25 対談の終わり
『黄衣の王との対談は実に風変わりだった。彼は俺を通して我らが主のお考えを理解しようとした。しかし、主のお考えは誰もが知ろうとし、誰もそれを達成する事は叶わない。代わりに彼は一つの信仰の形を提示してみせた』
黄衣の王は俺を見つめ、再度、問う。
『生きたいか?何か成したいことがあるのか?やり遂げたい事があるのか?』
俺は暫く考え込む。
死にたい訳ではない。
主がこの地に俺を送られた訳がきっとある筈だ。
しかし、その答えは未だに出ない。
「…分からない。唯、まだ死ぬ訳には行かない。そう感じている」
『訳も分からず生きるか。それは果たして生きていると言えるのか?』
「だからこそ生きるのだ。迷い、自立する為にきっと主は余計な介入をなさらない」
俺は既に黄衣の王と話をしていなかった。
俺が会話をしていたのは自分自身だった。
黄衣の王もそれに気付いていた。
しかし、彼はそのまま会話を続けた。
『面白い男だ、ヨエル。実に良い答えだ』
「俺の迷いが楽しいか?黄衣の王よ」
『ああ。私は混沌の化身だからな』
更に黄衣の王は続ける。
『混沌だ。それこそが始まりだ。』
「…始めに闇があった」
『そうだ。全てがそこから始まり、離され、区別され、個となり、お前と成った』
まさか邪神から創世記の話を聞かされるとはな。
彼も神の一種であることを再確認させられる。
俺は黄衣の王に今回の侵略の目的を尋ねる事にした。
「今回の侵略の目的はなんだ?巡礼者達とはなんだ?」
『それは私のあずかり知るところではない』
「なんだと?」
『答えが知りたいのならあの巡礼者達とやらの内の神に尋ねるが良い』
黄衣の王は今回の件には無関係だと言う。
『地球と呼ばれる地は既に私好みの混沌に塗れている。実に良い星だ』
黄衣の王は地球の在り方を好んでいると言う。
邪神に好まれるというのはありがた迷惑な話だ。
『お互いに奪い合い、殺し合う。実に良い。 己の創造物に依存しているのも最高だ。誰もが神の代弁者と主張しあい、争う。楽園のようじゃないか』
「分かったような口を」
『誰よりも分かっている。そして愛おしく思っている』
黄衣の王は非常に満足気に語る。
そして、それから巡礼者達について語る。
『あの巡礼者達とやらは色々と勘違いをしているようだが、まぁいい。見てる分には非常に愉快極まりない』
「お前の化身が彼らを殺した」
『あの寄生虫の事か?虫の居所が悪かったじゃないか?』
黄衣の王は自分の化身に対して全く興味無さそうに語る。
何という無責任さだ。
いや、これも混沌の神であるが故なのだろうな。
『さぁ、もう一度だけ尋ねる。お前は生きるのか?死ぬのか?どうする?』
「生きるさ。お前みたいな奴がいる限りは死ぬ訳には行かないからな」
『ここに来て敵対を選ぶのか?お前の命を握っている上位の存在に敵意を向けるのか?』
黄衣の王は両手で己の顔を隠す。
そしてそれから豪快に笑う。
『ハッハッハ!そうだ!それが良い!それが一番楽しい!充分に争い合おうじゃないか、ヨエル!』
「それで良いのか?」
『それが良いのだ。さぁ、帰るのだ。あの寄生虫は適当にあの宇宙空間に浮いてるあの玩具で好きに焼き払いたまえ』
黄衣の王は手を適当に手をかざすと俺の意識が途切れる。




