4 僕たちの未来
12本目の薬を飲ませた今、残っているのはカレンのお母さんが持っているストック分5本だけだ。
「お母さん、ストックを出してください」
「は、はい!」
カレンの母親が薬をストックを出して、カレンに飲ませる。
と、また血を吐く。けど、大分、その量は減って来てる。
「治癒!」
僕は傷ついた肺に治癒魔法を施す。
それが効き目がなくなると、僕は次を促した。
「お母さん、次をお願します」
「はい!」
母親が薬を飲ます。14本目だ。
カレンが血を吐く。かなり少なくなってるが、それでもまだある。
瘴気毒が少しでも肺に残っていたら、結局、また再発してしまう。
完全に吐く血がなくなるまで、薬を飲ませなければいけない。
「お母さん、次です」
「こ……これで――足りるでしょうか……」
「やってみるしかありません」
母親は頷くと、カレンに薬を飲ませた。これが15本目。
30本必要だと言われ、治癒と並行すれば半分で済むと言われた――その15本目だ。これで終わりになれば……
「カ……ハァッ」
カレンがまだ血を吐く。量は少な――くない! また大量だ!
「え……まだ、こんなに血が出るのか!?」
驚きの中、それでも治癒を施す。
「あと……2本です。……これで――いけるでしょうか?」
「やってみるしか……ありません」
僕は治癒を施して、そう告げた。少し傷が大きかったらしく、治癒魔法をかなり消費する。
治癒魔法を連続で使って、僕もかなりフラフラになってきてた。
「カレン、もう少しだよ。頑張るんだ!」
「うん……わたし――がんばる」
僕は母親に眼で合図した。母親が頷いて、カレンに薬を飲ませる。
「うっ――くはっ!」
カレンが血を吐く。――ほんの僅かだ。たらいで受けていたロトンが声をあげる。
「少ないぞ! これが最後だったのかもしれない!」
僕は治癒魔法を施す。この治癒魔法も、少しだけで反応がなくなった。
母親が薬瓶を持つ。
「これが――最後の一本です……」
「やってみましょう」
母親が最後の薬を、カレンに呑ませる。
カレンは飲んだ後に――不思議な顔をしている。
「あれ……今まで苦しかったのに――苦しいところがない」
「もしかして――」
ロトンが母親を見つめた。母親がカレンの両肩を掴む。
「カレン、何処も苦しいところはないのかい?」
「うん、お母さん。……なんだか、凄く呼吸がラクで――今、凄くい気持ち」
そう言って、カレンはにっこりと微笑した。
ずっと可憐な少女だとは思っていたが、こんなに可愛い笑顔を見せられる子なんだと初めて判った。
「治った! 治ったんだよ、カレン!」
「わたし……治ったの? ありがとう、お兄ちゃん! クライン!」
カレンがそう言って、ロトンに抱きつく。と、その後に僕にも抱きついてくる。
おわわ。けど、相手は無心の少女。僕もよかったと、安心した。
「皆さん、本当に……ありがとうございました」
母親が涙を流しながら、僕に頭を下げた。僕は首を振った。
「みんながカレンを治したいって気持ちがあったからです。本当に――最後の一本まで、気が抜けなかった。薬草採りにいってくれた皆の努力がなかったら、足りないところでした」
「オレ、みんなにカレンが治ったって伝えてくるよ」
リッドが嬉しそうにそう言って、表へ出て行った。
すぐに外から、歓声が聞こえる。
……よかった。僕の天職は『剣士』ではなかったけど――それでもなんとか人の役にたてた。
次に週には、狩りで得た鎧ジカの革で、木剣を包んだ練習用の武具をゾーイとゴーイが作り上げた。さすが製造職だ。
そして僕らは、その練習用武具を持って、北の少年グループに行く。
「お、クライン、それにディッド。今回の件では、本当に世話になったな」
ガルバトが笑いながら、そう話しかけてきた。
僕はガルバトに言う。
「実は頼みがあってさぁ」
「なんだ、一体?」
僕はガルバトに、新しい武具を手渡した。
「これは鎧ジカの革で作った練習用の木剣。木剣を綿でくるんで、その上から革で覆ったもの」
「これで――練習を?」
ガルバトは首を傾げる。
「そう、これで練習すれば、模擬戦でもかなり怪我を減らせるはずだ。頼みってのはさ、僕らの練習相手になってほしいってこと」
ガルバトは目を丸くした。
「練習相手に?」
「そう。非戦闘職でも、訓練次第でいくらでも強くなる。けどそのためには、有効な練習が必要で、例えばスキル持ちとの模擬戦なんかは、凄く効果の高いものだ。――引き受けてくれるかい?」
僕の言葉に、ガルバトは笑った。
「もちろんさ。もう……俺たちは仲間だからな」
「いいね」
僕も笑い返す。デイッドもダガンも微笑んでいた。
学校では僕は相変わらず、実用職のクラスに出たり、戦闘職のクラスに出たりしていた。戦闘職のクラスでは、やはりラミスがかなりの使い手で、模擬戦をやるたびに色々、反省点もあった。
「――ねえ、クライン、最近、眼鏡してないよね?」
一緒に帰路に着いてる時、不意にシェリルに言われて、僕はそれに答える。
「実はさ、スキル『測量』を使うようになってから、視力が回復したんだ。結局、眼が悪いってのは、眼球筋の調整がうまくできなってことだから。『測量』スキルはまずそれを自在に使うところから始まるんで、眼球筋が強化されたんだよ」
僕が笑いながらそう言うと、シェリルは僕の顔をまじまじと見た。
と、不意に顔を赤らめて、横を向く。
「どうかした?」
「ううん……なんか――最近、顔が引き締まった感じになってない?」
「そうかな?」
僕は首を傾げた。そんなに自分に変化があるとは思ってないけど。
けど、まあそうかもしれない。
天職授与の日『測量士』だって聞いた時は、本当に絶望しかけてたけど――
けど『測量士』も悪くない。そう思えるようになったんだ。
「ね……今度の週末、空いてる?」
「う~ん……いや、難しいなあ」
僕は正直に答える。週末はディッドやガルバトたちと訓練して、翌日の日曜日は狩りに出かけてる。
シェリルと楽しい時間を過ごしたい気持ちもあるけれど……
「ね――あの街の子たちと遊んでるんだよね?」
「遊んでるっていうか――訓練してる」
「訓練!?」
シェリルは驚きに眼を見開く。僕は言った。
「僕は決めたんだ。実力をつけて、お金を貯めて――王立武統学院に進学する。
お金は入学金が300万ワルドらいしから、この二年半くらいで、それくらい貯めなきゃダメなんだ」
僕の言葉に唖然としていたシェリルだったが、やがて微笑を浮かべた。
「そっか……やっぱり凄いなクラインは。ね、その子たち、わたしにも紹介してよ」
「構わないけど――いいのかい?」
「うん!」
そう言うと、シェリルは僕の腕をとって身体を寄せてきた。
その可愛い仕草に、僕は思わず笑みをこぼした。




