表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

はじめに

 よく考えてみれば、さようならを言ってない。最後に聞いた彼女の言葉はなんだったかと思えば、それは「空だ」というよくわからない言葉だったりする。

なんだ。「また今度」とでも別れていれば、また会う希望はあったかもしれないのに。せめてまた会えることを信じることくらいはできたかもしれないのに。

 では「空だ」とはなんだ。どんな状況だ。覚えていない。だから想像してみるとしよう。たぶん、橋の上だ。流れる川照る太陽。人通りのない道。けだるい昼下がり。彼女は欄干から身を乗り出すように、空を眺める。俺はその隣にいる。そこで、彼女は「空だ」と言った。あるいは「青い空だ」とでも言ったのかも知れない。

 彼女らしい言葉だと思う。空には無限の広がりがあるからだ。彼女はそこを闊歩するのだろう。地上など、彼女には狭すぎる。いや、空だって狭いと、俺は思う。けれど空は果てが見えない。見えないものは可能性だ。可能性を信じて、彼女は歩く。どこまでも歩く。世界のすべてを知るまで、きっと彼女は歩いていく。

 どうか世界よ無限であれ。



 せめて、さよならくらいは言いたかった、と思う。だって、別れくらいはかっこつけたいじゃないか。「さよなら」と言って、きっちり境界を引いておけば、あるいはこんなへんてこな文章書くこともなかったかもしれない。思えば、この文章は俺なりのけじめなんだな。

 墓標の言葉。

 鎮魂歌(レクイエム)


 いや、彼女への祝福だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