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Rise Doll Online  作者:
第一章 Play Game!
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第十五話 ゴブリンの王 終

 戦闘開始から結構な時間が経ったと思う。すでにキングのHPが三分の一を切っている。

 しかし、俺達もかなり疲労が溜まっている。 


「はぁはぁ…ちとキツイな」

「あ、疲労回復ポーション切れたっす」

「私もあと二本しかないから一本だけだけど」

「ハァハァ…アオちゃん………良い匂い」

「アリス、お前は離れろ。てか、嗅ぐな!」


 皆が疲労困憊で頑張っている中、アリスが俺にひっついて服に顔をうずめて臭いを嗅いでいるのだ。

 この娘ゲームだからってタガ外れてませんかねぇ?俺はこんな子に育てた覚えはないんだけどな…


 アリスを引っぺがしながら、キングの様子を見る。キングは少し前から俺達から離れてこちらの出方を見ているよで、何もしてこない。

 何もしてこないのは好都合なので、俺たちは各自回復をしているのだ。


 でも、いつまでものんびりはしてられないだろうし、皆もポーションが無くなりつつあるしここら辺で押し切らないとキツイな。


 このまま物理攻撃だけで押し切るのは難しいだろうが、生身に魔法を当てることが難しいんだよな。唯一完全に露出している顔を狙っても腕で防がれてしまうのだ。


 攻撃の隙を狙ってみるのも一つの手かもしれないな。


「攻撃の時に隙ができるけど、結構シビアなんだよな。出来るか?」

「…もう少し、隙がある時間が有れば、行けると思う」

「よし、高威力の魔法を準備しといてくれ」

「アイ、とっておきいく」

「スズ、隙の大きい横なぎの後の縦振りを受け止めてくれ」

「うん、頑張る!」

「シュリとコウは俺達が抑えたら攻撃頼むぞ」

「おう、任せろ!」

「やってやるっすよ!」

「行くぞ」

「「「おおぉぉ!」」」


 スズが正面からキングに駆け寄り「挑発」を使いタゲを固定する。

 左右からシュリとコウが回り込む。俺はキングの左側に回り込み、腕盾のギミックを起動する。


 キングがスズに近寄りながら曲刀を振るう。その攻撃を盾で受け流し、「ステップ」を使いながら回避して隙の大きい攻撃を誘う。


 横薙ぎの攻撃を姿勢を低くしてかわして、直後に来る大振りの縦振りを盾をしっかりと握りしめて受け止める。

 「ギリギリ」と、鈍い音をたてながら盾と曲刀が擦れ火花が散る。


 スズが攻撃を受け止めたのを確認して、キングの左手にワイヤーナイフを投擲して上手く腕を絡め取り、引っ張る。

 すると、不意の事に対応できなかったのかキングは腕を伸ばし完全に無防備になる。


「今だ!」

「……ファイヤー・ハンド!!」


 長い詠唱が完了して魔法を発動すると、アリスの目の前に大きな赤い魔方陣が現れ、その中から火の腕が生えてきた。

 どうしよう、かなりキショイんだけど。


 その腕がキングの無防備になった頭に伸びて、その頭を掴むと握りつぶそうとしているようだ。


「やっぱり、生身は魔法に弱い。もう、少し……」


 握る事による継続ダメージと炎上の追加効果で、ガリガリとキングのHPが削られる。しかし、しばらくすると火の腕が霧散した。

 後ろを見やると、アリスが女の子座りでへたり込んでいる。どうやらMPが尽きたようだ。魔法クラスはMPが完全にゼロになるとしばらく動くことができなくなるのだ。

 

 アリスの魔法でレッドゾーンまで減ったHPを削り取ろうと、コウとシュリが左右からアーツを次々と放つ。しかし、キングもただやられているだけではなく、曲刀をスズの盾から離して横薙ぎに振るう。

