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第四十三話 「爆誕、吸血姫メイド2」

本当に何となく思いついたので…投稿(思いつくけど、連続投稿は、頭が痛い。:本当にこの連投稿は偶然です。けど後悔はしていない)

今回の話は少々暗い過去のです。追記です。9/22.より黒灰病の発症条件に鉱山の近くだけではなく、魔力を多く含む土地柄で、無意識に取り込んだ魔力の暴走も重なって発症するように変更しました

俺が入っているお風呂場にレティスとイシュラが入ってくると云うハプニングもあったが、とりあえずは普通に風呂から上げることが出来た俺は取りあえず頭を切り替えるのと体を冷ます為にお風呂場を作った時からに常備してあるミニクーラー擬きから果物のジュースの瓶を取り出し、腰に手を当てながら瓶の中の半分程を一息に呷った。


「あ~、風呂上りの冷えたジュースは美味いなあ」


そう言いながら瓶から口を離しながら口元を拭った。そして一息つきと、再び瓶へと口を付けて一息にジュースを飲んでいく。だがその中で思い出したのは、上がる前に話したレティスとの会話だった。


(今日の夜、俺の部屋に来る、か。取りあえず今日はエル達に部屋に来ない様に伝えておかないとな…)


と、ここ最近俺の部屋に、厳密に言えばベットに潜り込むことが増えていたエル達(恐らく母さんが原因だと思う)に一言伝えておく必要があった。まあ下手に何も言わないで部屋に入って来られて誤解されるよりはいいだろうと思っているといつの間にかジュースは空になっていた。


「よし、それじゃあ取りあえず食堂にでも行くか」


ジュースの入っていた瓶をいつも入れておく籠の中に入れると俺は寝巻へと袖を通した、その時だった。ドア越しに声が聞こえてきたのは。


『あの、流石にやめた方が‥‥』


扉越しに最初に聞こえた来た声はリリィの声だった。そしてもう一人いるのか、俺が耳を澄ましていると次の声が聞こえた。というか何となくリリィが居る事で予想される人物といえば‥‥


『大丈夫よ。その為にイシュラちゃんを先に入れたんだから』


『イシュラさんに何やっているんですか!?』


扉の向こうでリリィが突っ込んだ。そして、俺はリリィと一緒にいるのが母さんだという事に気が付いた。いや何となくだが、こんな事を企みそうなのが母さんしかいなかったと言うべきか。

そもそも、エル達が俺の部屋に潜り込んで来るようになった原因は全て母さんにあるのだが、それでも俺が母さんを責めないのは母さんが俺達の事を心配しているというべきなのは分かった。(まあ恐らく七割方面白がってだろうが)

とはいえ、流石に今回のイシュラを俺が入っている風呂場に、それもレティスも巻き込んで入れて来るのは流石に面白がってやる範疇を超えていると俺は思っていた所だった。故に俺は下着だけは履いておいて、足音を立てずに扉の前に立つと扉を開ける。


「何やってるんだよ、母さ‥…ん‥‥‥」


扉を開きながら見えた光景は‥…体にバスタオルを巻きつけただけのリリィと母さんの姿だった。


「あ、義兄さん‥…きゃあああ!」


「あらあら」


バスタオルだけの姿にリリィは咄嗟に「ボディエンチャント」を全身に纏い全力のビンタを俺の頬へと直撃(うちこんで)で来た。俺は首を持っていかれる程の衝撃を感じながら、赤い顔をしたリリィと面白そうに俺を見ている母さんの顔を見たのを最後に意識が途切れた。



「あ~、ひでぇ目にあった。とはいえ、リリィも成長していたな…」


あの後、リリィと母さんが浴室に戻った辺りで意識が戻った俺は体が冷える前に脱衣所に戻り寝間着を身に着けるとそのまま部屋に戻るのではなく、台所に行って水差しとコップを持って部屋に戻り、書庫に行って時間潰しの本として何冊かを見繕って部屋へと戻ったのだった。


