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お題【うめえよ】

「わたくし不器用なんですが」

 そう言って娘がかかげた箸の先にはらっきょが二つ並んで挟まれていた。それを見た父は一言。

「すげえよ」

「残念。パパそれちょっと違う」

「あれ?」

 父が傍らに置いてあった携帯を手に取ろうとするのを見て娘はそれを止める。

「すぐに検索しちゃダメだよ。自力で思い出さないと脳は老化しちゃうんだから……ってもう! らっきょ落ちちゃったよ!」

「ごめんごめん。えーと……上手だよ」

「さっきより離れてるっていうか、もう一回らっきょつまめてからお願い」

 するとキッチンの方からカレーの匂いと共に母の声。

「ちょっと! 遊んでいるなら手伝って。ご飯の量どのくらいー?」

「今行くー! ちゃんと自力で思い出してねっ」

「頑張るよ」

 パタパタとスリッパの音がリビングとキッチンとを何往復かした後、娘は父の顔を覗き込む。

「どお? 思い出した?」

「ハイハイ。そういうのはご飯の後でね」

 母の号令のもとディナーが始まる。カレーを一口食べた父は一言。

「美味しいよ……じゃないな」

 この「じゃないな」を母にしつこく怒られた父が正解を思い出すのはそれから15時間後のことだった。

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