17 応戦
『道士。それは古代の東洋で道を極めようとする者達の事だ。彼らに関しての詳しい事は時の流れと共に色々失われたが、今でも一種の畏敬の念を抱かれている、はずだがな。噂では不老不死を目指す者もいたとされるが、この男はそんなものには興味はない。彼の通る道に残るのは死のみだ』
「ヨエル!人とは戦えねぇだろ!ここは任せてくれ!」
「ああ。だが、支援ぐらいは出来る」
ジョセフが金属製の脚の付け根にあるボタンをズボンの上から押すとギュインギュインと何かの駆動音が鳴り始める。
戦闘態勢に入ったようだ。
それを聞き取った道士の男がこちらに向かい銃を乱射する。
しかしジョセフは目に留まらない速度で弾丸を避ける。
「サイバー手術を受けてんのか」
男は吐き捨てるように言う。
ジョセフは一気に男との距離を詰めると電光石火の前蹴りを食らわす。
それを腹部に受けた男は大きく後ろに飛ばされる。
ジョセフは帽子を整えながら軽い調子で口笛を吹く。
「どうだい?中々のもんだろ?」
「ぐっ」
男は相当な痛みに我慢しながらジョセフを睨めつける。
男は懐から丸い物体を取り出すと地面に投げ捨てる。
その物体からは大量の煙が噴出される。
スモークボムか。
「なんだ、道士さんにしては随分と科学に頼るじゃねぇか」
男の姿を見失ったジョセフが一旦距離を置く。
ジョセフは俺の方を一瞥すると頼むと言い残し、煙の中に突入する。
「■■·■■■」
俺は呪文を唱え、両手を叩く。
すると突風が起き、男の煙幕を吹き飛ばす。
男は若干の驚きを露わにするが既に迎撃の準備は整えている様子だ。
再度前蹴りを食らわさんとするジョセフに対して男は蛇の如く唸りを持つ剣を振るい、ジョセフの脚を切断しようとする。
ジョセフは途中で前蹴りを止め、弧の動きを加え、ブラジリアンキックと呼ばれる蹴りに変更し相手の斬撃を避けながら、男の頭部を狙う。
しかし男は状態を後ろに反らして避ける。
ジョセフは蹴り脚が地面に付くと勢いのまま身体を側転させ、男の手の剣を叩き落とさんと剣の腹に向かい回し蹴りを放つ。
意図を読み取った男は剣を軽く上空へ投げると、もう片方の手で銃をジョセフに向けて撃つ。
ジョセフの脚の駆動音が一層高く鳴ると常人離れした速度で横に飛ぶ。
「中々やるじゃねぇか」
ジョセフは男から距離を取りながら相手の動きを褒める。
男は落ちてくる剣を手で掴む。
「常人なら最初の前蹴りで内臓がイかれるんだけどなぁ」
ジョセフは頬を掻きながら呟く。
それに対して男はジョセフを睨みながら口を開く。
「バカ協会には色男気取りのスピードスターがいるとは聞いていたが、おめぇの事か」
「おっ、良い男の噂は広がるもんだな」
「言ってろ。その両足を切り落としてやるよ」
男は懐から再度なんらかの機械を取り出すが俺もすかさずに懐から短剣を取り出し男の機械に投げ、突き刺す。
「やるじゃねぇかヨエル。今度ダーツで勝負でもするか?」
「集中しろ、ジョセフ」
ジョセフはヘイヘイと俺の忠告を受け流す。
男は舌打ちを打ちながら両手を地面に置く。
「お?降参かい?」
「メイメイ、来い」
洋館の中からガシャンと大きな音が鳴るとその後何かを破壊しながら突き進むような音が鳴り始める。
次の瞬間、洋館のドアが破壊され、一人の少女が現れる。
赤と青を基調とした東洋風の服装、長袍を身に纏い、その両の腕と脚はその少女の体格には相応しくないほど巨大な機械で出来ていた。
顔はなんらかの札が貼られており上手く認識出来ない。
「さぁバカ共、これで2対2、仕切り直しだ」
「これは後でシロちゃんに怒られるな」
呑気なジョセフとは裏腹に新たに現れた少女の異質さに俺は警戒を高めた。




