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第1話 動き始める物語の歯車

私が思うに、この世界は残酷だ。才能のある者が持たざる者を虐げる世界。搾取し、搾取されるこの世界で、“奇跡”が無ければ生きていくことなんて出来ない。 幸いなことに、私には人々が羨むような“奇跡”がある。 ――だから、なんだって話だ。平等を謳うこの世界の現実なんて、どうせ――

ピピピピピ、ピピピピピーー!

ガバッと起き上がることもなく、耳元で鳴り響く目覚まし時計を止めた。

四月上旬朝の陽光がカーテンの隙間から漏れ出ている。高校1年に上がり、ようやく生活に慣れてきた。


「星羅!!起きなさい!!八時よ」


下では母が怒鳴り声を挙げて叫んでいる。青い髪はぼさぼさになり酷い寝ぐせになっている。


「ふぁ~い…」


目が覚めたばかりでまだ脳に十分な酸素が行き渡ってない。生半可な返事をしてベットからゆっくりと起き上がる。ブルーサファイア色の目を擦ってようやく陽光の光が慣れてくる。まだ半分寝ボケながら階段を降りると、


「星羅、もう8時よ。早くご飯食べなさい、学校に遅れるわよ」


いつも通りの母の言葉を聞き流し頷く。そして机に置いてある食パンを咥えながら寝癖を直して、教科書を鞄に詰めて学校の準備をする。

比較的一般的な家庭だ。母は水の“奇跡”父は土の“奇跡”を。一つ違うところを挙げるなら兄が高校の頃を“奇跡”を使った部活――異能競技に取りつかれていた。


    ●


朝の8時前から蒸し暑く少し苦い顔をして家を出る。もう一年使った道もあって何一つ面白みもない。今日もどこかが“奇跡”を使って犯罪が起こっているのか街中にパトカーのサイレン音が鳴り響く。


「おはよう、星羅ちゃん」


教室に入るいつもこれだ。特に仲良くもないのに人に挨拶する。その理由を私は聞きたい。わざわざ関わりない人間と仲良くして何か得があるのだろうか。いつもと同じことを考えながら自席に座り、


「おはよ…」と返す。


「星羅ちゃん部活決めた?」

クラスメイトの何人かが寄って来てそう聞いた。


「いや…入るつもりはないけど」


「え?入らないの、星羅ちゃんのお兄さんって異能競技やってたでしょ?」


「うん、まぁ」そう返し話を終わらせる。


話し終わると同時に何でわざわざ喋りに来るのか私にはわからなかった。他人なのにー

学校で授業…6限が終わりみんな一斉に帰宅、もしくは部活に向かった。いつも通り私は一人で…気晴らしに駅前のカフェに寄って帰る事にした。


   ●


「だぁ~!!」


ピンク髪の少女が全力ダッシュで校門を抜ける。


「なんで今日に限って宿題を~」ピンク髪のアホ毛が風によってなびく。


宿題忘れで教師に怒られ更には家まで取って帰って持って来いと言われた。

踏んだり蹴ったりである。ただ仕方がいない。16歳になった現在…“奇跡”が開花していない。それだけでも批判対象、差別対象だ。


―奇跡の発現時期は人によって異なるが統計上18歳までに88%の確率で発現する。18歳を超えると奇跡が発現する可能はほぼゼロである。そして“奇跡”を開花出来なかなった者は異点として、迫害対象となっている―


宿題忘れだけで取りに帰させられる。


「ふぎゃ…なんで明日香ばっかり」こけて顔から地面にダイビングする。


その時、町の方それにそれもあまり近くない所で悲鳴が聞こえた。


「なんだろう」


16歳やはり好奇心には勝てない。抜け足差し足でゆっくりとその場に訪れ、その光景を

目にする。


――爆音とともに建物が燃え人々が逃げ惑う。――


「なに…これ…」


一人の男が触手を操り見境なく建物を、そして逃げ惑う人々を触手で攻撃している。血の匂いと炭の匂

いが辺りに充満する。目が鼻が痛い、今までに感じたことがないもの。


「に、にげな…」


明日香が来た道を戻ろうとした時、背後で鳴き声が聞こえる。小学校低学年ほどの男の子、膝を擦りむき血が流れている。恐らく避難する大人に押し倒されたのだろうか


「おやおや、ふふふ逃げ遅れたのか、親に見捨てられたのか。可哀想に」


触手男が卑劣な笑みを浮かべて近づいてくる。


「…っう」


明日香が振り向き一瞬助けようかと迷った。だけど相手は“奇跡”持ちで自分は異点。天と地程

の差がある。


『明日香大切なのは力じゃない、勇気ある行動だよ』


その瞬間明日香の中で何かが弾けた。考えるよりも、後事よりも、今するべき事を……


「だぁーーー!!」


ダッシュで少年に駆け寄り触手男の攻撃をかわす。


「大丈夫?」


「おやおや?ヒーローの登場か何かです…ふふふ、あなた異点ですね。わかりますよ理力が少なすぎ

る、」


「う、うるさい!!」


「まぁ、その根性だけは認めますけどね!!」


触手が鋭い凶器となって明日香の身体を穿とうとする、その刹那――。 明日香の体奥深く、眠っていた力が激しく弾けた。

『――“奇跡”【祭具詠唱】』

物語りの補足情報

概念→ 奇跡・・・ 身体や魂に刻まれた能力の証。世界の人間が奇跡に開花。

奇跡と言う言葉は平安時代に生み出された。ただ稀に奇跡を持たずにそのまま一生涯が終わる人間もいる。その様な人間を人々は異点と呼ぶ。

2. 概念→ 異点・・・ 人が生まれてからランダムな時期に与えられる奇跡を授から

なった者。この世界では迫害対象となっている。

(※)奇跡の発現時期は人によって異なるが統計上18歳までに88%の確率で発現する。18歳を超えると奇跡が発現する可能はほぼゼロである。

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