C6.9 足場固め ― 9 ― 魔王と星3の魔導師
あの魔導師、見た目は90歳でも通じそうな程萎びているが・・・あれでまだ60歳でしかない。
禁呪・外法の類で色々擦り減らしているようだ。
マナ・オドの流れが壊れているのであれば、私の力で何とかできるかもしれないが・・・。
それにしても、記憶を見てみたが碌な人生を歩んでいないな。
強い記憶以外にも、殆ど裏切られてばかりの人生だ。
そう言えば私の事を知っていると言っていたな。
私が学院に居た頃とも被るのか。
・・・噂話に上がる程目立っていた覚えは無いんだがな。
そのあたりも記憶を探ってると確かに出てきた。
才覚には見張るものがあるものの扱い難い生徒、として・・・。
む?お師匠様も出てきたな・・・まぁ当然か。
専門が違うから余り絡みは無いようだが・・・。
たまの会話でお師様が私の事を褒めちぎっている・・・ちょっと・・・いやかなり恥ずかしい。
あー・・・いや、彼の魔導が構築される様子を探ろう、うん。
・・・これは・・・芸術的、と言っても過言では無い美しい術式。
この魔導師には一度師事してみるのも悪くないな。
・・・
・・
・
「いやはや・・・近くで見ると・・・凄まじいものですね。」
死にかけた老人にしか見えない星3の魔導師は、嘆息しながら私を前にした感想を述べた。
「世辞は要らん。」
「世辞ではありませんよ、本心です。
ご存知でしょう?」
確かにこの者が提供した主従契約は、記憶やら心の中が主に筒抜けになる。
ある種、危険極まりない魔導だ。
「こんな危ないものばかり扱っているから寿命を削るのではないか。」
「自棄になっていたことは否定しません。」
禁呪・外法に手を出したがための結果であることは自覚しているようだ。
「一つだけ聞きたいことがある。」
「それが私の私怨に関することであれば、いいえとだけ。
ちなみに魔王様の心を読んだわけでは無く、不敬ながら牽制させて頂きました。」
「約束、か。
私には分からない感覚だな。
ということは、私はもう人の心は持ち合わせていないのかもしれないな。」
「それは無いでしょう。
そもそも魔族を統べる王であれば、一個人の私怨など気にしません。」
「分からんぞ?
恩を売って従属を更に確たるものとするかもしれん。」
「裏切れば死をもたらす主従契約下で、ですか?」
・・・中々に食えないな、面白い。
それだけに残念だ。
この者のマナやオドの流れは正常。
生命力だけが尽きかけていて、私にはどうしようもない。
「本題に入ろうか。
先程そこの闇エルフがお前に見せたインプ、いやデーモンか。
私はそれを召喚したのだが、まるっきり門外漢でな。
補助を頼みたい。」
「頼まれずともご命令下されば・・・」
「私はお前の召喚魔導の芸術的センスに敬意を払っている。
これは師事したいという申し出と思ってくれて良い。」
「勿体ないお言葉で御座います。」
星3の魔導師は深々と頭を垂れる。
「ではもう一度あの子を良く見てから、それから魔王様の術式を見せて頂きましょう。」
「分かった。
それが済んだらそのまま地下の実験場に案内してもらえ。
デスロード、お前は前回と同じ準備を。」
「かしこまりました。」
これでようやく召喚魔導が軌道に乗ることになるな。




