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美少女(攻略対象)まみれのハーレム・スターウォーズ!!  作者: 呑竜
「第1部第6章:世界を流離うネコ!!」

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「その瞬間は近づいてきている!!」

 ~~~小山妙子こやまたえこ~~~




「……どういうことだ。小山」


 ひとり廊下を歩くあたしに、御子神が追いついた。


「さっきのあれは、いったいなんだっ」


 噛みつくような口調で聞いてきた。


「PTSD」

「……は?」


 あたしの答えに、御子神は訝しげに眉をひそめた。


「だからあれは、PTSDの発作だよ」


「……PTSDだと?」


「わかんないなら説明してやろうか? 心的外傷後ストレス障害。戦争帰還兵とか、大災害の被災者の人とかがなるやつで……」


「バカにするな。どんな病気かぐらい知ってる。どんな人がなる病気かも。だけど、あの(・ ・)新堂タスクだぞ? 無茶で無鉄砲で、どんな敵にも臆さず立ち向かう。勇気の塊みたいな男だぞ?」


「はいはーい、ノロケ乙ー」


「ちょ……違うっ! そうじゃない! これはあくまで客観的な見方であって……!」


 真っ赤な顔して必死に弁解する御子神に、あたしはひらひらと手を振った。


「逆に聞くけどさ。あたしほどじゃないにしても、あんただってタスクとは長いつき合いだろ? 今まで一度もなかったか? タスクの、ああいうの」


「……わからん」


「……マジかよ鈍すぎんだろ」


「や、その……っ」


 御子神は、慌てたようにわたわたと手を振った。


「なくはない……と思う。言われてみれば立ち合い稽古の時に、不意に棒立ちになる瞬間があったかもしれない。けど……だって……そこは、立ち合いだから……」


 ……なるほど。


「隙あり貰ったー、とばかりに容赦なく打ち据えたと。だからそれとは気づかなかったと」


 あたしはジト目で御子神を見た。


「隅々まで気のきく、たいした嫁候補だこと」


「だ……だって! そんなのわかるわけないじゃないか! あの(・ ・)新堂タスクだぞ!?」


 うん、まあ。


「……わからないとは、言わねえよ」


 あたしはぽりぽりと頭をかいた。


「しかたねえ、教えてやる」


 嘆息した。


「昔話だ。ちょうどあいつのご両親がいなくなった頃の話だ」


「……カラミティの最中だな?」


 御子神が慎重に確認してくるのに、あたしも重く首肯した。


「手形山のクレーターは知ってるか?」


「手形山……たしか県南の……」


「斜面に鬼の手形みたいな跡があるから手形山。昔はそう呼ばれてた。だけど今はそんな風には誰も呼ばない。手形山のクレーター。もしくは単にクレーター」


 周囲に民家のひとつもない、本気で何もない山中で、その戦いは行われた。

 多元世界人同士の、あるいは多元世界人と地球の古来種との戦い。

 それはとにかく激烈なぶつかり合いで、最終的に地形をも変えた。

 山がひとつ丸ごとなくなり、代わりにクレーターが出来た。

 直径400メートル級の、巨大なクレーター。


「かつて──その中心で、ひとりの男の子が発見された。他には誰もいなかった。政府の思惑もあって、情報は隠蔽されてるけど」


「それが旦那様だと……?」


「そうだ。そしてそれ以来、あいつのご両親は見つかっていない」


「それは……その……つまり……っ」


 御子神は真っ青になった。


「その時のことを、あいつはまったく覚えていない。けどそれ以降、あいつのあの発作は起こるようになった。それが事実だ」


 あたしはため息をついた。


 御子神は、答えの代わりに肩を震わせた。


「……そういうのはさ、成長と共に薄れてくもんだと思ってた。いつか時が経てば解決するもんなんだって。だけどそうじゃなかった。あいつはいまだに傷ついていて、ふとした拍子ににじみ出る」


「……どうすればいい?」


