表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/64

癒しの空間①



「つまり、お兄様はわざと彼女のそばにいたってこと?」

「そうだ。心配させて悪かったな」


 無事に再会した私達は迎えの馬車に乗り、ガタゴト、と揺れる中ローランス家に帰っていた。その道中ピピとアレクお兄様を前にして、ノアと二人、彼がピピのことを無視した理由を聞いたのだった。

 本当にノアの言う通り、魅了のせいで避けたわけではなかったわ……


「それと、実は他にも話しておきたいことがあるんだ。明日時間をもらえるか?」

「私も昨日豹変した方のことを話さなければと思ってたの」

「あぁ、そのことも聞こうと思っていた。結局ピピとノアが戦ったところも見れなかったからな」


 私は膝の上に座るマチルダを撫でながら、エルザ様のことを思い返した。

 エルザ様はそれが原因かはわからないと言っていたけど、悪に染まらせたのはローズの言葉だ。


「ピピ、寝ていいぞ」


 アレクの隣に座っていたピピは不安も消えて眠くなったのか、頭がカクンカクンと揺れては起きてを繰り返していた。


「なんなら膝枕してやってもいいが?」

「っ……セリィ達の前で、無理です…!」


 驚いて閉じそうだったスカイブルーの瞳はパッと開き、恥ずかしそうにアレクに訴えた。

 私達の前じゃなかったらしてくれたの……⁉︎


「いいだろ別に、家族なんだし」

「それとこれとは話が違いますわっ!」

「じゃあせめて俺の肩に頭を預けてくれ。ゆらゆらが気になってしょうがない」

「…っ⁉︎」


 アレクはピピの頭を半ば強引に自分の肩に乗せると、満足そうな表情になる。

 思わずあざーーすっ!と叫びたくなるような光景に、私は心の中でガッツポーズした。そして「……これじゃ眠れないじゃない」と小さく漏らした声を私は聞き逃さなかった。

 かわいいがすぎるよピピちゃんっ!あーー幸せ…っ!


 目の前で繰り広げられるいつも通りのやり取りに顔をニヤつかせながらもホッとする。推しがやっぱり尊いし大好きだ。

 どうしたってアレク&ピピはお似合いなんだよなあと眺めていると、ふと隣のノアの視線に気がついた。


「ん?ノア、どうした?」

「いや、嬉しそうだなと思って」

「うん、嬉しい…!ノアのおかげだね」

「っ……」

「いつもありがとうっ」

「……俺は何もしてませんよ」


 ノアはコホン、と一つ咳払いをして外のほうに視線を逸らしたのだった。



♢ ♢ ♢



 次の日、早速アレクお兄様の部屋に集合して、密会を開いていた。ローランス家で密会も何もないが。


「何…⁉︎素手で触ったのか……?」


 ピピがアレクお兄様に話したのは、私が負の感情をエルザ様に戻したことだ。

 過保護のお兄様の反応としては予想はつくけど、正式にローズに出会った後でも、お兄様自身が原作の力によって変わらなかったのは嬉しくてたまらない。


「素手じゃないわ、負の感情を戻したいと願ったら専用の手袋が現れたの」


 事実はマチルダが持ってきてくれたんだけど。


「信じられん……もうやるな、と言いたいところだが……話を聞く限り、セリィがしたことは正しいのかもしれない」

「兄様、それはどういうことですか?」


 ピピがすかさず聞き返すと、アレクは考えるように腕を組んだ。


「時に人は負の感情を活力に変える。これは悪いことをしようとか、罪を犯す力のことを言ってるんじゃないぞ。自分の中に怒りや葛藤があることで、強くなれるってことだ。……セリィみたいにな」

「…っ、私?」

「ノアが毒にやられた時、周りに罵声を浴びせられても、まるで俺より年上かと思うくらい、怒りや哀しみに耐えた。衝動的に剣を抜こうとした俺を止めるほど……セリィは俺よりずっと強い」


 前世の記憶で言えば私のほうが年上になるけど、そのお兄様の言葉が優しくて、不意に涙が出そうになってしまう。


「ピピとノアも同じだ。セリィのことを守りたくて、強くしてくれと俺に頼んできた。その守りたい気持ちは、セリィにまた同じことが起こったら、っていう不安からきただろ?……つまりお前達は不安を活力に変えたんだ」


 アレクの言うことはすごく腑に落ちた。前世で私がアレクを兄にと望んだ気持ちが改めてよくわかる。こんな捉え方ができる人はなかなかいない。

 同時に二人が私のために強くなろうとしていたことを初めて知って、ついにポロッと涙がこぼれた。


 だから、違うんだって……私のほうが、みんなを死なせないために守らなきゃいけないのに……

 落ちた涙に気づいたノアが、スッと横からハンカチを渡してくれた。


「もしかすると、ウィリアムズ公爵令嬢も戦っていたのかもしれないな。本当の自分と親に求められる自分の狭間で。だからもしその気持ちまで消していたら、公爵令嬢は意識を取り戻さなかったんじゃないかと俺は思う……」

「っ……!」


 意識を、取り戻さなかった……?

 無意識にノアと顔を見合わせる。ノアもきっと原作の内容を思い出したのだろう。

 なぜなら原作では、豹変化した生徒の悪を倒した後の描写がなかったからだ。

 ルナシーの感染者は負の感情を失って、目覚められなくなったってこと……?だから描かれてない?それって、こわすぎない?まるで印象操作じゃない……

 私には読めなかった文字化けに関しても、原作の内容に不信感が深まっていく。

 それとも、倒した悪はどうでもよかったの?


「かといって、このままセリィに負担はかけられな

いしな……」

「いいえ、私なら平気。……ただ、オスカル殿下に負の感情を戻してることが知られたら消されるかもしれない。だから皇子にバレないようにお兄様にも手を貸してほしいの」

「……消されるだと?」


 眉間に力が入ったアレクは一気に不機嫌そうになる。


「そんなことはさせない。俺が死んでもお前達を守る」


 あ〜〜〜〜っ、カッコいい……名言キタ……録音したかったわ。

 でもアレクが死んだら、結局ピピノアも闇落ちしちゃうんだよ〜〜っ!とは言えず……


「お兄様、私達を守ると言うなら生きて守って」

「そうですわっ、死んだら絶対許さないんですから…!」

「鍛え上げてもらったんで、兄さんに守られるほど弱くないです」


 アレクは私達の総攻撃に驚き、参ったと言って笑う。


「まるで運命共同体だな」


 その心を許しているような笑顔がまた素敵で、私はしっかりとカメラのシャッターを切った。




♢天の声♢


運命共同体なんだってばよ!!♡

ちゃっかりシャッターを押しとるセリンセグッジョブ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