第四十四話 「爆誕、吸血姫メイド3」
ふ~、どうにか、投稿‥‥
俺とエルが部屋で吸血鬼の始祖の人物の話を聞いていると影より姿を現したのは、寝巻に身を包んだレティスだった。
「いつから気が付いていたんですか?」
「最初から」
「‥‥驚き過ぎて言葉も出ませんね」
エルのなんとでも無いように言った言葉にレティスは何処か苦笑気味に笑みを浮かべた。そしてそれを見てエルは何も言わずにベットから立ち上がった。
「何処に行かれるのです?」
「私の時間は終わり。後はレティス、貴女の時間」
エルはそう言うと俺の部屋から出て行き、部屋に残されたのは俺とレティスだけとなった。そしてエルが出て行ったその場には何とも言えない空気が残った。俺自身はどうとも思っていないが、どうやらレティスは盗み聞きしていたという事に対して罪悪感を感じているようで、先程エルが居た時にそれは窺わせていなかったが、エルが退出した事で気が緩んだのかもしれなかった。そして俺はこの居心地の悪い状況を打開する為に動くことにした。
「とりあえず、そこに座ったらどうだ?」
「‥…そう、だね」
少し迷った素振りをした後レティスは俺が進めた椅子ではなく、俺の、先程エルが座っていた方とは反対側に腰を落ち着けた。
「‥‥どうして、隣に座ったんだ?」
「‥‥あっちに座ると、何となく悔しかったから」
それは小さかったが、その言葉はまるでエルと張り合っているかのような言葉だった事に俺は気にかかったが取りあえずそれは先送りにしておくことにした。そして隣に座っているレティスに俺は尋ねた。
「とりあえず、俺の部屋に来ていたが、何か俺に話したいことでもあったのか?」
「ええ、貴方に話したいことがあったけど、私が話そうと思っていた事の大半を話されてた」
何処かむくれ気味にレティスは暗に(?)エルに話そうとしていた事の大半を既に話されたと俺に言って来た事に対して俺は苦笑を浮かべるしかなかった。
「いや、エルもワザと話したわけじゃないと思うぞ?」
「分かってる」
それでも何となく悔しかったのか、レティスはベットを何度か叩くと少しはすっきりしたのか、息を吐いた。そしてそれを見計らい、俺は要件を尋ねた。
「それで、レティス、君は俺に何を話したかったんだ?」
「‥‥貴方に話したかった事。それは、私の命が、あと数日で尽きる。」
「なっ!」
想像以上の内容に俺は思わず絶句し、それに構わずレティスが言うには、今のレティスの体は遥か昔、彼女の叔父が、つまり始祖の時代に流行ったとされる「黒灰病」と同じような症状に襲われているということだった。だが俺には気なる事があった。
「だが、おかしくないか?浴槽で見た限り、君の肌に「黒灰病」特有の黒くなって行くという症状は無かっだはずだ。」
「何時の間に見ていたのかに関しては聞かないけど、私の場合は、肌に症状は一切出ていない。でも、私には分かる。刻一刻と私の命が削り取られ、落ちていくのが」
レティスは自分の胸に手を当てながら、差し込む月の光を受けるレティスの何処か儚げな印象に俺は幻を見た気がした。それは今ここにいるレティスの体の端々から徐々に欠け、壊れて行っているかのように俺には見えた。
「それに、壊れは罰だと私は思っているんです。人としての死を選ばず、人ならざるものとなりて生を選んだ吸血鬼達への」
レティスを診た医者が言うには、レティスの体を蝕んでいるのは、始祖が取り込んだエルの、竜の血が原因との事だった。
竜の血は、強すぎたのだ。始祖はその痛みそして血を逆に喰らい、乗り越えたが、他の吸血鬼たちはそうではない。だが他の吸血鬼たちはレティスと同じ症状を訴えるものは居なかった。ではなぜか。
それはレティスの体、いや生命力が竜の血によって喰われ続けているという事が原因で、それは純血である、始祖の直系であるという事が関係していたのだった。
「それなら、エルに頼んで」
