普通のよりかなり大型で強力な仕様とでも言うのだろうか。龍でも撃ち落としそうな感じと言える。

「うわあっ、見つかった」

 あわててよけるイヅ。先にイヅを標的にしたが、真太も居場所が解っている様で、何ヶ所からも、二龍を確実に狙ってくる。

 真太とイヅは避けるのに必死で、射程距離から出ることが出来ていなかった。真太は自分らは龍神界に居るのに、どうして人間界から見えたのか、そして、どうしてビームが界を越えてこっち迄飛んでくるのか分からず、混乱を極めてしまった。龍神の姿になって火を噴きたいところだが、大きくなれば当たりやすくなるとも言える。そこで、

「イヅ、お前そのままで火噴けるだろ、反撃しろよ」

「とてもそんな余裕はないよ」

「ちっ、肝心な時は出来なくなるもんな」

 ビームを避けながら真太が愚痴ると、

「ふえーん、酷いや」

 こんな非常時に泣き出しそうなイヅ、

「くそう、仕方ない」

 真太は何発か当たる覚悟で、龍神に変身すると同時に、一か八か攻撃して来る辺りに火を噴いた。

 しかし、どうした事か当たっていない。

「バリアがある」

 そう言ってイヅは、真太が火を噴いた隙に、余裕が出来たのか、自分の高温の青い火を噴いた。

 高温の光線はバリアを溶かしたのか、その後、もう一度噴いた真太の炎で、研究所内が火事になった様で、攻撃は途絶えた。

 その隙に、真太とイヅは必死で逃げ出した。この後何が起こるか分からないと思ったのだが、勘は当たっていて、研究所の別の場所から、わらわらと飛んでくるものがいた。

「何だよ、あれ」

 イヅは半泣きだが、真太は覚えがあった。小さい頃アボパパがやられた、空中を飛ぶ魔物だ。

「畜生、人間だけじゃないじゃないか」

 迎え撃つつもりで火を噴くが、生憎さっき必死で避けたり、力いっぱい火を噴いたため、体力不足でちょろちょろとしか炎は出て来ない。

 真太は絶望感があふれてくる。絶体絶命か!となった所で、イダパパ登場である。いつになく厳しい顔だ

「あ、パパだ」

 途端に元気が出るイヅ、

「イダさん、後は任せる~~」

 真太はほっとして、逃げに体力をふりしぼり、とりあえずリラの家に戻る事にした。すると、イヅが付いて来るのに気が付いた。パパが助けに来たんだからだからそっちに居れば良いものを、

「何で付いて来るんだ、イヅ」

「気が付かないのか真太、イダパパの怒りの形相を。当分近寄れない。真太んちに居させてよ」

「ええっ、お前、勝手に行動していたのか」

 真太は何となくアバ達は了承済みと思っていたが。第一、アバはこの星の出来事はすべて承知している筈。真太は、疑問が湧いたのだが体力が切れつつあって、イヅの相手も出来ず、黙ってリラの家に御厄介になりに戻った。





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