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『想像力』のメタい姉とメタい弟




 物語ははじまる、いつもの六畳一間から。


「いやぁ、弟くん。妹ちゃんは強敵だったね」


「おう、さらっと登場人物増やそうとするのやめーや」


 いつも通りベッドに座る姉さんと向かい合う俺。

 つーか、何勝手に『劇場版』とかやってんだよ。しかも意味わかんない演出までして。


「ほら、映画版予告とかそんな感じでカッコいいでしょ?」


「その発想は否定しない……」


 絶望的に色々足りない気がするが……。

 

「そうでしょそうでしょ。お姉ちゃんは色々考えました! 設定とかないなら、みんなにお任せしちゃえばいいや、と!」


 そして出来上がったのが、台詞と一文を添えただけの前回である。

 いや、なんつーかもうちょっと足してもいいと思うんだよね、正直。

 まぁ、確かに映画予告っぽい雰囲気は出てたよ、雰囲気だけは。


「だがな、姉さん。映画予告と文章のみなのは違う」


「え?」


 まあ確かによく見る映画予告を文章に起こせば、前回のようなものになるだろう。

 端的な文章と会話文。聞こえる音だけを拾って文章にしたら、あんな感じだな。


「だけど、文章には映像が足りない」


 当たり前の話。映画には映像がある。

 誰がどう動いたとか、どこで何してるとか。喋らなくても映像を見せればいい。


「でもでも、そこはみんなの想像力で補ってもらおうかなぁーって」


「うん、まぁ、そうなんだけどさ……」


 その発想自体は悪くないんだよなぁ……。

 全部を全部描写する必要はない。ある程度は読者の想像力に任せるのが良い。

 説明ばっかの話とか面白くないしね。

 

「でもそれにしたって説明が少なすぎるだろ……」


 前回出てきた『アレ』って結局どんなヤツ? 大きいのはなんとなく分かるけど、どんな形してるの?

 ちなみに俺はドデカくて黒いもやみたいな塊をイメージしてるんだけど、それって読者に伝わってるの?

 

「書いてる本人は当然イメージできるものも、読者によってイメージが異なるってことも多いんだぞ」


 それこそ映画予告見たあと本編見たら、「え? なんか思ってた雰囲気と違う……」と感じるようなものだ。

 あとマンガがアニメ化したとき、「この声なんか思ってたのと違うわ……」てなるのもそんなの。


「確かに読者は読んでるとき文章に書かれてないこともイメージしてくれるけど、それが必ずしも作者の意図するものになってるとは限らない」


 でも出来るだけそれを近づけられるように、意図するものと同じになるように仕向けるのが腕の見せ所ってこと。

 ちなみに俺はそんなこと全く考えてない。そもそも設定すらないんだってば。

 

「ふぇー……難しいねぇ……」


「うん、まぁそうだな」


 難しいけど出来たら物語の魅力がぐっと引き立つと思う。俺は出来ないけど。

 ……まぁそんな真面目っぽい話はどうでも良くてだな。


「つーかなんで俺、バトル物の主人公みたいになってんの、え?」


 やや高圧的な声色で姉さんに問い詰める。


「えー? それはほら、カッコいいかなーって」


「この物語と全く雰囲気違うじゃねぇか! 原作無視ってレベルじゃねぇぞ!」


 お前、この物語のどこにバトル要素あったよ!? 部屋ん中で姉弟がぐだぐだ話してるだけだぞ!


「しかもなんか姉さんも戦ってるし! その上、怪我とかしていい話っぽくしようとしてるし!」


「ほ、ほら、お姉ちゃんも重要キャラだから! 『そうなの?』とか『へー』とか相槌打って会話の間を持たせるだけのキャラじゃないから!」


 この物語での現在の扱いは、よく出てくる『なんだってー!?』とか『それは本当か!?』とか言うキャラ以下である。

 だって俺が一人で延々と話してるとか、流石にテンポとか何やらが悪いじゃん。

 馬鹿の一つ覚えのように『へー』『そうなんだ』『本当?』を言い続ける姉さん。……実際、成績はお察しらしい。


「お姉ちゃんだってもっと色々喋りたーい! 主要キャラらしいことしたーい!」


「それは作者に言え。……つーか本編より先に、妹が台詞話してるんだが」


 居もしない妹。まだ会ったことすらないんですが。

 しかも読む限りすごく嫌な性格してそう。これ、本編に出てこないよね? 

