第十三話 ダンジョン Ⅴ
お待たせしました(*‘∀‘)
いや、PC壊れるとか予想外でした。これからはなるべく早く投稿します。
目の前の鉄の扉を力を入れて押すと、錆び付いた音をたてながらゆっくりと開いた。
扉の先は天井が崩れて、日の光が差し込んでいる。部屋の丁度中央に椅子に座った影が見える。
敵の名前は「ゴブリン・キング・ゾンビ」だ。他のゴブリンよりも一回り大きく、ボロボロになっているが頭には冠を付けている。LV22と雑魚よりも少し強い程度だ。ゾンビだからか動きも遅く防御も脆いので苦戦はしないだろう。
俺が部屋に入ると「バタンッ」と、後ろで扉の閉まる音がした。
後ろを振り向くと、入ってきた扉が閉じていて他の三人の姿が見えない。この前はソロだったから気付かなかったが、ここのボス?戦はソロでやらなくてはいけないようだ。
前回は時間的にも余裕だったので、普通にやったけど今回は時間が無いから速攻で終わらせるか。
確か、この敵は戦闘前にだらだら話をするんだよな。
アイテムポーチの中を探るが、生憎片手剣しかなかった。
まぁ、しょうがないか。ポーチの中から黒い片手剣を出し、抜刀術の構えを取る。呼吸を整えて集中する。
「抜刀術 零の型 一文字」
足に力を込めて、地面を思いっきり蹴って椅子に座っている影の目の前に飛ぶ。
すれ違いざまに抜刀し、加速の勢いを利用して剣を思いっきり横一文字に振るう。確かな手応えと共に後ろで「ドス」と何かが落ちる音がした。
振り返ると石でできた椅子と共に上半身が地面に落ち、光の粒になって消えていく。納刀しようとしたら剣が半ばからポッキリ折れていることに気が付いた。流石に普通の直剣で抜刀術は無理があるな、やっぱり刀が欲しいな。
背もたれが半分に切断された石の椅子の上にある銀色の鍵を取ると、背後で鈍い音をたてながら扉が開き三人がなだれ込んでくる。
「おぉ、やっと開いた」
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「あぁ、俺は大丈夫だが…問題があることに気が付いた」
「…どういう事っすか?」
「時間が無い…と言うか、後五分弱なんだが」
コウがポケットから銀色の懐中時計を取り出し時間を確認している。このゲームは無駄にリアルに作ってあるせいで時間もプレイヤー各自で確認するしかないのだ。町には大きな時計塔や、各店などに時計があるが外での時間確認のために時計を持つのが基本だ。
「うわ、マジで時間ねえよ。こっからどれ位かかるんだ?」
「普通に行けば十分以上はかかるな。まぁ、急げば間に合うはずだ」
「なら早く行くっすよ」
皆でそそくさと部屋を後にして、もと来た道を引き返す。
コウが先頭になり、俺がアリスを背負って最後尾を走る。時間がやばいのが分かったからか、皆薄暗い通路を全速力で走る。心なしかアリスが必要以上に密着している気がするんだが、気のせいとしておこう。
「あの穴に落ちるが、少し高いからダメージあると思うけど、死なない……と思うし思いっ切り飛べよ」
「おい、また落ちるとか言うのか?」
「そうだけど…大丈夫だ死にはしないよ……多分な」
「おい、今なんて!?」
穴の前で急にコウが止まったので、後ろのスズが足を止めるがシュリは勢いが殺せずに二人に体当たりする形で三人共穴に落ちて行った。
「うをぉ~~」
「キャァ~」
「おぉ~~、バンジーみたいで結構楽しいっすね」
三人の愉快な会話が穴の中からする。その後を追うようにして、アリスをお姫様抱っこしてそのまま下に降りる。
本当は降りるための階段状の溝が壁に彫ってあるんだが、ゆっくりそこを降りる場合でもないだろう。
数秒すると下の方でやっぱりと言うかなんというか、コウのうめき声が聞こえた。足元を見ようにもアリスをお姫様抱っこしているので足元が見えない。コウ…上に落ちたらごめんな。
「お…重い」
「もう、コウったらこんなかわいい乙女に向かってその言い草はないっすよ~」
「あ、御免なさいコウ」
「そんなこと言ってないで、早く退いてやれよな」
無事に着地した俺の背後でコウの背中に馬乗りになっている妹をチラリと見やる。下敷きになっているコウも上に載ってるのが一応女の子だからか、下手に動けないでいる。
コウが特殊性癖な奴じゃなくて良かったな。
しょうがなくアリスを下して二人の首根っこを掴んで立たせると、コウが呻きながらも起き上がる。
「ここまでくればもう少しだ、時間がぎりぎりだし走るぞ」
「うい~」
「アイ」
「お…おう」
今度は俺が先頭になって通路を走る。通路の左右には松明が有り、その明かりが薄っすらと行く手を照らしている。
そのまま少し走ると開けた場所に出る。足元には白線のようなもので複雑な文様が描かれている。
全員がその文様の上に立つと、青く発光して不意に視界がぼやける。次の瞬間、さっきまで居た広場とは違う、豪華な作りのホールに立っていた。
目の前には大きな鉄製の扉がある。その扉の前面に豪華な装飾が施されている。
この扉の先が、ボスである「ゴブリン・キング」のいる王の間だろう。
扉にそっと触れるとシステムアナウンスが聞こえてきた。
『ダンジョン攻略タイム:二時間五十八分』
「お、どうやら間に合ったみたいだな」
「うげ~疲れたっすよぉ」
「時間はもう大丈夫だし、少し休憩してからボス戦かな」
「う~、お腹すいたっす」
「しょうがないな、ほら」
結構キツイ道のりだったので皆疲れ果てているようなので、ポーチから各種ポーションと屋台のサンドイッチにジュースを取り出す。
「お前、どんだけ持ってきてるんだよ」
「ふっ、ポーチの半分は食料だぞ」
「んぐ、はぐ…」
「アイ、このサンドイッチのソース、美味しい」
「…もぉ、二人とも」
速攻でサンドイッチに豪快に齧り付くシュリ。シュリとは違い、アリスはぱくぱくとし味を確かめながらゆっくり食べている。少し呆れながらもスズとコウも食べ始める。
ポーチの中からついでに焚き木用の薪も取り出し、アリスに魔法で着火してもらう。
焚き木を囲んでゆっくりと体の疲れを取る。こんな風に皆でゆっくりするのも良いものだな。まぁ、しいて言うなら、こんな暗い室内ではなく森や草原で星を見ながらがいいな。
十分に休憩して、それぞれ準備をしている。俺の方はケルベロスの残り弾数が四十発しかないのが、少し心配ではあるが…まぁ、弾が無ければ殴ればいいさ。
皆は武器の確認やアイテムの整理などをやっている。
「よし、準備は良いな?」
「おkっすよ」
「うん、大丈夫だよ」
「アイ、問題ない」
「同じくだ、んで作戦とかあんのか?俺は特に何も考えてないからな」
「おぉ、作戦だが…敵の情報が無いから基本で行くぞ。臨機応変に立ち回ってくれ」
コウが言う基本とは、盾役が敵の目の前で注意を引きアタッカーが盾役と入れ替わりながら攻撃。後衛が周囲の警戒と前衛のチェンジの隙を埋めるための攻撃するのが基本のパーティでの戦闘スタイルらしい。
「んじゃ、行くか」
コウが扉に力を入れると、ゆっくりと扉が開いていく。