フリージアとテューン
ーーーーーーーーテューンーーーーーーーー
言うなれば、魔拳士だろうか。
魔術をより実戦に活かせるように追究を重ねたフリージアの戦闘スタイルは、練度の高い魔力を直接相手に叩き込むことでより効果的に威力を発揮するというものだ。そして、その効果は先の戦いですでに実証済みだ。
おそらく体を貫かれた際には使ってなかったであろう身体強化の魔術も、フリージアの魔力の流れから感じ取れた。
槍の間合いを気にすることなく、フリージアは一直線にドロテアに迫った。ドロテアの持っていた槍はリョウタとともに地面に突き刺したままだ。その代わりに、ドロテアは魔術を使う素振りを見せた。そして、ケンタウロスの槍とフリージアの拳が接触する。
驚くべき光景を私は目にした。
薄い手袋を装着しているだけのフリージアの拳が、切断されずに刃とせめぎ合っている。そんなこと常識では考えられない。だが、元錬金術師というフリージアの言葉で閃いた。
魔術はその単体では持続性に乏しく、常に集中し魔力を消耗しなければ維持が困難だ。辛うじて、身体を強化する魔術なら一定の時間であれば継続した効果を見込める。
持続性の問題を克服する手段として、脚光を浴びたのが錬金術師だ。アイテムに魔力を練り込むという発想。革新的なそのアイディアはその高い難度から希少性をもった。しかし、その経緯とは裏腹に魔力のこもった装備を使用するのは専ら魔術師以外の人間で、魔術師はそのプライドからかそれらを毛嫌いする傾向すらあった。
だが、フリージアにはそれがない。つまり、フリージアは魔術と錬金術の両方を戦闘に取り入れているということだ。魔術と錬金術の相互作用によりフリージアの拳は鋼よりも硬いのだと私は睨んだ。
そして、それはフリージアの拳を刃こぼれ一つなく防いだあの槍にも言えた。
「素晴らしい、フリージア!おまえは私の想定を遥かに凌駕した!」
ドロテアの賞賛とともに見える限りで七つの魔術がフリージアに降り注ぐ。それほどの量を同時に制御できるだけで、ドロテアが練達の魔術師であることが窺えた。
それを三つ避け、四つ魔術で打ち消す。それでフリージアは切り抜けた。その手際は鮮やかなものだった。
一方の私は、一直線に向かってきた鎧の騎士の攻撃をギリギリのところで回避する。
余裕がないわけじゃない。むしろ、研ぎ澄まさせている。全体を俯瞰しているような感覚。今まで自分の体が自分のものじゃなかったように軽やかに動ける。剣筋をちゃんと見極められる。
そして、見つけることができた。鎧の騎士に全力の一撃を打ち込める瞬間を。
「……ッハアアアァ!」
金属と金属がぶつかり合う音が豪快に響いた。威力を殺しきれなかった鎧の騎士は二歩後退り、剣が打ち込まれた部分が大きく凹んでいた。私の剣も衝撃に耐え切れず、一応は剣の形を保っているが、もはや使い物にならなくなっていた。
やはり剣では限界があるか。
空間収納スキルを使用して、私はメイスを取り出した。使い慣れていない武器だが、敵の動きは大体把握した。あとはこれを全力で振るえるように調整するだけだ。
「悪いが、うちで一番力持ちなのはゼフでもリョウタでもない。私なんだ」
獰猛な獣のようにただひたすら襲いかかってきた鎧の騎士が、初めて距離をとって慎重な素振りを見せた。だが、私は待つつもりはない。
今度はこちらから仕掛ける番だ。




