追うもの達
4話です!!
戦闘回ではありませんが、かなり設定が盛りだくさんです!!
(追記:現在第5話を製作中です。もうしばらくお待ちください。)
─闘いが始まる数時間前
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──9月1日 17:24 PM 界域市 住宅地東エリア
「ハァ!?『早瀬』さんは来れないって、どういう事なんですか!!」
「それが分かってたら僕も苦労しませんよぉ。ただ急に『行けない』って言いだしてぇ……」
夕方の住宅街に停まる黒のワゴン車で、僕とその人は絶賛もめていた。
理由は単純かつ明快で、本来ここに来る予定だった現場監督の『早瀬』さんが急遽来れなくなってしまったらしい。
「じゃあ、あんたは一体だれなんですか!!!」
「ぼ、ぼくは『銀八 ともえ』ですぅ!!!」
「いや誰だよ!!」
彼女の唐突な自己紹介に、僕は思わず突っ込まざるをえなかった。
くそぉ…今日のジェイクさんといい、えっと…銀八さんといい。今日は自分のペースが鈍るなぁ……情緒がおかしくなりそうだ。
「えっと……ぼくは本来ここにいるはずの『早瀬』さんの代わりに派遣された者ですぅ…まだ現場慣れしてないんですけど……でも大丈夫です!!ちゃんと引き継いできたので!」
そう自信ありげに話す銀八さん……だめだこの先不安しかない。
僕はそう頭を抱えた。あれは絶対にPONしてしまうタイプの人だ!
こんな人と一緒なのがよりによって初任務なのは無理があるって!
──だが、そう弱音を吐いてはいけない。折角掴んだチャンスなんだ……どんな事があってもやり遂げてみせる。
そう改めて覚悟を決めた僕は、事件について詳しく説明を受けることにした。
「最初の事件が起こったのは丁度2週間前の事です。この事件最大の特徴は『状況証拠が一切ない』という事でしてぇ……目撃証言はおろか現場に犯人の手掛かりは全くなく捜査は難航。その後2件目3件目が起こり…そうして今回が12件目です。何度も同じ被害に会われた方もいたようですよ」
「付近の防犯カメラに人は映っていなかったんですか?」
「あっ…えっとですね………はい、どうやら付近の防犯カメラの映像は、どれも故障で録画されていなかったらしいです…」
質問が来ると思っていなかったのだろう。驚きながらも銀八さんは引き継いだであろう資料を見ながらそう答える。
「全部──ですか?」
「えっと……はい。そうですね。最初の事件から昨日に至るまで……正確には破壊されていたらしいですねぇ……それも丁寧に石のような固いもので壊していたらしいです…」
なんというか、やり方が結構原始的だな……
と、そんな事を思いながらも僕は立て続けにもう一つ質問をする。
「他に何か有力な手掛かりとなるような情報はありますか?」
「えぇ!?……えっとですねぇ……あらゆる鍵が全て外されていたり、お年寄りのお宅を狙った犯行が多かったり……あと犯行場所は必ず、留守にしていた所を狙っていたようです」
「なるほど……」
これはいい情報を手に入れる事ができた。
お年寄りや留守にしている家を狙うという事は、『その町の住宅事情をよく知っている』ということになる。
先ほど上がった監視カメラの破壊からも、そのことが窺えるだろう。
──とはいえやはり証拠がないようじゃあ犯人捜査はお話にならない。
一体どうすればよいのだろうか……
そう僕が考えている時、突然銀八さんのスマホが鳴り出した。
「あ!すみません清澄さん。ちょっと待っててくださいね…」
慌てた様子で、彼女はその場を離れていった。
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さて、どうしようか。
改めて僕は思考を巡らせる。
この事件をどう解決し、そしてファイター使いを倒す方法を。
……正直に言うと、初任務にしてはあまりにもハードルが高すぎる気がする。
今までの修行で戦闘能力はある程度身に着けているが、僕は現場での捜査力というのは皆無に等しい。
その道のプロである警察が、事件について一切手掛かりが見つからなかったのに
それを素人の、しかも新人の僕が解決させるというのは……今更ながら厳しいものがある。
ジェイクさん。やっぱり僕──
その先に続く言葉を阻むように、スマホの着信音が静かになった。
僕はポケットに入れていたスマホを取り出して、通知を確認する。
『lin:メガネ
両耳の電源ボタンを10回連打』
突如メッセージアプリでメガネ先輩から送られてきた奇妙な文章に、僕は首をかしげる。
両耳…電源ボタン……
「そうか!『イヤホン』だ」
ここで現場に来る前にジェイクさんから貰ったイヤホンの事を思い出す。確か
イヤホンの使い方は現場に来てから確認するんだっけ。でも使い方を教えてくれる
『早瀬さん』は今この場にいないけど……
今連絡きたっては、何かあるのかも……
──物は試し。とりあえずやってみるか。
僕は反対側のポケットからイヤホンを取り出し、耳に付ける。
その後指示どうり10回電源ボタンを勢いよく連打を始め───
──そうして瞬間、僕の目の前の世界は大きく変化した。
手を離した時に鳴った起動音。一瞬発生した電流。それが終わると同時に僕の目の前に現れたのは、薄い水色の『ディスプレイ』だった。
自分でも何が起こったのか分からず、思わず息をのんでいると……
《あ、ようやく繋がった。もしもーし清澄くん。私だよー》
どこかほのぼのしていて、でもしっかりと通る声に僕は聞きなじみがあった。
今僕の耳から聞こえている人の声は───
「メガネ先輩!!」
《正解~私の声は聞こえてるみたいだね。ジェイクさんが早瀬さんにその『イヤホン』の事を丸投げしたのが心配で。早瀬さんに連絡したら現場に行けないっていうものだから一時はどうなるかと思ったけど……何とか伝わってよかったよ!》
そう安堵の声を口にするメガネ先輩。
本当によかったと思う。……というかこれそんなに重要なんだ。
それならなんでジェイクさんはそんな大事なのを最初に説明しなかったのだろう…
《声が聞こえるようになったってことは、そろそろ起動する頃だと思うんだけど……どうかな?》
そう聞かれるのと同時に、僕の目の前にあった『ディスプレイ』が一瞬のうちに細かいブロック状になり、やがてゆっくりと粒子状になり消えていく。
そして代わりに視界の左上にこんなものが表示された
『 【岬清澄】9月1日 17:40PM 晴れ22℃ 現在地地図【表示】 メニュー【表示】』
───?…??ナニコレ?
