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平凡だった私が生まれ変わったら森の神様に好かれ龍人に愛される物語  作者: 茜雫桂香


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15/23

明かされる過去

 体は動かないので、視線だけを動かし場所を把握しようとするが、そもそもフィリアの家と商店街しか知らない私は、見てもここがどこだか分からない。

 石柱の頭飾りには、童話で見るような龍が彫刻されており、壁には金縁の装飾が施され、豪華な屋敷内に見えるが燭台の炎が揺れるたび石壁に伸びた私達の影が不気味で怖い。

 何度か階段を上り、奥へ奥へと進み続けると、大きく聳え立つ両開きの扉の前に立ち止まる。扉には大きな一匹の龍が彫刻され、瞳には赤い宝石が埋め込まれていた。


「お連れいたしました」


 私を抱えていた兵士が大きな声で扉越に伝えると、ゆっくり片側だけ扉が開く。中から執事の格好をした年配の男性が顔を出し、小さく手で入るよう促す。

 私を抱えている兵士だけ部屋に入ると、そこは寝室のようだった。

 部屋の中央に四本の柱から垂れ下がる厚手のベルベッドのカーテンが外界を遮断するように囲われた大きなベッドがあり、一面だけカーテンは開けられていた。少しベッドから離れた所には壁に埋め込まれた暖炉に炎が部屋を照らす。明かりは暖炉のみだった。

 厚手のカーテンには壁と同じ金縁の刺繍が施されていたが、今が夜なのか朝なのか分からないほど外の世界から遮断されている部屋だった。

 床に転がされ、毛布を解かれた。ようやく芋虫状態から脱皮できたが、体は相変わらず動かない。視線だけでベッドに上半身だけ起こしている男性に向ける。


「…」


(冷たい目)


 黒く長い髪に、光が一切入っていない黒い瞳。暖炉の橙色の明かりが、ぱちぱちと音を立て照らされているのに、雪のように白い肌は血が通っていないように見える。ただ見上げている私に男性は口を開いた。


「お前…なぜ逃げた」


(…逃げた?どういうこと)


 意味が分からず眉を顰めると、男性は、ああと納得したように


「そうだ、お前は記憶がないんだったか」


 冷たく抑揚のない話し方に、体が固まる。


「…教えてやれ」


 そう一言告げ、視線を執事に移すと、一礼した後、床に転がされている私へ片膝をついて執事が話し出す。


「貴方はパルフィ様に買われた身なのです。つい半年ほど前ー」


 執事の話は全くもって記憶にない話で、現実味もなく自分の話をされている実感がなかった。

 私は半年程前に奴隷を買える裏商館で見つけられたという。

 私の姿は歌えばどんな病も治せると言われているニュムペー族にそっくりで、パルフィ様の病を治すために買ったという。

 ただ、声が出せず毎日発生の仕方や言語を教え込んでいた矢先、失踪したと。

 執事の説明が終わると、パルフィは冷たく試す様に私に言う


「…それで、歌えるようになったか」


(今も…言葉すら思うように発せないのに)


 そう告げたら殺されるのではないかと思うほど、冷たい瞳に息をのむ。


「…」


 私が声を出そうと口を動かすと執事が額に指を当てて


「闇よ、無力効果を解除せよ」


 そう唱えると体がふっと楽になった。そして自由に体が動き、転がっていた体を起こして床に座りなおす。話しやすくしてくれたんだろう。


「あ…あの」


「歌え」


 私の言葉を待たずに温度のない言葉が突き刺さる。


(歌えない)


 押し黙り唇を噛み締める私に察したのか大きなため息を吐き、片手でひらひらと去れと合図する。

 すると執事が立ち上がり、見下ろしながら


「それでは…また稽古を続けましょう」


 その一言で、先ほどまで壁に徹していた兵士が私を抱え上げる。


「い、いや」


 小さく抵抗しても軽々持ち上げられる。


(どうしよう!どうしよう!)


 蘇る、目覚めた時の姿。足に枷をさせられ傷だらけだった。恐怖で体が小刻みに震えた。必死に頭を巡らせる。


(そうだ!回復魔法で!)


 私は思わずパルフィに向かって両手を向ける。突然の動きに少し目を見開いたパルフィ。


(願え!回復魔法!!)


 ぎゅっと瞼を瞑ると、光が部屋を包み込む。強い光に全員が瞼を強く握る。


「はぁ、はぁ」


 いきなり力いっぱい魔法を放出したせいで、体がどっと重くなる。肩で息をする私に全員が視線を向ける。するとパルフィは


「お前…魔法を使えたのか」


 驚いた様子で放たれた言葉に知らなかったのかと、慌てて口を結ぶ。


「パルフィ様!!お体は!」


 執事が駆け足で体を調べる。兵士も抱えたまま見守る。

 しばらくすると、残念そうに首を横にふる。


「はは、それはそうだ、国一番の回復魔法すら効かなかったんだからな」


 乾いた笑みが部屋に響き、先ほどよりも鋭い視線が私へ向けられ


「封印器具を付けておけ、効かない魔法など無駄で煩わしい」


 そう吐き捨てられ、私は連れていかれた。

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