第15話
真太はイヅから聞いてアボパパの居所が分かっていたので、瞬間移動で研究所のとある場所に行ってみた。研究所内は、死体の山になっていた。しかしパパが御神刀を手にして倒れている場所は、どうやら研究所長室らしかったが、そこには倒れているアボ以外は、誰もいなかった。
『パパしっかりしてよ。ママとの約束、破らないでね』
『真太、その話題はよせ。ただでさえ気分が悪いのに、俺を責め殺す気か。あー、のこのこどうしてやって来たかな。シンに頼んでいたのに』
「もう片付いて俺が来ても危険は無さそうだったよ。皆はシンが神の使いだって思って、シンが説明した事信じているよ」
「あー、愚か者共。信じているだとー、シンで納得するんだったら、全部奴に丸投げしてやればよかった」
「そうも行かないんじゃないかな。日の国の事件じゃ無いだろ。ほら、パパ薬だ」
「あほう、俺はまだ生きているだろうがっ」
「え、どういう事」
「考えたんだが、その烈の居る島の薬は、死んだ霊獣、怨霊龍だな。そいつが毒で霊魂が傷ついた時に効く薬だ」
「そう言えばそんな事烈が言っていたっけ」
「そうだろうな、だが、もしかしたらそれを使う事があるかもしれん。無くさず持っていろよ」
「パパの言い方は、死に目の遺言を言っているように聞こえるけど、まだ生きるつもりって事で良いんだよね」
「当たり前だ。香奈ママに叱られそうで、死にきれないんだ。今の状態は棺桶から片足出している感じだな」
「蓋が閉まらないように?無駄口言っているくらいだから、半身入っているってとこだろ」
「あー、もうこっちは良いから、イヅの手伝いでもしろ。俺はもう少し転がって居たい」
「えーと、そうだった。ところで本物の御神刀は無いの」
「隠しておいたが、お前が持つか?最近抜かりのない事を言うようになったな」
そう言って、アボパパは何処からか御神刀を出してきた。御神刀が飛んで来たので、それを持って真太は抜かりなくイヅの所へ行った。
この事件、首謀者が居ないはずはない。
イヅの所へ行ってみると、イヅは今到着したばかりで、イダパパを見ながら涙に暮れていた。
「イヅ、残念だったね。アボパパがシンに丸投げしておけばよかったって言っていたけど、研究者は日の国の人間じゃないし」
「うん、シンが来て皆に説明してくれただけでも良かったよ。全く、大人の龍なのに僕や真太と似たような事しかしないんだから。仕方ないよ」
イヅは、手厳しい意見を言った。
「なるほど、この国のトップにでも状況を言えば良かったんだろうな。でも、イヅは分かっているかどうか知らないけど、大統領とアバとは何と言うか、レディ・ナイラを巡って気まずい関係と言うかな。そういう事情だからね。本龍のアバは仕方ないとしても、イヅとしては、イダパパは死に損って思えるかも。残念だったね。じゃあ、次はイヅがトップに立って、筋の通った龍神界にしたら?」
その言いように、イヅは真太をじろっと見て、
「お前もどさくさに紛れて、自分の都合のいい事、言うようになったよな」
大変なお怒りと分かった真太、慌てて、
「違う、違う、誤解するなよ。次のトップが誰になるにしても、龍神界の重鎮が認めないとね」
「皆、真太がふさわしいって言っているらしいよ。この前言われなかった?」
「そうだったかな。でもすぐバカに任せられないって分かるよ」
「そうなると、そこそこ、馬鹿じゃないのはアビだろうね」
「そうかもね」
「今回だって、レディ・ナイラに止められて、助太刀とかしなかったね。真太みたいにぐるぐる巻きにされなくて、自由に動き回れていたけどね」
「なるほど。それは利口者と言えるな。アビで決まりじゃないかな」
「そういう事で、僕たちは今までどおりの付き合いでお願いします」
「何だよ、やけに改まるな。じゃ、さっきの事は水に流して、無かった事にしような」
真太は先ほどの自分の失言に我ながらひやっとしたが、何とか収まってほっとしたのだった。
それにしても、イヅの言う通り、アバはどうして結果的に自殺行為の様な行動に出たのだろうか。
そして、首謀者は何処に居るのだろうか。
真太はアバとイダパパの遺体を運んだあと、イヅと別れて次はアボパパを家に連れ帰る事にした。
近くまで来て、パパをそっと地面に降ろすと、家の玄関に向かった。
「おや、今日は玄関から入らせてもらうか」
「ちょっと、居間の様子が知りたいんだ」
「ふふ、ママと千佳由佳しかいないぞ。聞いたなら教えてやったのに」
真太達が玄関を開ける前に皆は家から飛び出て来て、
「パパお帰りなさい」「生きてて良かった」「もう危ない事は止めてよ」
大騒ぎとなって、
「おいおい、近所の目がある。中へ入ろう」
パパは焦って辺りを見回した。
「騒がしい家って評判はきっちりあるけどね」




