89.大なら二発、中なら十発、小なら——?
「《大炎球》なら二発、《火球》なら十発……ってところだな」
ジルが冷静な声で言う。
「アリスくんはすでに《大炎球》を一発撃ってるし、大剣の光剣化ももう二十分以上維持してます……その計算だと、魔力残量ギリギリですね……!」
焦りの表情を浮かべているのはリリィ。
「……ちなみに、そこそこ命中している《小火弾》換算では、あと何発くらいですかね?」
「そうだな、あの再生能力を考慮すると楽観的に見積もって……千二百発ってところかな」
「ケタ間違ってません!!?」
ジルの回答に悲壮な声を上げるのはエイリークだ。
「今更だけどさ、アリスの魔法って、結局のところ大・中・小の“火の玉”飛ばすだけなんだよね」
「え、ローズ先輩……ほんとに今更どうしたんですか」
「そんなことないよ、ローズ。アリスくんは治癒魔法も使えるし、《光弾》も《魔法盾》も使えるよ!」
相変わらず自由なローズの場違いな発言に、エイリークとリリィがツッコミを入れる。
「いや、まあ治癒魔法はともかくさ。《光弾》と《魔法盾》なんて、最低限の標準仕様じゃん」
「その『標準仕様』しか習得していない俺としては、すまんとしか言えないな」
「ジルさんは良いんだよ、最初からジルさんに魔法なんて期待してないからさ!」
「ローズ、普通に失礼だから、それ……」
ジルの苦笑にカラカラと屈託のない笑顔で答えるローズを、控えめに窘めるリリィ。
「僕も『標準仕様』しか使えないので、何とも言えないですけど……ローズ先輩、アリス先輩——じゃなくてアリス隊長に厳しくないですか」
「ん?何言ってんの、違うよ、エイリーク。あたしは、アリスはもっとできるヤツだって言いたいんだよ。なんたってウチら『奇跡の代』のナンバー2なんだからさ!」
「……自分で『奇跡の代』って言うの、やめてもらえませんかね」
エイリークの呆れた顔を見て、ジルは苦笑した。
そして、視線を盤上で踊る年下の上官に戻す。
(……あの再生力を差し引けば『小』は非現実的。かと言って『大』は最低でも十秒の詠唱が必要だ。あの聖霊からこの先それだけの猶予をもらえるとは思えんな。とすると『中』を十発だが……さて、まずはどうやって当てる?向こうには『風』があるぞ)




