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マスター

食堂って、色んなお客さんがいるよね……




そんな話。(約1500字)


「店長ーっ!俺やったよーっ!」


ギルド併設の食堂に青年が一人、笑顔で駆け込んで来ました。

きらびやかな衣装の青年は黙って立っていれば誰もが見惚れる様相でしたが、それに似合わぬ人懐っこさで、床にモップをかけていたチョビ髭微マッチョ店長の手を握りました。他の場所を掃除していた店員たちも、青年の登場を喜び集まります。


「おうおう!帰ってくるのは明日じゃなかったのか!無事で良かったなぁ!」


店長も青年に向けて笑顔になりました。久しぶりに会った事が嬉しく、青年の肩を叩きます。少々強く叩いても、青年はもうよろめきません。店長は感慨深くなりました。


「へへ。実は昨日のうちに帰って来てたんだ。今は明日の凱旋式の準備してるんだけど、俺の時間が空いたからギルドの転移門を借りて来ちゃった」


へらりと笑う青年は、掃除中にごめんなさい、ちょっとしか居られないんだけどねと眉毛を下げます。


青年は駆け出しの頃、この食堂でよく無銭飲食を試みました。

しかしいつも店長に捕まり、ギルドでの依頼をいくつもやる羽目になり、結果実力をつけることができました。

そして今回、大きな討伐依頼のための長旅から帰って来たのでした。


ひょろひょろだった昔と同じ笑顔に店長は苦笑し、急ぎならさっさと言えと用件を促しました。


はーい!と青年はきらびやかな衣装とは似合わない年季の入った大きめのリュックを背中から下ろし、中から真紅の宝石が嵌まった青年の手のひらいっぱいの大きさのペンダントトップを取り出し、食堂テーブルの上に置きました。


店長も店員たちも目を見開きました。


そして次に青年が取り出したのは、持ち手に色とりどりの宝石が付いた黒刃の短剣。


ドラゴンの指の栓がしてある青い瓶。ちなみにその指先の長い爪からは、青い液体が滴りそうです。


両端がそれぞれに蛇の頭を(かたど)った蛇柄のロープ。


そして最後に、立派な角の全体が紫色の山羊の頭部を出しました。

青年は店長に笑顔で言いました。


「魔王城から持ってって良いって言われたヤツ!これで今までのツケの精算お願いします!」


「出来るかボケえええええっ!!」


「ぐばあっ!?」


店長の右ストレートが青年の顔面にめり込み、その勢いのまま青年は後方に吹っ飛びました。


「どれもこれも呪いの品じゃねぇかっ! 最後に出したヤツは魔王の首だろ!! 何で持って帰って来てんだコラぁッ!?」


派手な音をたてて壁にぶつかった青年は、ケロリと起き上がり、不思議そうに店長を見上げます。


「え~? だって値打ちがあるかと思って、」


「値打ちのジャンルが違うんだよっ! ツケの払いごときに一般飯屋に持ってくんじゃねぇよ!」


「いや、店長のおかげで俺ここまで強くなったし、そんじょそこらの物じゃお礼にならないかと思って、」


「そんじょそこらの物で良いんだよ! 魔王の首なんてどうすりゃいいんだよ!?」


「魔除けの壁掛けに、」


「魔の元締めだっつーの!? 逆に寄って来るだろうが!!」


「……あ、そっか」


「てめええええっ!? そこに直れぇぇえっ!」




こうして、「私を倒すことが出来たならば、この首だとて貴様にくれてやろう」と言ったらしい魔王との約束をしっかり守り、金目になりそうな物を手当たり次第に持って来た青年は、店長に正座で説教されました。


そして、青年を迎えに来たパーティーメンバーが真っ青になって全ての品を教会に持って行き、教会職員総出で呪いの浄化および厳重に厳重に厳重に保管される事になりました。


そして次の日。何事も無かったかのように賑やかに、予定通りの勇者様御一行の凱旋パレードを眺めながら、店長はぽつりと言いました。


「……天然は、直せなかったなぁ……」









おしまい。

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― 新着の感想 ―
[一言] 青年ヨ、こっちの世界には御霊信仰っていう、怨霊祀って結界とする術があってだな(ォィ
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