第1話
真太18歳(実の所は3歳児だが見かけは18歳)、高校生は無理だったが、何とか翼たちに頼って卒業。皆は大学に進学したが、真太は無理なので、就職も無理なので・・・家でゴロゴロしている。4月の中旬の事である。
「あー退屈。千佳由佳が帰ってくるのは最近夕方だし。昼寝も飽きたし。どうするかな、今から」
真太は叫んだ。半月あまり、真太は家にひとりで過ごすのにも限界を感じていた。
パパはアマズンにお出かけ。ママは趣味の、デパート勤めを辞めていない。
ママが趣味を辞めないのは、何か面白い事が始終あるらしいからなのだが、真太はデパートのバイトにも雇ってもらえなかった。一応応募があったので履歴書は送った。だが、どうやら履歴書にミスがあったらしい。ママは原因を知っているようだが「真太が来たら騒動の元凶になるわね。落ちて良かった。あたしもまだ辞めたくないし」とか言っていた。
「俺もどっかに行きたいな。用が無いけど」
呟いてふて腐れているとそこへ、アマズンに居る次期龍神界のボス候補のイヅがやって来た。イヅは真太よりもボスには不向きな性格に見えていたが、人型のまま口から火を噴くという才能の開花により(それも最強の光線的火を、である)、アバの後継者候補、最有力者になっている。
真太は最初、イヅが後継者になるかもと喜んでいたのだが、最近は退屈なあまり、自分がなっても良かったかな・・・等と考えたりしていた。だが、実際の所、パパやママは内心無理だと思っている。と言うのも、何だか最近の真太は翔の時の記憶というか、能力を忘れかけている感じだからである。
「真太、久しぶり。今、誰も居ないの」
今ではイヅも成長して、真太よりも一回り体格が良い。アマズンの龍神達は人型の時も、恰幅が良い血筋のようだ。日の国の龍神とは種類が違う。真太は日の国とアマズンの龍神のハーフとも言える血筋なので、背は高いがひょろりとしていた。そうは言っても人型の状態の事で、龍に変わればそれなりのイヅと変わりない大きさである。だがまだ、アバやイダの様に大人では無いので、彼等に比べればそれほど大きくはない。
「うん、一人で退屈だったんだ。なんか用?最近あまり来なかったな。用があるから来たんだろ」
「そうなんだよ。誰も居なくて良かった。千佳ちゃん達が帰るまでに要件を言っておかなくちゃ」
「あいつら最近帰りが遅いから、そんなに慌てなくても良いぞ」
「そうなの、でも話は長いよ。言っておくけど」
「長話か。かいつまんで言えよ。退屈になるし」
「あのねぇ、随分怠惰な日々のようだけど、世間はそれどころじゃないよ。昨日、アバとパパが僕に聞こえないように話しているつもりだったけど、僕は大概の事は分かるんだ」
「なにか、あったの。不味い事とか」
「うん、アバの話によると、最近USBBに生まれた人間が、魂が悪魔に限りなく近いんだって。まだ子供だけど、大きくなれば世間に大きな災いをもたらすだろうし、死んでからは魔王になる魂なんだって。だけど人間だから、龍神達は手出しができないそうなんだ。でもそいつは、まだ子供なのに両親は支配するし、子分になる人間も居て、悪い事をすでに始めているんだ。両親は大学の生物学の教授で、すごく優秀な頭なんだけど、その子に命令されて、父親はなんか妙な生き物を造っているし、母親は植物のDNAを変化させて人間が食べるものを改造しようとしている。毒になるんじゃないかな。分からないけど」
「なんてこった。止めなきゃ不味いぞ」
「だよね。でもパパやアバは、人間をどうこうする事は許されてないんだよ、退治するのは魔物とか、地獄からやってきた奴しかやっつけてはならない掟なんだって」
「そうだってね。なんかシン達もそうだって言っていたな」
「だから、やっつけるのは僕や真太みたいなハーフと違うかな」
「そうとも言えるけど、前にアバは言っていたけど、俺は死んだら大神様の支配する天国の方に行くとか言う話だったよ。つまり龍神ってことじゃないか」
「ふうん、でも、僕が今日来たのは真太をさそって、その人間っぽいゆくゆくは悪魔になるやつを、大人になる前にやっつけようと思ったんだけど。真太は出来ない訳?」
「そうだな、俺等がやらなきゃ、どうしようもない感じだな。多分俺らはまだ龍としても多分未成年なんだから、罪は軽いかもな。それに退屈だったし」
「じゃあ、僕とやっつけに行ってくれるんだね」
「うん、いいよ。多分未成年だからね。俺らは」
「じゃ、行こう」
「今から?」
「早くしないと、変な動物や、毒の食べ物が出来上がっちゃうよ」
「そうだね。取り敢えずその研究を止めに行こうか」
と言う訳で、急遽話がまとまった二人、というか二龍はUSBBに出発した。
大丈夫なのかな。