53.あの……どれが演技だったんですか?
2階の大きな扉以外の部屋を確認してみたが、どれも空っぽだった。部屋の中は思ったよりもホコリがたかっていなく、空気が良さそうだ。
「この家中古だよな。外見で見た時は、ボロく見えたいけど、思ったよりも綺麗だよな」
「既に清掃業者に入って貰ったわ」
「入って貰った? じゃあその前はものとか散らかってたのか?」
「そうなるわね。ここは割と最近まで使用されてて、そのまま持ち主が帰ってこないまま放置されていた物件なのよ」
清掃業者に入って貰ったということは、アズが手配したということか。
まだ、買ってないのに、動きが早いな。
「メンバー1人1人部屋が用意されているということで合ってるか?」
「どちらかというと、チームごとじゃないかしら、ここはあくまで事務所であって、家じゃないわ」
「チーム? 将来的に人数を多くする予定なのか」
「あくまで、部屋を使うとしたらの話をしただけよ」
実はそもそも事務所を設立する目的が俺には分かっていなかった。流れでついて行っているが、とりあえず、生活するためのお金を稼ぐ為だとは思っている。
エレベーターを見つけたので、ボタンを押してみた。
「ボタン式なんだな」
中は割と広く、バイクが3台くらい並べる事ができる広さがある。
階数は2階、2.5階、3階があった。
2.5階のボタンは細長い。なんだか、珍しい。
「ここに住めるんじゃないかと思ったが、お風呂とかシャワーとかないんだな」
「この階にあったと思うわよ」
「あるのか、それなら家賃節約の為に、ここで住めば良くないか?」
「良くないわよ。仕事とプライベートは分けるべきよ」
アズと暮らすことが、俺にとってプライベートなのか、よく分からない。
「2階は思ったよりも何も無いな」
アズが扉に向かって指を指した。
「あの先になんかあるのか?」
「あの扉を開けた先は、外廊下なってるの」
「外廊下もあるんだな」
とりあえず行ってみることにする。
扉を開けると、確かに通路がある。
前を見ると、木が並んでおり、赤と黄土色の葉っぱが交互に並んでおり、秋を感じさせる。
下をを覗いてみると、芝生が広がっており、芝生の上には枯葉が散らばっている。
どうやら、木から前はこの事務所の敷地みたいだ。
右の方には街並みが広がっている。反対側はそのまま通路が続いていた。
通路を進んでら角を曲がると、階段があった。
1階に行けるみたいだ。
そして、アズが見せたい物が分かった。
「裏手に倉庫があるのか」
「倉庫ではないわよ。工房よ」
工房と聞くと、確かにそうかもしれない。
窓はあるが、俺達からだと中が見えないようになっており、割と最新の建物の構造をしている。
「しかし工房か……。なんのだ?」
「武器とか装備を調整とか必要でしょ? 貴方の元所属していた会社には無かったのかしら」
「もちろんあったが、技師でも雇うつもりなのか」
「雇はしないわ。でも心配はいらないわ」
「……?」
意味がわからないが、確かに今後技師がいないと、装備のメンテナンスができない。死活問題ではある。
とりあえず2階に戻ってきた。残るは倉庫と屋上くらいだろうか。
「しかし、行先変更されたのによく、こんないい場所を見つけられたな」
明らかにありえないだろ。明らかに事前に調べて、場所を決めたようにしか見えない。この町に来てから、まだ2日しか経ってないから、そんなに時間があったようには見えなかった。
「もしもの時のために、拠点にできそうな物件は事前に調べていたのよ」
俺が頭を悩ませていると、アズが2つ折りのされた紙を渡してきた。
「私が物件にできそうな場所をまとめたものよ」
だけどな。
いくら、物件を事前に調べていたとはいえ、何もかもが早すぎると思うんだよな。
まるで、事前に行先が変わっている事を知っていたかのようにしか、感じられない。
だからと言って、昨日予定通りの家じゃなかったことに、アズが驚いた時の表情を思い出すと、あれが演技とは思えない。
紙を開いてみると、そこには地図が書いてあるわけでも、物件名が箇条書きで書いてある訳でもなかった。
『今支配者が監視、盗聴されている可能性があるから、文章で把握するようにして。
私は事前に行先がここになると知っていました。
マンションの方は最初は盗聴されていましたが、現在は対策をしたので、問題ありません。この建物はまだ盗聴の対策をされていない為、聞かれている可能性があります。この建物は、最近支配者に潰されたある組織の隠れ家です。ここには特殊な工房があり、それが私の目的です。
地名と物件名を書いた紙を見せた体で話しかけるので、アドリブで話を合わせてちょうだい』
な、なんだこれ。
というか、アドリブだと……。
俺は今まで嘘ついたり、演技をしたことなんてないんだが、
「あら、止まってどうしたの?」
「いや……お前の書く字が割と可愛いなと思ったんだ」
「……」
やばい、意味が分からない事を言ってしまった。
「何を言ってるの……? 嘘をつくならもっとマシな事を言ったらどうかしら、それで……見てもよく分からなかったという事でいいかしら」
「そういう訳ではないんだが……結局色々と物件を調べて候補を決めた見たいだが、今回の物件はどうなんだ?」
「まぁ、割といいんじゃないかしら。広くて、工房もあって、悪くはないわ」
「そうか……」
ここで話を止めたら不自然だ。何か話題はないだろうか?




