覚悟をキメる(後編)
後編です
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危なかった…あの時、メガネ先輩が叫んでいなかったらモロに食らっていた。本当に助かった……
《大丈夫?清澄君──それよりも野坂がすぐに攻撃をしかけてくるよ!!》
「行くぞ、もう一度だッ!!『キー』ィィィィィィィィッ!!!!!」
不意にそんな叫びが聞こえてきた。
そうだった───くそぉ、悔しい。
まさかあの状況で突っ込んでくるとは思わず、すぐに撃たなかったことが1つ。
突然の攻撃で動きを崩され、遅れて撃ったサファイアが3発も防がれたことが1つ。
撃たれたのにも関わらず、その覚悟で僕に向かってくる攻撃を避けることができなかったのが1つ。
──本当に失敗ばかりだ。
いいや──1番の失敗は僕が遠距離タイプなのに相手を近づかせてしまったこと。
メガネ先輩に指摘されるまで、気づくことができなかった。
この4年間、ずっと夢に見てきた世界がこんなにも難しく、厳しくて、何も通用しないなんて……
「どうした!!さっきまでの威勢はよぉ!」
「くっ……」
ファイターは精神の写し鏡。
ファイター使いの心の状態によって、ファイターの強さは大きく変化してまう。
つまりマイナス思考に陥った状態の今、僕の『ブルー・オーシャン』は弱体化
してしまっている。
(どうにかしないと…)
気づくと野坂がすぐそこまで迫っていた。
僕はとっさに手を伸ばし、野坂に向かってやみくもに撃ちまくる。
「チッ、急に本気出してきたなぁ!」
だが野坂はかわし、時に捌きながら僕に着実に近づいていく。
完全に野坂にペースを握られていた。
そうして僕はさらに焦る。どうにかしようと思う。
まるで何もない闇に来てしまったような感覚。
何もできないこの『無力感』が、僕の心をみるみる内に覆っていく──
《清澄君しっかりして!!!!!》
ハッ……と、目の前の闇が一瞬にして消えていった。
今この場にはいないはずなのに、手を引っ張られたような気がして──
《誰でも失敗はあるよ!!私だって失敗するしジェイクさんでも失敗する!でもいつでも、ジェイクさんはあなたに言っていたはずだよ!『失敗は全て終わってから振り替えろ』って!!》
そうだった…僕があの時から……4年前から言われ続けてきた事だ……
“いいか清澄、失敗は全て終わってから振り替えろ。
「どうして起こってしまった」なんて気にするな。
それよりも『この後とるべき最善の行動』を考えろ。
常に先を『視る』んだ──“
脳裏にジェイクさんから言われた言葉が、記憶が蘇ってくる。
常に先を視て最善の行動を考える───なるほど。
あの時はわからなかったけど、今ようやく理解できた。
───野坂…お前には夢があるんだったな、『自由になる』と。
でも一体何から『自由になる』 んだ?
盗みから?
クスリから?
苦しい生活からか?
誰だっていい暮らしを送りたいはずだ。その理念は間違っていない。
では僕の夢はなんだろう?
たった今、その答えができたよ。
『強く』なってやる。僕も、『ブルー・オーシャン』も。強くなって、もっと任務に行けるように認めてもらってやる。
今は弱くても……必ず!
強くなって僕は…!!!お前のような『腐りきった悪を、一人残らず倒す』
(行動で示せ清澄。この気持ちを力に変えるんだ………絶対に勝つんだ───)
「これで終わりだッ!」
《清澄君!!》
「わかってます先輩!」
《……ッ!!!》
先輩は最後に何か叫んだ。
だがもう僕には何も聞こえなかい。
感じる。今僕は、『ブルー・オーシャン』と、一つになっている気がする。
先を『 視ろ』、今僕が取るべき『最善 』は…!!
