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揺らめく影は

 各部の最終確認を終えて、船橋の要員が発進のための手順を踏んでいる。

「メインエンジン出力80パーセント、安定稼働中」

「重力制御システム始動」

「操縦権、船橋の操舵士に回します」

 瀧尾の席の端末から、機関室の要員たちの報告が聞こえた。

「操縦権を受理しました」

 瀧尾が復唱したのを確認した天野が、席に設置されたマイクを取って基地との連絡を取る。

「シルクロードの発進準備完了。ガントリーロック解除を要請します」

《了解。第8岸壁、4番係留ポイントのガントリーロックを解除》

 すると、船体を固定していた設備がガコンという音と共に動いた。重力制御システムによって、拘束を解かれた船体は浮遊してその場に留まる。

《シルクロードは第13灯台衛星の誘導に従って出港せよ》

「了解。第13灯台衛星の策定航路を受理、自動航法により出港します」

 天野がマイクを戻すと、シルクロードは上空へと浮上を開始した。

「よし、これでひとまず出港の段取りは終わり。上出来だぞ管制士」

「ありがとうございます」

 保尊に褒められる天野。だが、管制士席の後ろで立っていたシルキーはどこか不満げだ。

「無事に出港できたことは褒めて差し上げますけど、宇宙船が出港しているのなら『お約束』というモノがあるのではなくて?」

 突っかかられた天野は首を捻ったが、すぐにシルキーが満足する答えを導き出して行動に移した。管制士席でかしこまった姿勢を取り、声を出す。

「シルクロード、発進!」

 思った通りに天野が「お約束」を実行したので、シルキーは拍手をしながら喜ぶ。その光景を見ていた瀧尾とリノがそれぞれの席から冷やかした。

「シルキーは毎回これをやらないとすぐ拗ねるからな」

「お嬢様風なのにこういうところは俗っぽいんだよね」

 シルキーはむくれたが、天野がすぐに対処して事なきを得た。


 シルクロードが冥王星の衛星軌道上に到達し、巡航を開始した。

「この星の沖合、ここ数か月は不審な船が増えてるよな」

「サンタ―帝国がまた自国領拡大を目的に軍事行動を始めたらしいけど、それじゃないかな」

 瀧尾とリノを含め、乗組員たちは航海中でもとりとめのない会話をしている。シルクロードの船内は規律が緩い、そんな噂を出港前に基地で聞いていた天野だったが、これがこの船のやり方なのだろうと考えた。そして天野も会話を始める。

「電測士、サンタ―帝国の動きと不審船ってどういう関係があるんです?」

「仕事の会話じゃないときはリノでいいよ。まぁそれはそれとして、サンタ―帝国に資源を売りたい人たちが不審船で盗掘をしたりしてるって噂があるんだ」

 サンタ―帝国は太陽系外に存在する星間国家の一つだ。星間国家としては長い歴史を持つが、革命などで政権がかなりの頻度で移り変わってきた。現在の首相が政権を獲得してからはようやく安定しつつあるが、それもブルーアース連邦樹立後のことでまだ期間は浅い。

 またサンタ―帝国は横暴なやり方で拡大政策を実行したり、見境の無いリバースエンジニアリングによる技術発展が他国から問題視されている。数年前には太陽系外のEEZに存在する小惑星群「エップル」の資源を採掘しようと目を付け、自国のEEZに収めるために惑星「フィルコン」を制圧・統治下に置くという暴挙に出た。そのことからブルーアース連邦との関係もかなり険悪なものになっている。

「星間戦争には沢山の資源が使われるし、その手の業者が高く買ってくれるんだろうね。そういうわけでキラッゼ港では取り締まりが強化されてるし、私たちも軌道上で警備ってわけ」

 天野は納得したが、一つの疑問がわいた。

「盗掘の噂って言っても、船舶用人工知能には違法行為を発見すると自動で通報する機能があるでしょう、なんで噂でしかないんですか?」

 すると船長席の保尊も横から会話に加わってきた。彼は苦い顔をしている。

「これも警備隊内の噂なんだがね、人工知能の機能を制限する違法プログラムが流布しているという話がある。もしこれが本当なら、これで自動通報機能を無効にしているのだろう」

 シルキーはずっと皆の会話を聞いていて、ふとあることを思い出した。

「複雑な感情を有する人工知能に対して違法プログラムを適用すると、そのプログラムの本来の目的とは違う挙動を示すことが多いとされていますわ。近頃、採掘作業用船舶の事故が多いのはそういうことかもしれませんわね」

「酷い話ですね……」

 天野は不安げな表情を浮かべた。

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