「‥‥それは不可能です。血はもはや取り出すことは出来ない。それほどまでに変質してしまっている」
吸血鬼と化した住人たちが始祖から取り込んだ血の量は微々たるものであったが、それでも肉体を人ならざる者へと変化させた。少量で人を変化させるほどの力を宿した血だ。
そして純粋なその龍の血は代を継ぐごとに、受け継がれる血は決して薄くはならない。だが代を継ぐごとに、竜の血と互いにバランスを保っていた始祖の血は違う。人ならざる者になったとはいえ、元は人間である。それ故に当然のように始祖の血は代を継げば薄くなる。そしてそれこそがレティスの寿命が短くなっている原因であるとレティスを診た医者はそう言ったそうだ。
「それは、どうにもならないのか?」
まだ方法があるのではないのか、と続けて尋ねようとした言葉を遮りレティスはその首を横に振った。
「それは無理。覆しようがない程に。お父様が国でも名うて医者に診てもらった結果、どうにもならないと言われたんだ。私の中に流れる血が、私を蝕んで、離そうとしないんだって。離れるのは私が死んだ時、とも言われた。それに…」
私が死んだ方が都合がいい、のとレティスはなんとでも無いように言ったが、俺はその言葉に引っ掛かりを覚えた。
「都合がいい?」
レティスの何処か自虐的な笑みの真意は分からなかったが、それでも聞かなければならないと感じた俺はレティスに尋ねた。
「何処から情報が漏れたのかは分からない。けど国王である私がハーフであるという事が純血派にバレてしまったの」
「純血派?」
俺は吸血鬼たちの国の事情は大まかに知ってはいたが、派閥までは知らなかったので、レティスが説明をしてくれた。
「吸血鬼の国には二つの派閥が存在しているの。一つは私が今言った【純血派】、これは純血こそ至上とする純血の吸血鬼達の主に貴族クラスの吸血鬼が多数所属している派閥。そして【純血派】と相対するかのように存在するのが、【混血派】」
「混血派?」
俺の言葉にレティスは頷きながら説明を続ける。
「【混血派】は主に混血に理解のある一部の貴族と、他は混血の者たちで結成された派閥なの」
「へえ、そうなのか。てっきり俺は純血派?ってのが国の大半を占めているのかと思っていたよ」
「それは違う。純血たちの力は確かに強い。でもそれは【血解術】がハーフたちの間に生まれるまでの間の事で、【血解術】が作り出されると両者の力は互いに拮抗しました。そして、それを私の父は機と読んだのか、私の父が王の玉座を私へと譲りました。それが凡そ五十年ほど前の事」
「五十年前?」
「そう」
思わず聞き間違いかとばかりに俺はレティスを見たが、一方のレティスは逆にどうしたのかとばかりに俺を見返してきた。
「ちなみにだが、君は言った幾つなんだ‥‥?」
「女性の年齢は秘密」
「あ、そうですか」
ヘタに藪蛇を踏みに行くほど俺は馬鹿ではないので深く聞かなかったが俺はある意味では納得していた。少なくとも五十年も生きているのであればあれほど落ち着きがあるのも、納得が出来る事だった。そして命を削られてもなお五十年は生きているという事は如何に吸血鬼がでたらめなのかが理解できた。
(まあ、それでも知識に関しては抜けがあるようだが…)
幾らか年上と分かったから(予想はしていた)とはいえ、それ以上の年上であるエルが居る時点でさしたる問題になるとは思えなかったし、俺にとっても問題は無かった。
「まあ、それはそれでいいのかもな」
「?」
「ま、まあ取り敢えずレティスの状況も何となく分かった。要するにレティスは病気のまま、追われているんだろ」
「ええ、まあ」
俺はレティスをあえて見ない振りをしながら続きを話す。
「そして、お前は生きる為に殺しをした。確かに人を殺すのは大きな罪だ。だがこの世界の人間は罪を忘れるものだ。だが君はその罪悪感を忘れていなかった。そうだろ?」
「‥‥それは」
肯定とも、否定とも取れない言葉だったが、しかし否定をしないという事は、忘れていなかったと言っているのと同じことだ。