そして、一冊目の本を読み終え、流石にイシュラたちも風呂から上がったかなと椅子から立ち上がろうとしていた時だった。


コンコン


『シルバー、居る?』


俺はレティスが来たのかと思ったが、それはエルの声だった。流石に本をずっと読んでいるのもどうだろうと思ったので、俺はエルを部屋に招き入れることにした。


「ああ、大丈夫だぞ」


俺が返事を返すと扉が開き、エルが部屋の中に入ってきた。俺は読んでいた本を机の上に置いて部屋に入ってきたエルをベットに座る様に視線で促すと、エルも慣れた様にベットへと移動して腰を下ろした。


「何をしてたの?」


「ああ、ちょっとレティスから話があるって言われていたんだが、時間を聞き忘れていてな、暇つぶしに本を読んでいたんだ」


「邪魔をした?」


エルは何処か申し訳なさそうにベットから立ち上がろうとしたが俺は咄嗟に止めた。


「ああ、いや、寧ろ来てくれて助かったよ。何となく話し相手も欲しかったからな」


「そう、なら良かった」


俺がそう言うと安心したのか、エルはもう一度ベットへと腰を掛け直した。そしてベットに座り直したエルに俺は気になっていた事を尋ねることにした。


「そう言えば、エル。君はどうして吸血鬼の始祖、アルバに力を与えたんだ?」


エルはこの世界で最古といってもいい力を持った龍だ。そして人に力を与えて人ならざる存在へと変える程の力を持っていても何ら不思議はない。だがそれ故に何がエルを動かし、力を与えたのかが俺には気になったのだった。しかし俺が尋ねるとエルの雰囲気が暗くなった。


「大丈夫か?別に無理しなくても」


「大丈夫。シンには、教えておきたいから」


今までで見た事もない、エルに何処か儚いように俺は感じたが、大丈夫と言ってくるエルに俺は頷いた。

そして、エルは語り始めた。吸血鬼の始祖、その少年の物語を。


「彼は、不治の病を患っていた。」


「不治の、病?」


「そう、それはかなり昔の出来事だけど、ある時、【霊峰】の麓のある町である病が流行りだした。その病に罹った者達の肌は徐々に黒くなって行き、やがて全身が真っ黒になると灰のように崩れ去る病」


「それは、確か大昔に流行ったって言う【黒灰病】じゃないのか?」


書庫にある本の中の医療に関する本を俺は見た事があり、その中にエルの言ったその症状と同じ症状が記されていた。その病の名前が【黒灰病】

それは全身が徐々に燃え尽きた灰のように黒くなって行き、崩れて消える病気という事から黒灰病と名付けられた病気だった。そしてこの病気の厄介な点は初期症状が全くないという事だった。

だが、この病にはある共通点があった。それは近くに鉱山があり、そして魔力を多く含む土地柄という共通点だった。そして後に判明したのは鉱山の鉱物の中に含まれる魔力を暴走させるある成分が人体に入り込み、体内の細胞を破壊、同時に魔力を暴走させる事によって表面の肌の色が徐々に変化していき、全身が黒く染まる時は全身の細胞が破壊尽くされ、魔力も蝋燭が消える直前激しく燃え盛る様に、暴走、いや暴発する事で、限界を迎えた肉体は形を保つことが出来ずに灰のように崩壊するという恐ろしい病だった。


「うん、恐らく。それでも私は基本的に人間たちの営みに干渉するつもりは無かった。そうしている間にもその町では次々と同じような症状の人が増えて行き、やがてその町の周囲の町は交流を断った。恐らく拡大を防ぐ目的だったんだろうけど」


「それに関係なく、鉱山の近くにある町では次々と同じような症状が現れて行った、か」


言葉を引き継いだ俺の言葉にエルは頷いた。当時は今ほど魔法に関する知識も多くなく、奇跡の力として認識されていたのだろう。そして俺は理解した。如何にしてエルが少年にその力を与えたのかを。


