56.イカれた店員に鉄槌を
珍しくこのお店にはデシタルテレビが置いてあり、ニュースが流れている。
そういえば、ニュースを全く確認してなかったな。
『先日起きた京都大量殺害について、速報がありあり!』
テレビでは2日前の京都で起きた事件について、話していた。
『京都防衛隊の情報局の人が事件があったその日から寝ないでずっと調べてたらしいんだよ』
『それはすごい!!』
『どうなったと思う』
『えー? わかんないー』
『実は昨日何者かに殺されたんだよ』
『怖ーい、情報封じかな? でも途中まで調べた情報とかは残ってるんでしょ?』
『それが途中経過時に伝えられた情報以外は、跡形も残ってなかったんだ。壊されていたとも言うかも』
『嘘でしょ』
『残ってる情報は忍者と戦った存在があった。しかし、監視カメラとかには姿は写って無かったんだ。写っていたのは、忍者が吹き飛ぶ姿だけだ』
『えー? よく分かんない』
『でも、どうやら、肉眼ならその姿が見えたらしく、青い髪の少女だったらしい』
『少女だったの? それはビックリだね。その子を見つけたら、何か分かりそうだー』
その後は別の話題にはいり、同じような空気感でダラダラと話していると、一旦話を中断したあとに戻ってきた。
『すみません。先程間違った情報をお伝えしました。忍者を撃退した人は、青い髪や少女という情報間違っていました。まだ、姿については情報はないとのことです』
「いやー絶対本当の事だろ」
「そもそも、京都とかお金持ちが行くとこだろ、俺達には関係ないぜ」
他の席の連中がガヤガヤ言っている。
そんな中知らないやつが俺の隣に座ってきた。
「なぁ、君たちさぁ、ちょっと前に京都にいたりしなかったか?」
「急に来て……なんの話だ」
「ほら、君の連れ青い髪に少女じゃん」
「知らないのか、あの事件が起きて以降、京都は出入り禁止状態だぞ」
「それは、確かに……どうなんだ、お嬢ちゃん」
「え!? 京都……? 最近は行ってないかな……」
リーアは両手を顔付近まで上げて、横に振って、否定のジェスチャーをしている。
「そっか……まぁ、それはいいんだけど……お前達はお金持ちだろ? なんでこんな安い喫茶店なんかにいるんだ?」
「そもそも、なんで、お金持ちだと思ったんだ」
「知ってるぞー、でっかい青いUフォースの車で近くに来てたでしょ」
あの時見られていのか、確かにあれを見られていたならお金持ちだと思われても仕方ないな。
「元お金持ちと言ったところだな。俺は元プロット4で有名な会社にいたけど、除名されたんだよ。そして前にいるやつは没落貴族だ。没落貴族でも貴族だからな。最後はちゃんとした車で送ってくれたということだ」
「……」
「なるほど……没落貴族か、私は善良な平民だから、貴族について全くわからないね」
リーアはパタパタ服を触り初めて、ポケットから何かを出した。縦55mm横91mmの紙だ。
「え、えーと、その私達近くで新しく事務所を作るの、名刺どうぞ……」
名刺? まだ事務所も作ってないのに、名刺なんて作ってたのか? 名前すら決まってなくないか?
「事務所……」
男がリーアから名刺を受け取った。
「松永事務所かぁ……」
松永事務所……?
「まだ、承認もされてないんだけど、作っちゃいました」
「へー、まぁ、受け取っておくかな」
男は立ち上がると、「それじゃあ」といいながら、そのまま去って行った。
「リーア……松永事務所ってどういう事だ?」
「決めたの私じゃないよ、えーと、アズだっけ? 名刺をポケットに入れてた事を思い出したんだよね」
「あいつか、それは後でいいけど、ご飯来るの遅くないか?」
「そうだよね。私もお腹ペコペコだよ」
そんな事を言っていると、両手にトレー持って、俺達の方に店員がきた。
「先程はすまねぇ。少々取り乱してしまったようだ。おまけに、デザートを追加しておいたぜ」
「それぐらいしてもらわないとな」
そして、店員は料理の乗ったトレーを置いた。と見せかけて、俺に向かって投げてきやがった。
「はぁぁぁぁ!?」
飛んでくるトレーと料理を避けるために横に急いで回避する。
「オレはもう、今日クビになっても良い。もう一度殴られせろや」
店員はリーアに向かって殴る構えに入った。
リーアは手を上げて、頭の方を触った。
「その可愛い顔が、泣き叫ぶ顔が見てぇぇ、無理やり色んな事をしてぇぇ」
くそ、料理にかかりたくなくて、想定以上に大きく回避してしまった。ここからだと間に合わない。
「あれ? いねぇ」
店員の殴りは空振りで終わった。店員の目の前にはリーアはいなかった。
リーア、いや、アズは男と座席の間をヌルッと移動して、そのまま店員の背後に移動していた。
ロングヘアーがふわりと揺れる。
「後ろよ。変質者さん」
アズは左足を地につけて、ロングブーツを履いた右足を一直線に伸ばして、鋭く前蹴りを突き出した。
「ーーうぉっ、うぁぁぁぁぁ」
店員は全く反応する事ができなく、背中にもろに食らった。そのまま前のガラスに激突し、バリンッという音と共に、ガラスが割れて、外に飛んでいた。
アズは前蹴りをした際に乱れた髪を整えながら、歩き出して、店員が飛んで行った方に向かった。
俺も追いかけると、その先では、アズが倒れている店員の頭をロングブーツでグリグリと体重をかけて、踏んでいた。
「どう? 殴ろうとしていた、一見か弱そうな女に踏み潰されてる気持ちは?」
「わ、悪くないです。」
その発言を聞いたアズは、動きを一旦止めて、さっき居たお店の方に向かって、店員を思いっきり蹴り上げた。そのまま店員は飛ばされながら、店に戻って行った。
「どうやら、私の魅力に頭がおかしくなったったみたいね」
アズは腕組みしながら、お店の方を見た。
「どうする……お店に戻るのか?」
「もちろん戻るわ。無料で沢山食べさせてくれないと気が済まないわ」
「それも、そうだな」
その後無事に、好きなだけ食べまくり、変質者のお陰で、お金のない中、無料で食べる事が出来た。
これはひとつの策になるかもしれない。リーアの魅力でおかしくなった暴徒達に暴れてもらって、無料で食べる。これが、俺達の生きる道だ。
「何言ってるの……」
「あれ、声に出てたか」