「みえた……次の一手で終わらせる」
そうして『ブルー・オーシャン』は『変形』した。
両足から突如として「あるもの」が伸び始める。
それは───『触手』だ。
純白なシルクのような触手。それが地面を強く押し始めてヒビが入る。
やがて地面に加えられるヒビはみるみる大きくなり、触手自体がやがてバネのような性質を帯び始める。
そして奴…『キー』の拳が僕に到達しそうになったその時。
触手は力を加える事をやめ、僕と『ブルー・オーシャン』は天高く上空へ打ち上げられる。
「なにィッ!!!」
野坂が驚いたときにはもう遅い。
やがて僕は一瞬空から止まり、そして急激に高度を落としていく。
だが僕の心はこの秋の夜風のように静かで、冷たかった。
僕は指を野坂に向けた。それも、まるで西洋劇のガンマンのように親指を立てて人差し指は固定している。
野坂の『キー』に動きが見えた。なにかが『飛んで』くる。
これは───石だ。
石を投げてきた。さしずめ最後の抵抗といったところか。
だが手遅れだ。その行動はもう駄目なのだ。
「僕のちっぽけな『夢』が、お前の夢に勝ったんだ」
ありがとう。
なぜか僕はそう感謝し、そしてこう呟く。
「──『飛散スル・水』──」
次の瞬間一つの点《清澄》の周りが深い青色に染まるほどの、無数のサファイアが次々と打ち込まれていく。
溢れ出す輝きは水の如く、やがてあるサファイアは固まり、大きな粒となり襲い掛かる。
はじけ飛ぶ弾丸はスコールのように、野坂に向かって理不尽にも降り注いだ。
───懐かしいな。初めてジェイクさんと手合わせした記憶を思い出す。
“ うーん。なんか勿体ねぇな!!!───なんか味気ないっていうか、地味。
弾丸をストックできるのは悪くないが……やっぱり『必殺技』を覚えようぜ!
そうだな……あ!!めっちゃ弾を撃ちまくるってのはどうだ?
なんだよ。変な顔して……大丈夫。きっとできるさ──“
──そう。この技には正確性が一ミリもない。
しかし本来なら1発が強力な弾丸を、『物量』というカタチで相手に押し付けることができる。
特にこの状況、障害物の一切ない開けた所なら────
その威力は想像を絶するものになる。
一言で表すのなら──「圧倒的な弾幕攻撃」
「ウソダァァァ───────!!!」
そうして野坂は絶叫した。
彼の投げた石は無常にも砕け散り、やがてそのサファイアは彼に襲い掛かる。
大粒のサファイアは地面をえぐり、『キー』の身体を貫き風穴をあける。
そしてそれは、本体である野坂も例外ではなかった。
「そういえば……生身の人間はファイターを攻撃することはできませんが、ファイターは生身の人間にも攻撃ができ、受けた攻撃はそのまま身体的な影響を及ぼす……って聞いてます?」
「ギャァァァ────!!イタイィィィィィィッ!!!ナンデ、ナンデオレモォォォォォ゛ッ!!!イタインダァ゛ァァァ!!!!!」
固まることなく降り注ぐサファイアは、野坂正次の肉体を割いていく。
僕が彼に唯一見せた優しさも、彼の断末魔によってかき消されていた。
その姿があまりにも痛そうだったので、僕は思わず目をそらす。
そして僕は、『ブルー・オーシャン』から伸ばした触手を、落下地付近の電柱に絡ませて減速し、着地した。
(………やったぞ)
ぼくはそう呟いた。
やっと僕の、長く、長い初任務は終わりを迎えたのだ───
そう思ったまさにその時、
「ウゥ……ッ……」
「ッ!!!!」
間違いない。その声は確かに今倒されたはずの野坂からだった。
「まだッ……!!まだやるのか……?」
「ウ…あきらめ……ナイ……」
どうやら心体ともに再起不能なはずなのに、戦意はまだあるようだ。
そうして野坂は、僕の足につかみかかる。
「……どうしてッ!!」
僕は疑問だった。
「どうしてまだ諦めない!!ここまでだと、何かにとり憑かれているように見えるぞッ……」
僕は彼を振りほどき問い詰める。
ここまで彼を動かす原動力は何なんだ。夢だけではこんな力出るはずがない。
一体どうやって…その時である。
「……『クロ』……ォ……」
その言葉には聞き覚えがあった。
いつも見る同じ夢──あの医者がいつも言う言葉。
どうゆう事だ。ただの夢の話だと思っていたが…そうではないのか?
……知りたい。例え僕の仮説が違ってもそれを知りたい。
夢の答え合わせがしたい。
「おい!!クロって何なんだ、その『クロ』って一体なんだ!!!」
「すべては……ッ!!!……『クロ』の………ため……二ィ………………」
しかし彼はその言葉を最後に、静かにその場で力尽き白目をむいた。
9月2日 2:48AM 界域市。
不気味なほど静かな静寂が、僕とそのあたりを再び包み込んだ。
加筆修正を行いました。
初めての戦闘回、書いててめっちゃ楽しかったです。