「ある時、私は【霊峰】を登ってくる少年を見つけた。その少年の体の所々は黒くなっていた」


「【黒灰病】に罹っていたのか」


俺の言葉に答えず、エルは視線を窓の外で輝いている月を見た。


「その少年は必至な表情で、小さいながらも一歩ずつ山を登って行った。時に転びながら、それでも諦めずに、生きようとその瞳に決して消えない炎を灯して」


「そして、その少年はたどり着いた、か」


エルの言葉を引き継いだ俺を見るエルのその瞳は、何処か悲し気な光を宿しながら頷いた。


「その時は、もう見える範囲では真っ黒だった。それでも彼の眼は諦めていなかった。そして彼は眠りに就いていた私を見つけた」


そうだろうと、予想はしていたが、それはどれほどの覚悟と生きたいという強い思いが無ければ不可能だと俺は素直にその少年に畏敬の念を感じた。だが、先程のエルの悲し気な光からハッピーエンドとはいかなかったのだと何となく悟っていた。


「私を見つけた少年は、もう虫の息だった。それでも彼は残っている最後の力を込めて私に言った「助けて、まだ死にたくない」っと」


「私はその少年に尋ねた『何故、この山に来たのか』と。」


すると少年は荒い息を吐きながらもその問いに答えた。


『【霊峰】と呼ばれる不思議な力のある、この山に行けば、この病が治ると思ったからだ。』


そう語るエルの表情は何処か暗く、過去のその出来事を思い出しているようだった。それでもエルは話を続けた。


「私は、眠りに就きながらもここにたどり着くまでの彼の道筋を見ていた。その当時、私は眠りに就きながらも常に世界を見ていた。やがて現れる、ある時現れた男が私に言った、私と契約を結べる存在が現れるのを待って」


それの言葉に思い当たる人物を俺は一人しか知らない。その男こそ、俺の親父にして、エルに俺の存在を伝え、俺とエルが出会う原点となった存在、スサノヲ。


「何処か興味本位で見ていた少年の姿。そして生きようとする彼の姿に、私は興味を覚えた。そして「死にたくない」といった少年にこう尋ねた。『私の血を飲めば貴方は助かるだろう。けど私の血は貴方の体を蝕み、違う存在、人であるという事を捨てさるものだ。それでもなお、貴方は生きたいと願うか?』っと」


それはある意味では究極の選択と言えるだろう。その少年はエルの、伝説の龍の血を飲むことによって生き延びる事を選ぶか、それとも血を飲まずに、人であるままに死ぬのか、人であることを捨てれば助かり、人であることを選べば死、まさに極限の究極の二択だ。そして、レティスが吸血鬼たちが存在しているという事は、少年は選んだのだろう。人であるという事を捨て去るという選択を。


「彼は迷うことなく、私の血を飲むことを選択した。そして人であるという事を捨て去った」


ある人から見れば正解で、ある人から見れば不正解だろう。だが俺はその少年の事を否定するという事は出来なかった。自身で考え、彼は生きるという事を選択した。それは尊い事であった。

他者に判断を委ねる事無く、一人で決断する。それは勇気のいる行為だった。


「少年は吸血鬼になった、か」


俺のその言葉にエルは暗い表情のままに頷いた。どうやらその時、少年に尋ねた、人であるという事を捨てさせるような行為をさせた事を後悔しているようだった。俺は椅子から立ち上がり、エルの隣に座るとそっと優しく頭を撫でた。撫でた事で分かったが、エルは、震えていた。だから俺は安心させる為に優しくエルの頭を撫で続け、効果があったのか、徐々にエルの震えも止まり、暗かったエルの表情も幾分か明るさが戻ていた。


「ありがとう、シン」


「いいんだよ。後悔をするのは悪い事じゃない。それに一人で耐えれない(ダメ)二人で、分かち合えばいい。それだけだ。それに別に無理して話さなくてもいいんだぞ?」


何となく、予想が出来ているからなと俺が言うと、落ち着いた様子でエルは首を横に振った。


「ううん、ありがとう。でも最後まで聞いてほしい」


「分かった」


あえて俺は大丈夫かとは尋ねなかった。それは何となくエルを信じていないと言ってしまうかのような気がしたからだった。

そして落ち着いた声音でエルは再び語り始めた。その少年の後の出来事を。


「私の血を飲んだ彼は、三日三晩、絶叫し、その場を転げまわった。私の血は万能の薬であると同時に、劇薬でもあった。私の血を飲んだ少年は自らの体を、全身を地面に叩きつけ、血を吹き出すもすぐに癒されるという地獄を体験し、それを乗り越えた。」


