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真相②



 オスカルは小さく息を吐き、乱れた呼吸を整え話し始める。


「セリンセ・ローランス。お前……、祭典でローズのことを助けただろ?双子の片割れと」

「…っ、どうして、それを……?」


 例えローズが彼に事件のことを話していようとも、私やノアに助けられた、とは言っていないはずだ。


「それは、あの日ローズの暗殺を指示した人間が、俺だからだ…っ」

「っ…⁉︎うそ……嘘です…!あなたはローズに出会って、」


 恋をして…………──二人が出会ったのは、いつ……?

 だって原作では学園で出会っているはずで……それなのに、なぜ彼女の存在を知っていて、祭典に訪れるローズの暗殺を……?

 眉間に力が入るばかりで、どんどん頭が混乱していく。


「いや、正しくは皇后だ……俺が、神のお告げをそのまま皇后に報告しちまったばかりにな……」


 まるで過去のことを悔いるようにオスカルは顔を歪めた。


「待って、待って下さい……殿下の神のお告げ、って、将来戦士の力を授かるピピとノアのことが告げられたのでしょう……?」


 そう言えば小さく首を横に振るオスカル。


「……いいや、それだけじゃない。……ローズの、人を魅了する力も神のお告げにより知ったのだ」

「…っ!」


 思わず息を飲む。

 嘘でしょ……それじゃあオスカルは、神のお告げを受けた日から、魅了の力の存在を知っていたということになる。余計頭がおかしくなりそうだわ……


「その頃の皇后は、まだ自分の力に気づいてなかった。だから神のお告げによって知ったその力が、今後邪魔になると考えたんだろう……」

「なるほどね。その後自分の力が受け継がれるものだと知り、消すことよりも彼女を手に入れようとしたわけだ」

「あぁ……」


 私の追いつかない頭の代わりに、ヒューゴ先輩が理解してくれているようだ。しかし過去のことはもう終わったことであり、どうすることもできない。

 問題は、今よ……。


「先ほどの、ローズが殺されるというのは……?」

「……昨日、ローランス家伯爵が謁見を申し出て、帝都で内密に育てていた暗殺者や、関わる組織全てを壊滅させるよう進言したらしいが」

「お、お父様がっ⁉︎」

「あぁ」


 一体、どうなっているの……?お父様は昨日仕事のはずだけど、皇帝に会いに行っていただなんて……まさかっ、ノアのやりたいことって……、暗殺者を暴くことだった?……オスカルが暗殺者と関係があると気づいていたから、自ら近づいて情報を探っていたの?

 死の根源を取り除けば、推しの死を回避できる。生きる未来にできる。それは私が生まれ変わった意味でもある。

 ノアのことだから、私を危険にさせたくなくて言わなかったんだろうけど…………何それ、ずるいわ……ずるすぎる。私抜きでやったこと、絶対に許さないんだから…っ!

 一気に熱くなる胸の衝動を抑えるように、グッと拳を握った。


「だが……たった一人、皇后の後ろには、幼い頃から絶対的に忠誠を誓っている人間がいる。そいつの存在だけは俺以外誰も、皇帝すら知らない…っ、証拠も絶対に残さないやり手だ!」

「…っ」


 ドクンっ、と心臓が大きな音を立て、再び不安が襲う。


「明朝連絡が入った……力も無くなり、本物の第一皇子が世界に知れ渡った今、皇后はもう一度力を自分のものにしようとしている。ローズを消せば、もう一度自分に力が戻ると思ってるんだ……っ、俺には皇后を止められない。無理だ……俺はあの方が一番、怖い……!」

「……」


 オスカルが恐怖を口にした。あれだけ自分は強いと豪語していたオスカルが、だ。

 幼少期から植え付けられた恐怖の対象が、実の母親なんて……そんな悲しいことはない。私が転生したことによって、彼にも苦痛を増やしてしまっていたのかもしれないと思うと、居た堪れない気持ちになる。


「だから俺は……アレクサンドルに頼むしかなかった」

「……っ、お兄様に…⁉︎」

「あいつに勝てるのだとすれば、学園一腕の立つアレクサンドルしかいない。ただお前達に酷いことを言った手前断られるかと思った。だが……」


 本当の姿のオスカルに慣れておらず、酷いことを言った認識があったことに更に驚かされる。が、今はそちらに気を取られている場合でなく。


「お前の兄は、『よくぞ話してくれました。あとは私にお任せ下さい』と……」


 鼻がツンとしては、顔のパーツが中心に寄っていく。

 話の流れは違っていても、殺されそうになるローズをアレクが守る。それは、原作と同じ状況を示していた。

 だけど、アレクならそう言うわ……困っていたら放っておけない。自分がどうなっても、助けようとしてしまう。それに、魅了の力を持った人間が殺された場合の前例を知らないのだ。もしもローズが殺された時、魅了されている者がどうなるのか。わからないからこそ、間違いなくアレクはローズを守ろうとするに違いない。


「ど、どうして先に教えてくれなかったんですかっ!兄と一緒に、私にも教えて欲しかったです!」


 感極まって、相手がオスカルだということも気にしていられず、大声で訴える。まるで八つ当たりだ。するとオスカルはムッとした表情でテーブルを叩いた。


「お前が行って、何ができるんだ⁉︎……逆に迷惑だろ!」

「…っ、」

「……あ、いや、違うっ、こんなことが言いたいわけじゃ……」

「……?」


 急に慌て始める彼は、初めて見る表情をしていた。


「もしかして、私のことを心配しているんですか……?」

「……っ、!」


 言葉に詰まり、キョロキョロと目を泳がせるオスカル。そんなわけないと思ったが、図星のようだ。きっと何の力もなく、戦うこともできない私が行ったところで、死ぬ可能性が高くなると言いたかったのだろう。

 あれだけ嫌いだと避けていたオスカルに、まさか心配されるなんて……信じられないわ。


「オスカル。アレクだけじゃなく、他にも伝えたんだろう?」


 隣でヒューゴ先輩が、まるで確信があるかのようにそう言った。


「……双子にも、一応」

「…っ!」

「うん、さすが僕の弟だ。セリンセちゃん、ノアくん達がついているのならアレクは大丈夫だよ。みんな僕より強いからね」


 確かにピピとノアがいるなら心強い。だからといって落ち着いていられるわけもなく、行かないという選択肢は私の中には存在しないのだ。

 例えできることはなくても、推しを死なせない未来にするために……

 私はスクッと立ち上がる。


「セリンセちゃん?」

「心配していただき、ありがとうございます。でも、今行かないと一生後悔するんです。死んでもみんなを守らないと……私が生まれ変わった意味がない……っ」


 私が泣いていたことに驚いたのか、先輩とオスカルの目が同時に大きく開く。その二人の目が、血の繋がった兄弟だと理解できるほどそっくりだった。


「マチルダ。みんなの居場所、わかる?」

「はい、匂いを辿っていけばわかります…!」


 マチルダは既に部屋の扉の前で待っている。私はその場で皇子二人に一礼し、駆け出した。


「セリンセちゃん、いってらっしゃい」

「っ、」


 先輩のいってらっしゃいがエールのように感じて、また泣きそうになった私は「……いってきますっ」と答えていた。




♢天の声♢


もう少しで完結予定です!

最後まで読んでいただけると嬉しいです( ; ; )♡

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