雪乃フルエレ、壁ドンあごクイの刑
ぎゅっ
取り敢えず雪乃フルエレは、貴城乃シューネが目の前に置いた着替えのメイド服を胸の前で握りしめた。
「じゃ、じゃあ着替えますので部屋を出て行って下さい」
フルエレは目を伏せてお願いした。
「ふっ断る。何か良からぬ事をするかも知れない、私が点検しよう。さっ着替えなさい」
「酷い、普通に変態じゃないですか、貴方はそんな人じゃ無かった」
すくっ
シューネが近寄って来てビクッとする。
バシッ
そのまま彼は無言でフルエレの両手を、とっ捕まった宇宙人の様に持ち上げ、壁にドンして押し付けた。
ぱさっ
非力なフルエレが両手を持ち上げられると、胸に抱えていたメイド服が床に落ちてしまう。
「あっ」
(あああぁああああっ胸が……)
ぴろ~ん
すぐさま引き裂かれた胸のドレスが再び全開になり、胸のトップの部分でかろうじてひっかかった状態に戻ってしまう。
「勘違いしてはいけないよ、君はもう同盟の女王の雪乃フルエレでは無い、私の秘密のお客さんであり、私の思い通りにどうとでもなるのだ。その事を忘れてはいけないよフフ」
シューネはわざとフルエレの耳元に口を近付けて囁いた。
「やっ」
(キスされる!?)
フルエレは思わず恥ずかしい予感で頬を染めた。
クイッ
シューネはすかさず片手を離すと、フルエレの細いアゴをクイして持ち上げた。
「ふふっ」
「ううっ」
フルエレは思わず恥ずかしがって目を閉じてしまうが、気付くともう片手も自由になった事に気付いて目を開いた。
(?)
「冗談が通じないのかい? 早く着替えなさい。それと艦内に常備されているマスクはこれしか無かった」
シューネは落ちたメイド服を拾い、続けて妖しいパピヨンマスクを渡した。
(うっまたパピヨンマスク……)
「わかりましたっ今度こそ出てって下さい!」
そのままフルエレは彼を追い出してメイド服に着替えた。
ー次の日
さらわれた当日は船室から出してもらえなかったフルエレだが、次の日にしてようやく外出許可が与えられた。
「分かっているとは思うが、妙な事をしたら許さないよ。今度こそ本当にお仕置きですからね」
「もちろんです、私もう帰る事を諦めました!」
「ふふっそうか」
シューネは馬鹿にした様に笑うと去って行った。
カチャッ
シューネが去って五分後、パピヨンマスクを着けたフルエレは船室のドアを開けた。
「あの……」
五秒で前の警備兵に見つかるが、彼はシューネの魅了で覚えていない。
「ハァハァあの……私シューネさんの愛人で雪布留と言います、魔ローダー格納庫に案内して下さい!」
パピヨンの上からでも分かるくらいにフルエレは冷や汗を流し挙動不審だった。
「あ、あの貴方は挙動不審な不思議ちゃんだから相手にしてはいけないと言われています」
「……あいつっ!!」
「あの、しかし艦内は自由に移動して良いと言われてますので……」
「はい! 格納庫は諦めましたっ!!」
(マスクを外して姫乃さんだって言う方が良いのかな?)
フルエレはマスクの外し所を思案した。結果的に格納庫に接近した瞬間に外す方式に変えた。
「あ、あの~~私シューネさんの愛人なのですが、飛行甲板に行きたいのですが……」
「はぁ貴方が……ハイ、シューネ様から不思議ちゃんがウロチョロするから生暖かい目で見てあげる様にと命令されております!」
「……あいつ」
ウィーンッ
大型艦Ⅱは千岐大蛇騒動で沈んだⅠと同様に、最上甲板は空母同様の広大なまっ平の板となっていた。
ガシャンッ!
飛行甲板に出ると、冷たい海風が吹きすさぶ。途端にフルエレの金髪とメイド服のスカートが激しくなびいた。
「……周りは海」
東の地の狭い内海とは言え、やっぱり広大な海の景色しか無く、フルエレは改めて連れ去られた事を実感した。
「やはり来たね。飛行甲板から魔呂格納庫に行こうとしてるね?」
どビクッ
背中からシューネが語り掛けて来る。
「ちちちちち、違いますけど?」
フルエレの目は激しく泳いだ。
「安心しなさい、蛇輪が置いてある格納庫には例え姫乃ソラーレ殿下が来られても入れるなと言ってある」
「ちっ」
フルエレは落胆して海を見た。
ー時間戻る
交流試合会場。
戻って来た兎幸は小声でスナコに囁いた。
「砂緒っ雪布留ちゃんは蛇輪に乗ったよ!」
『それなら安心です』