 その攻撃を剣を構えて受け流すコウ。しかし、上手く受け流すことができずに後方に吹き飛ばされる。


「ぐっ…」

「大丈夫っすか?」


 片膝をついてうめき声を上げるコウ。足元には刃が半ばから折れた長剣が転がっている。HPもレッドゾーンまで減っている。

 直ぐに回復してやりたいが、肝心のアリスはMP切れでまだ復活していない。


 しょうがないので、ポーチからHPポーションを取り出しコウに投げる。コウがそれを受け取り一気に飲み干す。HPがイエローゾーンまで回復する。


 ワイヤーを巻き取りキングのバランスを崩そうとするが、キングもワイヤーの絡まった腕を引く。まるで綱引きのようになり、ワイヤーがギリギリと嫌な音をたてる。

 一か八かでさらに強く引くとワイヤーがブチッと切れる。


 完全に自由になったキングが今までの怒りを発散するかのように暴れまわる。

 その攻撃を制限しようとスズが再び「挑発」を使う。

 しかし、スキルが発動したはずなのにキングはスズだけではなく全員をバラバラに狙って攻撃する。


「何で!?」

「そんなの、うおぉ!?…知らねえよ、うわっ!?」

「と、とにかく回避に専念っすよ!」


 皆バラバラになって回避行動をとる。アリスは未だ動けないためスズが前に立って壁になる。

 コウは攻撃しようと一旦は近づいたが、キングの行動パターンが滅茶苦茶のため危なくて攻撃できないで離れる。

 

 キングがいきなり大きな口を開けて、耳を劈くような大きな咆哮が部屋中に響き渡った。

 その声で全員の体が硬直する。どうやらこの咆哮には動きを止めるバインド効果があるようだ。

 

 全員が動けないのを見計らってキングが動く。

 曲刀を投げ捨てて、壁に飾ってあった大きな黒い大剣を装備する。それ、ただの飾りじゃなかったのかよ…


 キングが部屋の中央付近まで来ると、大剣を大きく振りかぶる。その剣は赤い光を放っている。どうやらアーツを使うようだ。


「皆私の後ろに!」


 その事に気付いたスズが皆を呼び寄せ、盾を構える。


「護方陣、タフネス」


 スズが護術魔法の「護方陣」とクラスアビリティの【タフネス】を発動する。

 スズの体が一瞬赤く光り、盾の前に金色の魔法陣が展開される。

 スズの使った「護方陣」は装備している盾の耐久度の五分の一のダメージを防ぐ魔法の盾を展開する魔法だ。魔法の盾は前方に展開され、防御範囲は装備している盾の約二倍だ。

 アビリティの【タフネス】は短時間だが腕力と守りを上昇させるものだ。 


 スズの準備が終わると直ぐにキングのアーツが発動する。

 ただの上段からの振り下ろしに見えたが、地面に着いた瞬間に振動と共に半透明の斬撃なようなものがtんで来る。

 魔法の盾に当たった斬撃は、少しの拮抗の後に魔法の盾を砕きスズの元に迫る。その攻撃をスズが正面に盾を構え、踏ん張って受け止める。

  

 金属音が鈍く響く。スズが斬撃を受け止めているが、ノックバックしてHPがごっそり減る。

 スズが攻撃を受け止めてくれたので俺達に被害はない。キングはアーツの硬直か、動きが止まている。


  スズはアビリティの効果が効いているのか、殆ど疲れた様子を見せないがHPはイエローゾーンまで減っている。アリスがMP切れのため回復ができないのでポーションを渡す。


 スズがポーションを飲んでいる間に硬直が解けたらしく、もう一度剣を振り上げ赤いオーラを剣にまとわせている。もう一度アーツを放つ気のようだ。


「皆、アーツは十分回避できる。硬直を狙って一気に決めよう!」

「おう、やってやるぜ!」

「アイ、アオちゃん、抱っこして」

「…分かったから、そんな目で見るな」


 俺がアリスを抱っこすると、皆バラバラにキングの周りに散る。

 キングの目の前にはスズが棒立ちで立っている。何をする気なのか…


 キングが剣を振り下ろすのとタイミングを合わせてスズがキングに向かって走る。

 剣が地面に触れると先ほどと同じく斬撃が飛ぶ。その斬撃をジャンプして避けた。空中で綺麗に一回転して、着地の硬直をステップで消して振り下ろされたままの剣に飛び乗り、そのまま腕を伝ってキングの顔面に「シールドバッシュ」を放つ。


