二つの槍
――――――――佐倉涼太――――――――
ケンタウロスの突進からの槍突きを寸でのところで回避し、攻撃に繋げようとする。だが、ケンタウロスの攻撃の粗をカバーするようにドロテアの槍が俺の動きを先読みする。
「ぐっ……!」
攻撃の手をとめ、後退を余儀なくされる。そこにケンタウロスが追撃の薙ぎ払いをする。
だめだ!避けられない!
回避を断念し、刀で受けることを決心する。だが、もろに受けたら硬直したところをドロテアに攻撃されてしまう。だから、刀は斜めに構えた。
辛うじて刀で受け流すことに成功する。ドロテアの槍が肩をかすめる。深手を負うことはなかったが、厳しいことには変わりない。
複数に囲まれた戦いは何度か経験したことがある。最終的にトドメを刺したのはテューンやラフィカだけど経験済みと言えるぐらいの自信はある。
だけど、上下から繰り出されるこの変則的な攻撃は初めてだ。なんというか、非常にやりづらい。
何度も反撃を試みるが、ケンタウロスの装甲はあの鎧の騎士と同等の強度があるのか、俺の技量じゃこれもまた傷をつけることすら難しい。
ケンタウロスは鎧の騎士より複雑な構造をしていて、足も馬のものより少し太い程度である。だから、足回りを攻めて部位の破壊も狙おうと考えた。でも、足に注意を向けると今度はドロテアの攻撃が見えなくなる。それほどまでに高低差があった。
槍の連撃に耐えかねて、ケンタウロスの懐に潜り込む。だが、馬ではありえない関節の動き方をされて、前蹴りを無防備な体勢で食らい意識が飛びかけた。あれが馬の形をしているだけの機械のようなものだと思い知らされる。竜体化してない部分だったら終わっていた。
直ちに体勢を立て直す必要があった。そこをドロテアが見逃すはずがない。持ち直すにしても回復が間に合わなかった。
「さて、捕らえた」
そのドロテアの言葉どおり、俺の心臓に槍が突き立てられた。ケンタウロスの突きを身をよじって回避したところを的確に狙われた。そして、そのまま身動きがとれないように地面に磔にされる。
「っは……くそ……いってぇ……」
「珍妙なものだな。魔族の中でさえ心臓を貫かれてここまで活き活きとしている者はいない。ますます興味が湧いてきた。だが、今は問題を片付けねばならん。なあ、フリージア。どうやら持っていたみたいだな、隠し玉を」
ドロテアが向いた方角を見ると、そこにはテューンと胸に風穴を開けられたはずのフリージアが立っていた。ヒールは間に合ったようだ。己の不甲斐なさを呪いつつも、俺は二人に希望を託した。




