防具には夢が詰まってます【笑顔でいこう企画】
防具には職人の思いが……
そんな話。(約1800字)
銘尾 友朗さま主催、『笑顔でいこう企画』参加作品です。
女戦士と女魔法使いと思われる二人組が、防具屋の鎧コーナーにてたたずんでいます。
どうやら女戦士は少々脱力しているようですが、女魔法使いの方は展示してある鎧を楽し気に見ています。
「…………わりと、どこの防具屋でも思うんだけど……」
「な~に~?」
「女性用の鎧ってさ、胸の形、こんなにハッキリ必要?」
「可愛いじゃ~ん」
「まぁそういう時期もあったけど……、中堅になってくるとこのデザインが恥ずかしくなって来るのよね……」
「いいじゃ~ん。魔法使い用の防具なんて、色々防護魔法を掛けちゃうから最後には真っ黒よ~? 可愛い柄で作ってもらっても準備が終われば真っ黒~。デートも真っ黒~、婆になっても真っ黒~、ツマンナ~イ」
「職業病ね」
「その点、鎧なら色とりどりだし、男のと違って女らしいラインだし、あんたが鎧を脱ぐ時なんて、私すら色気を感じるよ~?」
「何それ、お礼を言いづらいわ。いや色が豊富なのはいいんだけど、サイズが微妙に合わないってことよ。合わないって事は調整しなきゃいけないでしょう? 防具屋でシャツ越しとはいえこの胸筋を何度もさらすのが恥ずかしいの。作業時間もかかるし。腰周りのは自分で調整効くからいいんだけどさ」
「あはは~、そういうところ女の子だよね~」
「女の子っていう歳を通り過ぎたけど?」
「睨まないでよ~。自分で言わなきゃすぐ老けちゃうも~ん」
「まあねぇ。……うん、次の店も行ってみようか。あの深いエンジ色は一応チェックね」
「もっと華やかな赤にすればいいのに~」
「隠れた時に見つかりやすいでしょ。そんなの嫌だわ」
「あ~そだね~。じゃあ行こ行こ~」
華やかに軽やかに店から出ていった女性たちを見送って、会計カウンターに座っていた若い男性店員が奥の作業場に声をかけました。
「親方~、今の女戦士の話、聞こえました? なるほどなぁと思ったんですけど、売りやすいように女性用鎧の形少し変えていきますか?」
「却下だ!!」
ドタドタと、作業場から親方と兄弟子たちが売り場にやって来ました。弟弟子である店員は休憩用のお茶を準備しながら、何故即答なのか聞いてみました。
まずは厳かに親方が答えてくれました。
「お前も魔物討伐に出た事があるなら思っただろう。女戦士のあの鎧のデザインは、男の夢だ!」
ドヤ顔でなかなかな事を言い切りました。
兄弟子①が続けます。
「そう!普段着ならば風でちょっとスカートがめくれても大騒ぎの女性が!鎧ならば当たり前のように肌を曝すのだ!うなじが!鎖骨が!肩が!二の腕に太もも!そして上手くいけばヘソまで見られる!」
煩悩を叫んだ兄弟子①。兄弟子②もどこか遠くを見ながら続きます。
「戦闘戦闘の殺伐とした討伐隊のオアシス!! 男だけのパーティーのむさ苦しさ!極限に達すると殺し合いになりそうになる!さっきの仲間が今は敵!そんな事が何度もあった……!」
命の危機までの戦闘経験はありませんが、殺伐とした雰囲気を感じた事がある店員は真剣に頷きました。
「だが。女がいればそれは回避できる」
親方の目がキラリとしました。
「そう!良いところを見せたい!そしてあわよくば傷ついた女戦士を背負いたい!その為に鍛えたと言ってもいい!」
兄弟子①が大変な事を言い切りました。
「そして何より戦闘中に揺れる胸!しなやかな足!なびく髪!いい匂い! 見えないと分かっていても絶対領域は男にやる気を起こさせる!」
兄弟子②も女子にドン引きされるだろう事を叫びました。
「……えーと、分かりますけどゲスいですね」
「「「 そのゲスさが男の戦闘能力を上げ、パーティーの帰還率を上げる!! 」」」
ピタリと揃った三人の言葉に、店員は雷を受けたような衝撃を感じました。
「!……なるほど!」
「女を守ろうとするのは男の性!朦朧とする中で胸の形が視界に入れば踏ん張れる!敵を倒せなくても女を安全な所へ逃がさねばと奮起できる!」
「それをやり過ぎてギルドからの戦力外通告を受けるほどの怪我をおったわけだが、まあ生きてなんぼだ。こうして仕事もできるし、その時の女戦士が奥さんになってくれたし、そういう事から、あの鎧は『男の夢』だ!」
それぞれに元女戦士の奥さんを持つ親方と兄弟子たちがしみじみと頷きました。
弟弟子である店員は感動すらしています。
「女性用の鎧にはそんな理由があったんですね……!確かに夢が詰まっています! ただのスケベ心かと思ってました!すみません!」
弟弟子の言葉に三人は鼻で笑い、とてもいい顔で言い切りました。
「「「 否定はしない! 」」」
おしまい。