ごくりと俺は知らず知らずに喉を鳴らしていた。三日三晩、それも傷つけた先から癒されまた傷つけては癒されるという生き地獄を俺は経験をした事は無い。そしてそれを想像するだけでも想像を絶する痛みであるという事に違いは無かった。


「そして、乗り越えた少年の肌からは黒は消え去り、寧ろ一層白くなった。それでも少年は喜んだ。自分が生きているという事に。それから少年は意気揚々と山を下りて行った。でも、彼を待っていたのは、恐怖と羨望だった。」


恐らく、当時その病に罹れば死ぬと言われていた不治の病だ。それを乗り越えた少年は何処か不気味に見えつつも、その強さに羨望の眼差しを向けたのだろう。まあ、それを知らない俺が言える事では無いが。


「そして、その町の人々は少年から話を聞き、何人もの人々が【霊峰】へと挑んだが、誰もたどり着けた者は居なかった。そして、ある時一人の男が言った。『それなら、少年の血を飲めば治るのではないか』と」


確かにそう考え着く可能性もあっただろうが、恐らく誰もやろうとはしないだろう。だが恐らく生きようとする人にとってそれは障害にすらならなかったのだろう。と俺は思った。


「そして、人々はその少年を縛り、その血を飲むとたちまち全身の【黒灰病】の症状である黒は消え去り、人々は次々に争うようにその血を飲んでいった。それが取り返しのつかない代償であると知らずに」


「それは」


「そう、人として、生物、無機物共にある影の消失。そして影を失った人々は、日中に外を出歩けなくなった。日に当たればその白い肌は焼かれた。そして、住人は影を持たず、夜の間のみ外に出ている情報にその時の国王は、恐怖し、日中の内に彼らを殺していった」


「それは‥…」


惨いとばかりに俺は顔をしかめた。幾ら恐怖からとはいえそうも容易く人を殺していいのかと俺は思った。そしてそれはエルも同じようだった。


「でも、半数ほどは生き残っていて、夜が来るのを待って、彼らは反撃に入った」


「噛みつき、棍棒、鉈などを身の回りにある物でその町の住民は抵抗した。一方の兵士たちは幾ら斬りつけても起き上がる町の人間に恐怖し、退散していった。そして町の住人たちは光の届かない地を求めて町を立ち、そして、その地を見つけ、そこに国を作った。後に吸血鬼たちの国【明けない夜の王国(ロイ・ナハト)】と呼ばれる常に霧に包まれ、光の届かない地に。そうでしょ、レティス?」


俺とエル以外誰もいない部屋にエルは問いかけた。


「‥‥気が付いていたのですか」


レティスの声が聞こえると、机の影からレティスが姿を現したのだった。



ふう、思いついたので思いっきり殴り書きですが、書き上げました。今回は吸血鬼の力に関しての過去を書きました。

取りあえず、次でどうにか「爆誕、吸血姫メイド」は終わる予定です。(どうにかして最初の部分につなげれるように頑張ります)

これもちゃんとこの章のストーリーです。(念のため)

次の投稿も二週間後で、と言いながら結果的に連投になっていますが、二週間の間のどれかに投稿すると思っていただけますと嬉しいです。本当に今回のは偶然ですので。

追伸:エルの眼ですが千里眼のようなモノと思っていただけますと、耳もまあ、超耳が良いという事でお願いします(伝説の龍ですからぶっ飛んでいてもおかしくはないはず…)

取り合えず、二週間以内に投稿する(思いつけば)ので気長に待っていただけますと嬉しいです。

では、また次話で。


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