表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/25

劇場版『ある日、三流アマチュア小説書きが書いた物語の主人公にされた件』

 ――物語は突然はじまる。


「はじめまして、弟くん! 今日から私がお姉ちゃんだよ♪」


「は?」

 


















 ――作られた物語(せかい)。選ばれた登場人物。物語(せかい)は、いつだって理不尽だ。


「だから、俺は主人公とか柄じゃないんだって!」


「そんなこと言っても弟くん以外いないの! この物語(せかい)をはじめられるのも終わらせられるのも弟くんだけなんだよ!?」



















 ――物語(せかい)に襲いくる闇。幾多の物語(せかい)から(つど)った暗雲は、この物語(せかい)にも牙を剥いた。 


「なんだよ、『アレ』……!」


「『アレ』は物語(せかいの闇。皆が忘れた物語(せかい)の結末。『アレ』はあらゆる存在を食い散らかして、どんどん膨れていくの」


「まだデカくなるっていうのか!?」


「……それだけじゃない。本当に恐ろしいのはそれだけじゃないんだよ、弟くん。『アレ』はもっと恐ろしいものを生む」



















 ――そして現れた一人の少女。闇より暗いその瞳には、何が映っているのか。


「こんばんわ。お兄ちゃん、お姉ちゃん。あっ、初めましてかな。……でも、もうばいばいだね?」



















 ――圧倒的な力は、全てを飲み込む。それでも飲み込まれまいと足掻く術を探す。


「おいっ、アンタ怪我してるじゃねぇか!」


「えへへ……。お姉ちゃん、ちょっとドジっこ属性あるから……。でも、大丈夫だよ……? お姉ちゃん、弟くんの分まで頑張るから……!」


「やめろって! アンタも逃げないと! 死んじまうぞ!?」


「お姉ちゃんは強いから死なないのだぁ……。――それに、姉は弟を守るもの……そうでしょ?」


















 ――消えかかる(ともしび)。闇の中だからこそ、強く光を願う。


「あーあ、もう終わり? お姉ちゃん、案外弱いんだね。やっぱり姉より優秀な妹はいないっていうのは嘘なのかなぁ? ちょっと期待してたのに」


「……ま、まだだよ。お姉ちゃんは、まだ元気……だよ……っ!」


「もういいよ、お姉ちゃん。お姉ちゃんの攻撃は全部アタシが食べちゃったから。ごちそーさま! もう二度と会うこともないねっ。――ばいばい!」


「――出来れば、弟くんには……自分だけの主人公じゃなくて、お姉ちゃんの主人公(ヒーロー)にも、なって……欲しかった、な……」

















 ――そして。


「――おい。何勝手に人の姉さんいじめてんだ、クソガキ」


「弟、くん……?」


「あ、お兄ちゃんだぁ! ねぇねぇ聞いてよ。お姉ちゃんったら、アタシに暴力振るってくるんだよ? ひどいよね、ひどいよね?」 


「うるせぇ! 俺には妹なんざいねぇよ。……姉なら、今日出来たけどな」


「……はぁ? 何それ。お兄ちゃんはお姉ちゃんの肩持つわけ?」


「俺はうるせぇっつったぞ。いいから早くかかってこいよ!」


「上等じゃん。兄の威厳っていうのも見たかったんだよねっ!」


「ニヒル気取って大勢(モブ)になるのはもう止めだ! 俺が主人公だっていうなら言ってやるよ!」


 ――ここから俺達の物語(せかい)がはじまる!















 劇場版『ある日、三流アマチュア小説書きの物語の主人公にされた件』












 三流アマチュア小説書きが書いた物語の主人公になった俺と、同じく登場人物にされた姉の物語は、続く。

 作者が飽きるくらいまでは、続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