 スズの攻撃で思いっきりよろける。その隙を待っていたコウとシュリが素早く近寄りアーツを次々と放つ。

 俺も一応ケルベロスで攻撃に参加してみるが、減っているか分からないぐらいのダメージしか通らなかった。


「クロススラッシュ!」

「ヘビーブレイク!」


 二人の息の合ったアーツにより、ついにキングのHPがゼロになる。

 

『グアアアァァァ』


 耳を塞ぎたくなるほどの声を上げながら、キングが膝をつく。その衝撃を利用して剣を頭から抜いてみんなの居る所に着地する。


『おのれ…人間風情に我が敗れるというのか…』


 その言葉を最後に、キングの体が真黒な霧に覆われる。後には黒い焦げ跡のような物が残っているだけだ。


「やったか?」

「みたいだな」

「…ふぅ、流石ボスだな。結構苦戦したぜ」 

  

 少しすると目の前に半透明のメニュー画面が出てきた。どうやらボスのドロップアイテムのようだ。武器や防具、王冠などの装飾品の他に気になる物があった。


 皆に断りを入れてアイテムポーチに移す。ポーチから取り出したものは真黒な、俺の顔ぐらいもある大きな玉だ。

 何か仕掛けが無いか調べるが、特に何かあるようには見えなかった。

 ふと思い出して「鑑定」を使って調べる。


「黒の結界玉」

・禍々しい力が封じ込められている玉。

 

 たった一行だけの説明文だけで、レア度や効果などは何もわからなかった。

 玉をしまい、ドロップの取り分を相談している三人を横目にアリスの元に行く。


 アリスは恥じらいも無しに足を広げてMPポーションをチビチビと飲んでいる。

 今回アリスには回復と補助と攻撃と三役をやってもらったし、体力が皆より無い分かなり疲れたようだ。 

 

「あら、向こうであの子たちと分配に参加しないの?」

「ん?…あぁ、面倒臭いからな。それにほしいものも特に無いしな」

「はぁ、ほんっとうに欲が無いわね」

「そうだなー」


 少し呆れ気味にため息をつくアリスを見る。

 このゲームは言語を自動翻訳する機能が働いているので、アリスの母国語でも普通に通じるのだが、皆の前ではあえて日本語で話しているようだ。

 まぁ、アリスにも何か理由があるのだろう…多分。


 そんな事を考えながら、アリスの横に座ってスズ、シュリ、コウの様子を眺める。

 しばらく何か話をしていたが、しばらくすると三人ともホクホク顔で俺達の方を見る。どうやら分配が終わったようだ。

 そろそろ帰るかと思い、アリスを立たせて三人の所に歩いて行く。

  

補足


・クラスアビリティ:各クラスのみ使える特別なスキル。


・魔法について:前衛職でもあるスズの護術士の使う魔法の「護術」は詠唱が無い代わりに再使用時間が長い。


表示について



スキル・魔法・アーツ「」

クラスアビリティ【】

に統一していきます。紛らわしいかもしれませんがご了承ください。



ついでに今現在のアオのステータス


アオLV15 

種族:人間

M銃士LV15

S鍛冶師LV15


HP:1380

MP:285

TP:660


腕力:10

強さ:10

体力:10

賢さ:10

精神:10

素早さ:10

運 :10


固有スキル:【絶対防御】


スキル:【体術LV6】【生活魔法LV8】【鑑定LV10】【言語LV4】【鷹の目LV1】


ステータスは上げていません。鷹の目は使っていないので上がっていません。葵は元々かなり視力が良いのを忘れていたようです。天然だね!

リアルの葵の視力はマサイ族も目が点になるほどです。


参考にスズのステータスをどうぞ


スズLV20 

種族:人間

M護術士LV20

S剣士LV20


HP:2050

MP:500

TP:860


腕力:80

強さ:120

体力:60

賢さ:30

精神:70

素早さ:80

運 :63


固有スキル:【再生】


スキル:【盾LV14】【鎧LV18】【片手剣LV12】【ステップLV19】【注目LV15】【挑発LV16】【剛腕LV12】【踏ん張りLV13】【魔力LV10】【眼力LV14】


*【注目】はヘイトを上げるものです。

 【眼力】は発動時に、一瞬だけすべての動きがゆっくり見えるものです。心眼の下位です。

 固有スキルはまだ秘密です。

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