「抗うつ薬、抗不安薬などの安定薬の投与。だけどそれは、しょせんその場しのぎだ。根本を断つのがもっとも早い。持続エクスポージャー療法──問題に向き合わせて乗り越えさせる」


「向き合わせる……」


 言葉の意味を考え、御子神は悲壮な表情になった。


 ……そうだ、知ってる。 

 あたしもあんたも、その意味を。


「でも、肝心の旦那様自身が当時のことを覚えていないんだろう? 向き合わせるもなにも……」


「──ITである自分を守ってくれてたご両親を失ったこと。加えてその現場。クレーター。それ以外に、いったい何の証拠が必要だ?」


「……っ」


 あたしの畳みかけるような言葉に、御子神は束の間、言葉を失った。


「なあ、わかるか? タスクの夢は、多元世界を股にかける冒険者になることだった。ご両親を探したいなんて、一度も口にしたことがない」


「……」


「でもそれは、決して執着がないってことじゃない。単純に目を逸らしてるだけなんだ。だから直接の目標じゃなく、近い目標を口にしてた。『いたらついでに見つけてやるさ』なんてスタンスでいた。いなかったら悲しいから。極度のマザコンのあいつには、それはきっと、どうにも耐えられないことだから」


 ここのところ、タスクの周りではいろんな出来事が立て続いてた。


 クロスアリアとの契約書の中で、あたしがご両親探しに触れた。

 御子神の口から、自らの出自についてを聞かされた。

 戦いの中でトワコさんの技を意識した。乗り越えるべき存在として認識した。


 かてて加えて、いよいよ間近に迫った多元世界での冒険の日々……。


「どんどんその瞬間(・ ・ ・ ・)は近づいてきてる。あいつは気づいた。本心の部分で自覚した。今度こそ、逃げ場はない──」


「……っ」


 御子神は拳を握り、ごくりとツバを呑みこんだ。


「……ふっ」


 その必死さがおかしくて、あたしはついつい笑ってしまった。


「誰にも言うつもりはなかったことだ。あたしのタスク。あたしだけのタスク。この秘密はずっと、死ぬまで抱えていようと思ってた」


「なぜ……私には教えてくれたのだ?」


 御子神が、ぽつりと聞いてきた。


「そりゃあ……あたしは戦えないし、常にあいつの傍にいてやれるとは限らないし……。それに何より……」


 おまえは仲間だから──

 なんて、こっ恥ずかしいことはさすがに言えず。


「……なんとなくだ」


 あたしは言葉を濁した。


「なんとなく……?」


 御子神は、一瞬きょとんとした顔になり──ぽん、と思い当たることでもあるかのように手を打った。


「……あーあーあーあー、そうか、なんとなくか。なるほどな、なんとなくか。なるほどなるほど」


「なんだよ……そんなに繰り返すなよ」


 御子神はニヤニヤと気持ち悪い笑いを浮かべた。


「いやいやいや、意味はない。意味はないんだ。繰り返したくなっただけ。そうそれこそ……なんとなく(・ ・ ・ ・ ・)


「くっ……こいつ!」


 どや顔の御子神を、あたしは鋭く睨みつけた。


 だけど御子神は笑ってばかりで。 

 心底楽しそうに、声を高くして笑って。

 そのせいで。

 まるであたしたちが、仲いい友達同士みたいに見えた。


 






 ~~~コクリコ~~~ 




「大丈夫か!? 大丈夫かタスク!?」

「大丈夫だって! ただの長い立ちくらみだから!」

「ホントか!? そんな風には見えなかったぞ!? もっと深刻で、重大な……!」

「おまえの浪費癖よりは、よっぽど軽度の問題だよ!」 

「なんでここでそのことを持ち出すんじゃよー!?」


 コクリコは居間に残っていた。 


 もみ合うタスクとシロ。

 ふたりを横目で見やるカヤ。

  

「ふぅん……なかなか複雑な事情がおありのようですにゃ……」


 3人の様子を楽し気に見守っていた。


「でも……ネコ族の聴力を舐めるのは感心しないにゃ」


 同時に、二階から聞こえる妙子と御子神の話を聞いてもいた。


 ゆっくりと内心で、ひとり静かに、舌なめずりしていた。



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