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【コミカライズ進行中】夜会で「婚約破棄しよう」という常套句に呆れて振り返ったら、双子の愚兄だった件。  作者: 織子


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72/72

Episode.72(終幕)



バルコニーの椅子に腰かけ、夜風を感じながらミネルバは左手を掲げた。婚約の申し出の際に贈られた、ヴァイオレットサファイアの指輪が薬指で輝いている。


(この贈り物、どんな意味があるのかしら)


婚約の際にアクセサリーを贈る風習は帝国にはないが、何か意味がありそうだった。ミネルバが指輪を右手に嵌めようとすると、左手にしてほしいと言って来たし、指輪が左手の薬指にはまるとシリルはとても満足そうに微笑んだ。


指輪をしげしげと眺める。シリルの瞳より少し明るい紫色だが、陽の光にあたるとシリルの瞳がこのような鮮やかな紫色に変わることをミネルバは知っている。にやにやと眺めていると、シリルが飲み物を持って戻って来た。


「気に入りましたか?」


振り向くと、シリルが立っている。あまり見る事のない、満面の笑みに近い微笑みを携えて。シリルはにこにことミネルバにグラスを差し出した。見ているこちらも照れてしまうくらいご機嫌だ。


「ご機嫌ですね」


思わず口に出してしまった。シリルはきょとんとして、またすぐ蕩けるような微笑みを浮かべた。


「それはもう」


その、破壊力たるや。


(か、可愛いわね)

何故か怯みながらミネルバは堪えた。そしてふと気付く。


(あ、そうだわ。想いを伝えあったのだから、もう堪えなくていいのよ)


とはいえ、この溢れそうな"愛しい"をどう表現すれば良いのかわからない。ミネルバは渡されたグラスを一旦置き、両手を広げた。


「ん?」


シリルが再度目を見開く。一瞬固まったものの、すぐに自分のグラスも置き、ミネルバを抱きしめた。


「どうしました?」

シリルがミネルバに聞いた。その声はこれでもかという程、甘く聴こえる。


「えっと……あふれそうで……」

自ら求めておきながら、恥ずかしくなり顔をそむけた。


「ふふ、俺も溢れそうな気持ならたくさんあります」

シリルはそのままミネルバを抱き上げ、先ほどまでミネルバが座っていた椅子に腰かけると、ミネルバを自分の膝の上に乗せた。


ミネルバは思いもよらぬ展開にぱくぱくと口を動かす。


「……っ重くないですか?」

「いいえ全く?」


前にも似たことがあった気がする。とりあえず恥ずかしいので降ろしてほしい。そう言おうと、口を開きかけると、ゆっくりとシリルに塞がれた。一回、二回と、口づけを交わす。先ほど苦しいと言ったからか、シリルは三度目で躊躇している。


ぼうっとしたままミネルバは聞いた。

「もう、しないのですか?」


そう言うと、シリルはびくりと身体を揺らした。そしてじとりと睨まれる。熱の籠った暗紫の瞳に見つめられると、ミネルバの思考はうごかなくなってしまう。


シリルは苦渋の決断をするかのように苦々しく言った。

「……したいのですが、これ以上は貴方の唇が腫れてしまいそうで……!今日は我慢します」



そう言って自分の膝からミネルバを降ろし、ふわりと椅子に座らせると、シリルはグラスをグイッとあおり、短く息を吐いた。

そのしぐさが艶めいて見え、ミネルバは目を逸らした。


「名残惜しいですが、皇太子殿下に呼ばれているのでもう行かなくてはなりません」

顔を上げると、心底嫌そうな表情のシリルの顔がある。先ほどのご機嫌な顔との落差がひどく、ミネルバは微笑った。すかさずシリルが見咎めて言う。


「ん?ミネルバは俺が去っても悲しくないみたいですね」

拗ねたような口ぶりに、更に可愛くて微笑ってしまそうになるのを堪えた。


「そんなことありません。次はいつ会えますか?」

「明日にでも」

「えっ」

「明日、子爵邸に伺います」


間髪入れず答えたシリルに、ミネルバは驚いて言った。

「でも、お忙しいのでは?」


シリルはミネルバの左手を取り、指輪にキスをした。


「俺はミネルバに二度、一目ぼれをしています」

「え?」


二度?それは一目ぼれと言うのだろうか?

唐突なシリルの告白をミネルバは呆然と聞く。


「一度目は、アカデミーで迷っていた時。二度目はあの夜会で。二度も一目ぼれをした令嬢に、婚約を受け入れてもらえたんだ。気の変わらないうちに話を固めておかないと」


そう言ってシリルがにやりと笑う。どこからかライナスの小言が聞こえて来そうだ。


「ライナスを置いていきます。もう少ししたら子爵が来られるので、気を付けておかえりください」


ライナスが一礼して入って来た。ここでの会話は聞こえなかったはずだが、なんとなく恥ずかしい。


「それではまた明日に」


シリルはミネルバの額に軽くキスをした。人前でそんなことをされると、さすがにミネルバも狼狽える。赤くなるミネルバを見ながら、シリルは満足そうに出て行った。



「これから苦労をおかけすると思いますが、なにとぞ主をよろしくお願い致します」


ライナスの抑揚のない声に、ミネルバは額をおさえたまま頷いた。











読んでいただきありがとうございます。本編はとりあえずここで一旦終わります。

ここまでたくさんの読者の方に読んでいただき、とても嬉しく思います。


そして昨日もご報告しましたが、たくさんの方の応援のおかげで、コミカライズ企画進行中です。こちらもまた進展がありましたら活動報告にてご報告させていただきます。



❀以下宣伝です。読んでいただけると嬉しいです。❀


【幸せな10年でしたが、なかったことに致します~だから私に関わらないでください~】の投稿を再開致しています。こちらも読みに来てくださると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
 せめて、せめて……愚兄がきっちり罰をくらう回をッ!(*・ω・)*_ _)ペコリ
完結おめでとうございます!2人のもう少し先のお話も読んでみたかったかな〜。また、番外編などあればお願いします!コミカライズも楽しみですね!気持ちがあったかくなる作品をありがとうございました!
面白かったです。 男性主人公の異世界恋愛を久しぶりに読めて楽しかったです。 本人はそうでなく感じていたでしょうが、周りから見たら無双状態で安心感ありました。出来るならもう少し魔道具で活躍するシーンや結…
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