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異世界不死者と六人の弟子  作者: かに
第二章 天空城の住人と王家のダンジョン
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過去に囚われた男

ーーーーーーーーテューンーーーーーーーー


 フリージアに容赦はなかった。ドロテアに歩み寄る発言こそしたが、それとこれとは別のようだ。もしかしたらドロテアが縋るようなことがあっても彼女の腕一本ぐらいは折っていたかもしれない。

 ドロテアには先ほどまでの技のキレが微塵も感じられなかった。何百年も積み重ねた成果が打ち砕かれたことが大きいのだろう。その焦点のあっていない攻撃に付け入るのはフリージアにとって造作もないことだった。


 「動きが鈍ってるよ、ドロテア」


 ケンタウロスの槍を掻い潜り、フリージアは拳をケンタウロスの胴体にぶち当てた。一見それは悪手に思えたが、ケンタウロスの体が何の外傷もなく崩れ落ちた。フリージアが何かをしたのは明白だった。

 足場を失ったドロテアは体勢を立て直すために後ろに向かって大きく飛び退いた。

 だが、それをフリージアは逃さない。

 彼女が放物線を描いて落下しようとする瞬間、跳躍したフリージアの拳をドロテアの胸部に見舞った。一切加減が見受けられない一撃に死んでしまうのではと焦りを覚えた。

 実際、背中きら地面へと落ちたドロテアは口から血を吐き出し、明らかに瀕死の状態だった。少なくとも内蔵がいくつか破裂してそうである。


 「テューン、魔術的治療を施して延命を図るから、その間にトモエを呼んできてくれるかな?」

 「あ、ああ……」

 「それなら私たちが呼んでくるよ!」


 名乗りを上げたのはマテだった。ツェーリと仲良さげに手を繋いでいて、ツェーリも満更じゃない様子だ。私は眉根を皺を寄せるしかなかった。


 「場所わかるのか?」

 「ヤンの位置なら分かるわ! みんな一緒にいるなら大丈夫よ!」


 私の質問にツェーリが元気よく答えた。私の頭にさらに疑問符がつく。

 キャラ違ってないか?

 そうして、遊びにいく子供のように駆け出した二人を私だけでなく、フリージアも不思議そうに見送った。


 「……あの二人喧嘩してなかった?」

 「ここはダンジョンだからな……未知の毒にでもやられたんだろう」


 微妙な顔をするフリージア。


 「あのー、大変申し訳ないんですが、そろそろ俺の心臓に突き刺さってるコレ抜いてもらえないでしょうか?」


 すっかり存在を忘れていたリョウタが苦しそうな表情で訴えかけてきた。そこに、疲れ切った顔のゼフが近づき、無理矢理槍を引き抜いた。


 「うがー!いてえー! 痛いって! もうちょい優しくしてくれよ!」

 「つべこべ言うな。死ぬわけじゃないんだ」


 ゼフは槍を放り投げ、深々と溜息をつく。今にでも座り込んでしまいそうな様子だったが、まだ油断するには早いと気力を振り絞ってるみたいだ。


 「ゼフ、こんな時にすまないが、話したいことがある」

 「ん? 大丈夫だ。しばらくすれば体力も戻る」


 今を逃せばまた言いにくくなる。まあ、それでも挫けずに声をかければいい話なんだが。どうしても今じゃないと気がすまなかった。


 「ゼフの復讐が終わったら、また私とパーティーを組んでくれないか?また六人で。至らない部分も多々あったと思う。お互い相容れないこともあったと思う。完璧なパーティーじゃない。最高とは言えないかもしれない。私のせいでそうなってしまってることもあった。だけど、私はこの六人がいい。師匠の弟子だからって理由ではなく、六人でまた冒険がしたい。だから、ゼフ。私はゼフとまたパーティーを組みたいんだ」


 ゼフは黙って私の主張に耳を傾けた。心臓が変な感じにバクバクと鳴った。ここまで緊張したのは初めてかもしれない。今まで荒っぽく自分の要求を通してきた。だから、純粋に自分の気持ちを打ち明けたのは今までにないことだ。

 時間がそんなに経ってないはずなのに返事が待てないほどにそわそわする。この感情がどこかへ消えてしまえばいいのに。


 「……おまえらに相談の一つもなくパーティーを解散して悪かった。あの時はそれが一番だと思った。だけど、そう簡単に割り切れるもんじゃないよな。俺も嫌いだったわけじゃない。もしも……また冒険をするってなったら……そう考えたら、やっぱりおまえらとがいい」

 「それは……答えになってないぞ、ゼフ」

 「ごめんな、だけど今のは俺の素直な気持ちだ。だから、少しだけ待っててくれ」


 私は黙って頷いた。ゼフが打ち明けてくれた心境に対しての喜びと悶々とした思いが絡み合う。ゼフはけじめをつけるまできっと、未来のことを語ろうとしないだろう。ゼフの傭兵時代の仲間を炎で包み込んだ犯人。そいつと巡り合うまでゼフは過去に囚われたままなのだ。

 だから、前ほどではないが、やはり私はちょっとだけ師匠を恨んだ。ゼフの復讐の心を芽吹かせたのは師匠なのだから。


 「ありがとう。俺なんかを誘ってくれて」


 今の私はその言葉で納得せざるをえなかった。胸を締め付ける想いをぐっと堪えた。


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