「『忘れていない』。だったら、俺がお前を守るのに十分な理由だ。それにな、お前は俺の手を取った」
そして、俺はこれから俺が言う事が大切なのだとレティスに言い聞かせるかのように口にする。
「お前は迷ったが、それでも俺の手を取った。それなら、手を取った相手を助けて何が悪い?」
「‥‥‥‥それは」
「それに、イシュラが言っただろ、『貴方の目の前にはあなたを救いたいという思いから、手を差し伸べてくれる人がいるのよ。貴方はその人の手を振り払ってまた暗闇に一人でいたいの?』って。そしてお前は言った」
聞いていたぞと、そして俺は念を押すかのようにレティスへと言葉を紡ぐ。
「嫌、と」
「それはっ‥…それは」
その時の事を否定するかのように震える声で否定をするレティスを横目に見ながら俺は自分の思いをぶつけていく。
「俺には寧ろ、暗闇の中で一人震えている少女にしか見えなかった」
「違います!あれは、あれは‥…」
「じゃあ、聞くが。お前の目元に浮かんでいるそれは何だ?」
なおも否定をするレティスに俺はそれは何かとレティスに問うた。
「え‥‥どうして…?」
俺がそれを言わなくともレティス自身も気が付いただろう。溢れ出る涙の存在を。そして、何故涙が出ているのか、レティスは何となく理解しているのだろう。
そして涙は拭っても拭っても溢れて来ている。それはレティスの心の涙だった。レティスは今も傷ついているのだろう。周りの人間を傷つけないようにするたびに、レティスは自分自身を傷つけていく。そして今も自分から遠ざけるために自分を傷つけていた。表面上は取り繕っていても、心まではそうはいかない。
「俺達を巻き込みたくない。そんな優しいお前の思いも分かる。だが諦めろ。お前が俺の手を取った時から、お前が例え嫌がろうとも俺は手放す気は、無いからな」
それが、手を取ったものとしての、俺の覚悟だと。
「でも、それだと、みんなに‥‥」
それでもなお自分ではなく他人を心配するレティスに俺は思わず、ネタバラしをした。
「エル達なら、そこで話を聞いているよ」
え?とばかりの驚きの表情で俺を見てきたレティスを見ながら、俺は扉を開けると空いた扉のを押し倒す勢いで、そこにはイシュラを除いた全員がなだれ込んできた。
「「「きゃあああ!」」」
どこぞのアニメのように聞き耳を立てていたのか(その必要はない)部屋になだれ込む様に入って来たことにレティスは呆然と見ていた。因みに重なっている順番は下からルヴィ、リリィ、エルとなっていた。
「うう、重い‥‥」
「もう、だから言ったじゃないですか。普通に義兄さんに呼ばれるのを待っていれば良かったんですよ…」
「大丈夫、それに結果として正妻たる私がトップであると証明できた」
「「そんな事で、私を下敷きにしないでください!」」
何やら喧嘩を始めたエル達のおかげでしんみりしていた雰囲気が吹き飛、いや、ぶち壊された。だがそれは決して悪い事では無かった。いや、確かに部屋に入って来るなり騒ぐのはどうかと思うが…
「もう‥‥何をされているんですか」
そう言うレティスの顔は笑っていた。いや正確に言えば泣き笑いだった。
そして、その表情は先ほどまでの何処か思い詰め、相手を傷つけないように怯えていた雰囲気は消え去っていた。
どうにか、最初に繋がる様にかけたと思いたい‥‥
次は‥‥まあ話が進めばいいかなと思っています。メイドレティスの力や如何に。
次の投稿も、問題なく浮かべば二週間以内出来ればと思います。
修正箇所、感想などは随時返させていただいています。今後も楽しみにしていただけると嬉しいです。
それでは。また次話で。
7月25日現在書いていますが、なかなか藩士が浮かばず、ですが現在今月中にどうにか投稿しようと頑張っております。楽しみにしていた抱いている方々、大変申し訳ございません。どうにか今月中に上げるつもりですので。よろしくお願いします。本当に申し訳ないです。