今までに経験したことのない現象に僕の思考は停止した。
右を向いても、左を向いてもその表示は消えずに僕の視界に残り続ける。
《そのイヤホンは特殊部隊のために作られた専用装備『万能型通信装置』だよ。
脳波に特殊な電流をながして、リアルタイムの情報を可視化する事ができるんだ》
「へぇ……!」
メガネ先輩からの説明を聞いて、僕は少しだけイヤホンについて理解できた気がした。
つまりこのイヤホンは、『敵に知られる事なく情報を仲間と共有できるアイテム』
という事だ。
……凄い!僕の知らない所でこんなに便利なものを使っていたなんて!!
時刻や気温はもちろん、現在地の表示やメニュー画面を見てみると……ポーカーとか低周波マッサージ機能まであるぞこれ。もはや通信機じゃないでしょ!!
──とはいえ。今の僕が使えそうなのは現在地の表示機能ぐらいだろうけど…
《あ、今更だけど実は私のオペレーターで、ファイター使いを遠隔でサポートする仕事なの。しばらくは清澄くんの専属だからよろしくねー》
「え!そうだったんですか、よろしくお願いします!!」
いつも事務仕事で一緒だった時くらいしか会わなかったから、一体何をしていたんだろうと思っていたけど…なるほど。オペレーターなら納得がいく。
いやぁ、それにしても頼もしい人が就いてくれたなぁ……!
銀八さんとは比べ物にならない程の安心感だ。
──そういえばさっき『しばらくは清澄くんの専属』と言っていたが、それよりも前は別の人のオペレータだったのだろうか。
だとすると僕よりもはるかに現場経験があるはず……
これは、聞いてみるしかない。
そう思い立ち、僕はメガネ先輩に事件についてアドバイスをもらうことにした。
「実は、今調べている事件についてなんですけど──ということで、犯人の特定がほぼ不可能なんです。何か、いい案はありますか?」
「うーん……これは、証拠も痕跡も無いようじゃぁ正直こちらから探しに行くのは不可能だろうね。」
「そんなぁ…」
やっぱりだめか。やはりそう簡単に犯人を特定するのは難しいらしい。
なら、どうすればいいんだ。この事件を解決する方法はないというのか……
僕がそう諦めかけていた時だった。
「でもね清澄くん。こういう時こそあえて逆を行くのもありじゃない?
『行く』のではなく───『待つ』ってね…」
「先輩それってどういう…!」
《おおっと!ここから先は清澄くん、君自身が考えるんだ!頑張れ若者よ!》
いやあなたも若いでしょう、20代後半ですよね。
と言いそうになったのは置いといて、先輩から貰ったヒントをもとに僕は考えを巡らせる。
『待つ』って言ったってどうして、なぜあえて『待つ』のだろう。
今までに聞いた情報を思い出すんだ僕!!
僕は全神経を脳に集中させ記憶の断片を呼び起こす。
お年寄り──
目撃証言──
監視カメラ──
……!!
なるほど…!これならもしかすると、本当に犯人が見つかるかもしれない!!!
「ありがとうございますメガネ先輩!必ず…ッ!必ず犯人を捕まえて見せます!!」
《えぇ?私はちょっとアドバイスしただけだよ?》
そうすっとぼけるメガネ先輩。とんでもない、99%あなたのおかげです。
…よし!そうと決まれば行動だ!!
「じゃあまずはメガネ先輩にやってほしい事があるんですけど──」
と、その時であった。
「すいませぇ~ん、戻りましたぁ~!!」
と後方で大きな声が夕方の住宅街で大きく響いた。
振り向くとさっき途中でその場から離れていた銀八さんが見える。
「あ、よかった。戻ってこれたみたいで……」
そう独り言をつぶやいた時である。
ふと彼女の頭上に目をやった。
──最近目が悪くなったのかな。何か文字がみえるぞ?
最初それは、目が悪くなったことによるただの『ぼやけ』だと思っていた。
しかし、それは彼女が近づくにつれ、だんだんしっかりクッキリと見えるようになる。
『銀八 ともえ 5月22日誕生 21歳 女性 O型 153cm 40kg【もっと表示】』
──いや、待て。待て待て。待て待て待て待て……
「なんでまだ!わけわかんない機能が残ってるんですかぁ!!!!」
「えぇ、なに?何が残ってるんですかぁ?」
まだ完全に日が沈まない秋の初め。
僕の叫びと彼女の怯えた声は夕暮れの住宅街に消えていった───
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