 

「妹ちゃんは私が育てた」


「育てたんじゃなくてねつ造したんだろ」


「いいじゃん、妹ちゃん! 可愛いじゃん!」


 どこがだよ。

 明らかに敵キャラじゃねぇか。しかもボスクラスの。


「妹が最大の敵……。これは燃えるね!?」


 燃えねぇし、萌えねぇよ。もえないゴミだよ。

 もやして欲しいなら、もうちょっと色々足せよ。


「あとルビの『せかい』がゲシュタルト崩壊しそうだったな」


 ぶっちゃけクドい。何回出てくるんだよ。胸やけするわ。

 

「いい感じに中二感出てるでしょ?」


「中二感通り越して、小五感出てた」


 はじめて書いた小説とか思い出したわ。

 実際、前回の原型はそれなんだけど。あぁ、また黒歴史が増えていく……。

 開けないノート……当て字がいっぱいの必殺技……顔の輪郭が尖ってて目がキラキラしてるイラスト……うっ、頭が……!


「とにかくツッコミどころは満載だったな」


 何度も言うが発想は悪くなかったと思ってる。

 反省はしてるが、後悔はない。公開したけど。あっ、別にこのダジャレを言いたいから公開したわけじゃないぞ? ホントホント。


「あー……じゃあこの物語では前回の設定生きてこないのかぁー……」


「当たり前だろ」


 あんな世界になっちまったら、俺の日常はどうなるんだ……。あのままだと特殊能力っぽいの目覚めそうだし。

 俺は普通に高校生活送って、普通にアニメ見ていられればそれでいい。


「ちぇ、頑張って考えたのになー……」


「ネタがボツになるのはよくあることだ。めげずに次頑張れ」


「はーい。――……あれ? さっきドアベル鳴った?」


 姉さんはそう呟き、玄関へ顔を向ける。

 いや、鳴ってないけどどうした?


「ドアが開く音がしたような……。聞き間違いかな?」


「それ、ホラーなら死亡フラグだぞ。どうせどっかの部屋の誰か──」


 ――いや、待て! 


「姉さん、急いでこの部屋のドアを塞げ!」


「え!?」


 くそっ! 姉さんじゃ間に合わねぇ!

 俺は椅子から飛び降りると、玄関へと通じるドアを急いで塞ぐ。鍵なんかついてないから、ドアノブを全力で握って固定。

 

「突然どうしたの、弟くん!?」


「馬鹿野郎! 姉さんが余計なこと言うからだよ!」


 作者の野郎、面白がって出してくる気だ……!

 ドアベルなしで聞こえたドアの開く音。聞き間違いかなという台詞。今までのあの流れ……。


「フラグが三本……来るぞ、姉さん!」


 俺が叫んだ直後、握ったドアノブがガチャガチャと激しく音を立てる。それでもドアノブを握り続け、俺はドアノブを鳴らす何者かへ必死の抵抗を試みる。

 な、なんてパワーだ! 平凡な一男子高校生とはいえ、全力で握っているというのに!

 それほどまでにドアの向こうの人物は強大だというのか。


「何としても……俺の平穏は守る!」


 うおおおおおおぉぉぉおお!

 全力でドアノブを握って叫ぶ弟と、それをベッドの上で座り込んで呆然と見守る姉。

 正直、めちゃくちゃシュール。

 いや、こっちは必死なんですけど。感動的な音楽の一つでも流して欲しいくらいだ。

 しかし俺の抵抗もむなしく、戦いは終わる。


「……何抵抗してんの? さっさと入れろや、クソ兄貴!」


 ドア越しに聞こえる幼い少女の声。 

 あぁ、やっぱりか……。

 台詞とか卑怯じゃん……。俺の必死の抵抗はなんだったんだよ。

 これで物語参戦するの確定じゃん……。

 ――いや、待てよ?


「……何を勘違いしてるんだ。俺の平和な日常はまだ終了していないぜ……!」


「ふぇ?」


 俺のセリフに間抜けな声を上げる姉さん。いや、そこまで再現しなくていいです。

 

「見せてやる、俺の切り札! 『強制終了』!」

 

 説明しよう。『強制終了』は、物語が中途半端なところでも強制的に終わらせることが出来るのだ。

 つまり、今日のところはこれでお終い。


「……なんか消化不良感半端ないわよ、クソ兄貴」


「うるせぇ、モブは黙ってろ」


 あと帰れ。

 それでも今日のところは、物語が終わる。

 三流アマチュア小説書きの物語の主人公になった俺と、同じく登場人物にされた姉の物語は、続く。

 作者が飽きるくらいまでは、続く。

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