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C6.appx12 某子爵

― 帝国内、某子爵領


「糞が!どういうことだ!」


「どうもこうも、例の第4皇子ですよ。」


「くっ・・・しかし前回のは間に合わないはずだったろうが!?」


「ええ確かに。

 あれは何者かに邪魔されたとしか思えませんな。

 その前後で幽鬼の駆る、死を思わせる戦車が夜な夜な走り続けていたと言う話を聞いております。

 丁度その噂を辿ると、その直線上にあの村が存在しておりました。」


「では何か?魔物が獣共を守ったとでも言うのか!?」


「恐れながらそうとしか・・・そして今度は第4皇子。

 となると以前の様な手は使えませんな、烈熊子爵殿。」


ギリギリと歯噛みする主は猛熊伯の子、俗に小熊子爵と呼ばれる貴族。

猛熊伯を大熊伯と称すなら、子は小熊子爵と呼ばれるのだが、その響きを嫌って自らを烈熊子爵と呼ばせている。


この烈熊子爵、自身の軍を率いるようになったのは、帝国が基盤を安泰の物とした後の事であったため、活躍の場が与えられる事はなかった。

で、あるのに関わらず子爵の地位を得ているのは親の威光、それもあるだろうが“とある”功績からと言うのが大きかった。

それは帝国内の内乱や反乱分子の掃討の功である。

何処からともなく反乱分子の情報を嗅ぎつけ、事ある毎にその芽を摘み取ってきた。

その理由は列熊子爵こそが、その反乱をそそのかした張本人であるからだ。


もちろんそそのかした相手の中には屈強な者達からなる反乱軍もあったが、圧倒的武力を持って押し潰してきた。

武でのし上がって来た猛熊伯の血を色濃く受け継ぐだけあって、小熊、もとい烈熊子爵もまた、有能な武人であった。


今回は帝国内でも身分の低い獣人の村を襲い、いずれ殺されるかもしれないという疑心暗鬼を植え付け、やがて武で立ち上がる事をそそのかすつもりであったのだ。

そして獣人擁護の第4皇子の立場を、獣人の決起反乱という絶好の攻撃材料を用意する事で地に落とす、そういう計画だった。


(反りの合わないあの糞皇子に痛い目を見せるチャンスだった物を!

 糞っ!なんで俺はこうもついてないんだ!

 目をつけた女達は親父が全部掻っ攫っちまうし、奴隷も手に入れられんとは!)


迫害の対象であった獣人達は、生き残るためからか部族間、種族間の交流が盛んで、見目の良い者が多く居た。

烈熊子爵は襲うついでに奴隷狩りもするつもりであったのだが、コレも当てが外れてしまった。


(アレの母親も良かったが、親父に使われ続けて二目と見れない程に劣化しちまいやがった。

 アレはアレで、正妻に据えれなかったのが痛いな。

 俺が仕掛けたとはいえ、罪人の娘を正妻には出来ん。

 だから親父に反論できる余地が無かった、糞がっっ!!)


下手な言い訳でもしようものなら我が子であろうと斬り捨てる、猛熊伯のそんな傍若無人ぶりは内外に有名であった。


(次だ・・・次の手だ・・・!)


烈熊子爵の暗躍は続く。


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