『キー』
追記:話の順序を変えました
~このごく普通の静かな住宅街で、コンクリート塀に寄りかかる一人の男がいた~
♦ 9月2日 2:00 界域市
いかにも「お金持ち」な豪邸。鋼鉄の門扉が屋敷を守っている。だが、俺には関係ない。その家から数十メートル離れたこの場所で立ち止まる。
「こい『キー』!」
どこからか、《カシャン》という音が鳴る。円状になっている針金にかかっている無数の"鍵"その鍵が増殖変形していき姿を形成する。銀色の身体に南京錠を模した装飾と腰には大量の"鍵"を下げている。
2週間前、突如発現したコイツを俺は『キー』と名付けている。『キー』は鍵と鍵がぶつかる音を出しながら、その屋敷の門扉に近づく。
「しかし、いい所に住んでやがる。その"いい所"に住んでるせいで狙われるんだからな」
『キー』の腕が屋敷の門扉をすり抜け次の瞬間、カチリと音がする。そして軽く門扉を押した時にはもう、門扉は開いていた。
同様の手口でさらに屋敷へ繋がる扉も開く。その間、俺はコンクリート塀から一歩も動いていない。
故に誰も、まさかこの俺が強盗だと気づくわけがないのだ………
────────────────────────────────
25分後─
『キー』は全てを終えて俺のところまで戻ってくる。
この後の工程はかなり嫌なのだが、これも目的の為仕方ない。
「……ヴォエッ!!」
俺は精一杯、喉の奥から吐しゃ物を出すような動作をした。どういうわけか、この『キー』は人からは見えない。だが、コイツの盗んだ金や宝石はそのまま浮いて見えるらしい。考え抜いた結果、俺は『キーの体内に一時的に入れる』という荒業で突破したわけだが…… 取り出すためには毎度吐き出さなければならない。
──それでもこの方法なら……
「簡単に金が手に入る!!」
そう俺は手に入れたのだ。『誰にも盗みがバレない能力』を! そしてこの力で俺は誰にも邪魔されない最高の人生を送れ──
「おじさん何してるの?」
「…ッ!」
どこから見つけられたのか、突然俺は数メートル先から声を"かけられた"。……これまで一度もあったことのない現象に、俺の心臓は酷くうなっていた。
一度冷静になり俺は目を凝らす────────待て、"子供"? なんだびっくりさせやがって。ごまかしてこの場を乗り切るとするか。
「なんだよ中坊、お前の方がこんなに深夜で何をしているんだ? 俺はこれからタバコを吸うつもりだったんだがよ、邪魔だったかい?」
予め補充していたヤニとライターをズボンから取り出す。ちょうど吸いたいと思っていたところだ丁度いい……ヤニを口に咥え、火をつけようとしたその時──
「あぁそう……ところでさっきあのデッカイ屋敷から出てきてたけどおじさん、あそこに住んでるの?」
そう言われた時、俺はタバコを落としてしまった。なんてことだろう、完全犯罪が出来たと思っていた俺はこのガキに、屋敷から出るのを"見られていた"のだ。
「おいおい冗談はよしてくれよ。俺はこの場所に今来たばかりだぜ…… 」
自分でも動揺しているのが分かった。声が震えている。だが俺は、なんとか落ち着いているようにタバコを拾い上げた。
「そういうわけでだ、坊やは家に帰りな。じゃないと一緒に吸うことになるぜ。…… ほらぁ副流煙ってやつだよ。学校の授業で習うだろ?」
再度タバコを咥え、俺は静かにそう諭す。だが本当の気持ちはそんなに穏やかではない。俺としては正直早く立ち去ってほしかった。
とゆうより、そもそもなんで見ず知らずの人に話しかけて…… 最近のガキは危機感ないのか?
俺はそう思いながら改めて火をつけようとした時だった。
「あ、僕が話していたのはおじさんじゃなくてさぁ──」
そう言ってそのガキは、俺の横に視線をずらす。
「そっちの怪物なんだけど」
俺はその目線の方向に目を向ける………『キー』。その瞬間、俺の顔は一気に青ざめる。
「お前ッ! コイツが見えッ!!」
「見えているのか」と。そう俺が言い終える前に、異変はすでに起きていた。
奴は指を鳴らし、その直後奴のそばに『なにか』が現れた気がした。そして"見"のタイミングで『なにか』が指を向け、そして俺の…… 俺のッ!!
─────『俺の親指と人差し指を撃ちぬいた』────
「ア゛ ア゛ ア゛ ァァァァァァぁぁぁッッッ!!」
あまりの痛みによって、俺は絶叫した。今起こっている出来事がショックで、受け入れられなかった。
(何がッ!! …… 何が俺の指を貫いたんだ…… )
ぼやけている視界の中で、俺はガキの方を向いた。するといたのだ。奴にも。デパートのマネキンのような白い身体に宝石が散りばめられている姿──間違いない。こいつは『俺と同じような力』を持っている。
痛みに耐えながらここで俺は、初めてずっと思ってきた疑問を奴にぶつける──
「おいガキッ!! お前は一体何者なんだ!」
俺の質問に、奴らは俺に人差し指を向けて親指を立てる。"指鉄砲"のつもりのように見えるが、あれは一体……
「僕は岬清澄。『S.J.S』……『特殊部隊』のメンバーだ。名前はわかっているぞ野坂正次! 今からお前を僕の『ブルーオーシャン』が始末する」
──なぜ、俺の名前を知っているのか。考える間もなく奴の『ブルーオーシャン』の周りに、ある物体が出現する。俺の目が確かなら間違いなくそれは『サファイア』だった。
(そうか……)
どうやら俺の指は、この人間の拳ほどのサファイアに撃ち抜かれたらしい。
とたん、俺の全身に冷や汗が流れる。"もう一度撃ちぬかれてしまえば… "と考えてしまう。
だがしかしそれでも闘わなければならない。この最高の力を守るために、この生活から抜け出すために。そして───
「『クロ』の為に」
俺はそう呟き奴に向き直る。 そう、俺はこんなところで諦めるわけにはいかねぇんだ。
「かかって来いよガキィッ! 俺はこんなところでくたばらねェッ!」
清澄は身長が小さいので時々子供に間違われます(本人はチョッピリ気にしている)
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