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お題【天国の耳】
「次」
俺の番か。閻魔の前へと進む。
「権田邦夫、58歳、金貸し。欲にまみれ脂ぎった顔だ。だが近頃は多少枯れて燻し銀といった風情か。次に業績だが、若い頃は五人も死に追いやっておるな」
ああそうだ。地獄行きの覚悟はできている。
「だが母の死を境に改心し慈善団体に多額の寄付をしておる。薄っぺらい善行だが救われた者が多く居るのもまた事実。最後に情愛だが……ほう、かつて殺した男の妻に惚れておるな。しかし己の過去と年齢とを考え陰から見守るのみ。酸いも甘いも程よい想いじゃな。しかも死因はその女の一人息子の身代わりになっての交通事故死とな」
いまさら贖罪になどならないがな。
「いや良い食材じゃ」
閻魔が突如何かを振り下ろし俺はそれに挟まれた……これはパン?
「欲望は燻された分厚いベーコン、業績はレタス。そして情愛はトマト。久々の見事なBLTじゃ」
食われるのか? 覚悟していたつもりだったが恐怖に煽られ反射的に体が動いてパンの端から抜け出してしまった。次の瞬間、つかまっていたパンの耳ごと俺は闇の中へ落ちた。
「天国行きの最終確認となる魂の味見を拒むとは。耳は地獄の亡者への施しなのだがな」




